帰還

「仁····どうして?どうしてなの?」

アリスは血を流し、倒れている仁を見つめた。


「ねぇマナ····仁が死んだなんて····嘘よね?嘘って言ってよ····」

「アリス····」


泣き叫びながら、アリスはマナに泣きつく。マナは自らも泣きそうになるのを舌を噛みながら我慢していた。


リーは既に回復魔法の使いすぎで、倒れてしまっていた。


「泣いていても、しょうがないのですよ····」

「ええ····そうですわね····」


その瞬間、辺り一帯の景色が閃光に覆われた。そして閃光は突然、闇に飲まれる。その闇から出てきたのは、一人の男だった。それは漆黒の鎧、漆黒の翼、漆黒の剣を備え、アリスたちに近寄る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「····っ!まさか····仁?」


アリスが、俺に問いかける。


「そうだ····」


俺は、アリスの問いに答える。


「やっぱり····そうなのね!良かった····無事だったのね····」


アリスの顔に安堵の表情が出る。


突然光が集まりだし、一点に集束する。そして、そこにはあの、ローブの男がいた。


「現代の魔王····何故だ!何故····戻ってきた!」


ローブの男は俺に向かって大声で叫ぶ。


「答える必要はない····ここから失せろ!」


俺はローブの男をさらに睨む。


「断る!ここで退けばこの世界は、終わりを迎えてしまう!」

「どういう意味だ?」


俺は十分魔王の力を制御出来ている。ならばこの世界が終わりを迎えることは無いはずだ····そう思いながらまたローブの男を睨む。


「お前はこの世界を破壊する存在だ····こうなれば、奥の手を使うしかない!」

『天使化』


男が、そう詠唱すると男のローブが消え去り、白い翼が姿を見せる。その姿はまるで神の使い····「天使」だ。


「それがお前の真の姿か····やはり、お前は『アストラル』ではなかったようだな!」

『武器召喚』『複製』『魔法付与エンチャント加速アクセル×8』『魔法付与エンチャント自動追尾オート・ロックオン


俺は警戒すると共に、浮遊する剣を200本召喚する。そして、その剣の複製を1本につき、4本作成する。さらにその剣全てに、高速化の魔法を8つ、そして追尾機能を付与する。


「行くぞ!世界の破壊者!」

「来い!天使よ!」


アリスが瞬きをした瞬間、勝負はついていた。


 勝ったのは勿論、俺だ。

 一方、天使は翼や体に穴が開き、地面に倒れていた。

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天使が動き出した瞬間、俺も同時に動き出した。

 

「この世界から消えろ!」

「行け!我が剣よ!」

 

天使が一歩を踏み出した時、俺もまた、800本の剣を全て放つ。その剣はもはや、誰にも見えない速度で移動した。それを天使は意図も容易く避けた。


「そんな攻撃は当たらん!」

「それはどうかな?」


避けられた剣は全て追尾機能によって天使の方に向かう。


「何だと!?」


800本の剣は全て、天使に突き刺さる。しかし、天使は、スーッと消える。

 そして、天使は前の戦いのように俺の後ろに現れた。


「隙だらけだ!」

「同じ手が、二度も通じると思っているのか?」

「何!?」


天使の後ろに剣が、800本現れる。そして、その剣は全て天使の体に穴を開けていった。


「さらばだ····憐れな天使」


天使が翼を失い、地面に落ちる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「何故だ····何故····こんな短時間で····私は····負けるわけには····」


天使は激痛に、もがいている。


「お前には分からないさ····」


俺は右腕を振るい、魔法を使う。


「『終焉オワリ・ノ・セカイ』」


膨大な魔力が集まり、一点に集束する。そしてそれを天使の中に入り込ませる。


そして天使はその光に飲み込まれ、消えた。


「天使に勝つなんて····」

マナは呟く。その瞳はすごく濡れていた。


「さぁ!みんな、帰ろうぜ!」

俺は笑顔で、みんなに呼びかける。


「もちろんです!」

 

「疲れた····です」

 

「宿に帰るのです!」


マナ、ルー、カーマが俺の呼び掛けに答えてくれた。

そしてアリスは、目の涙を拭いながら無言で走ってきた。


 宿に着いた俺たちは、食堂で晩ご飯を食べる。

 今日のメニューは、牛肉のハンバーグとコーンポタージュ。俺はそれを思い切り掻き込む。


「戦いの後の、ご飯は最高だな!」


「····そうですわね」


マナは少し元気がなさそうに話している。

そして、数分後にはもうご飯を食べ終わっていた。


「ごちそうさまでした!やっぱりこの宿のご飯は最高に美味しいな!」


「そうですね。私たちが絶賛しているのですから、美味しくないわけがないじゃないですか!」


「ははは!それもそうか!」


俺はおもむろに、時計を確認する。時間はもう0時をまわっている。


「もうこんな時間か!そろそろ俺は寝るよ····おやすみ~」


「「「おやすみなさい」」」


「····おやすみなさいですわ」


挨拶を終えた俺はマナのことをずっと気にしながら自分の部屋のベッドに寝転がる。


「マナ····なんだが元気がなかったな····いったいどうしたんだろ」


俺はそんなことを呟きながら、瞳を閉じた。


俺は少し風に当たろうとベッドから出ようとする。すると、隣から寝言が聞こえた。


「すー····すー····んー····仁〜····」

(え!?な、なんで俺のベッドにマナが!?)


俺は、可愛い寝顔を見せるマナに布団を掛け、外に出る。


「俺は····この先、この力をちゃんと使えれるのだろうか····」


俺は手に意識を集中させると、黒い炎が出る。しかし、不思議と熱くない。


「まさか····これは····」


俺はその手で、そこら辺に落ちていた石を拾う。するとその石はボロボロになってしまった。


「晩御飯を食べてる時にこの炎は出なかった····つまり、いつ炎が出るか分からないということか····」


俺はクレア工房に行って、布製の手袋を作って貰った。サイズもぴったりで使いやすい。さすがクレアさんだな····


「『魔法付与エンチャント:時間停止タイム・ストップ』」


俺は手袋の繊維ひとつひとつに時間停止の魔法をかける。これで自由に動かせる、絶対に燃えない、劣化しない手袋の完成だ。


「まずは自分の魔力が暴走しないようにしないとな····あ!そうだ!」


俺は面白いことを考え、そのままマナと一緒のベッドで寝た。あ、ちなみにそういうことはしてないからね?オーケー?

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