魔王進化
「ヤバイ····死にそう····」
俺は宿のベッドの上で痛みに悶えていた。原因は····昨日の最上級魔法の打ち過ぎによるものだろう。最上級魔法を連発することは魔力が有る限り永遠にできる。だが、体へのダメージは蓄積され続ける。
「何をやってるんですの?仁····」
俺の部屋にマナが入ってきた。アリスは不思議そうに、悶えている俺をじっと見ながら問いを投げる。
「昨日··の····最上級魔法の····反動が来てるんだよ····」
俺は悶えながら必死に答えた。するとマナから答えが返ってきた。
「そんなの、魔法で治せれるんじゃないですの?」
「それができるなら····とっくにやってるよ····」
魔法の反動による痛みは時間経過でしか治すことはできない。それ故にどうすることもできない。
····ん?
そうだ!アストラルなら何か知ってるかもしれない!
(アストラル!)
(どうかしたのか?)
俺は心の中にいるアストラルに話しかける。
(確か、時間魔法を使えたよな?)
(確かに使えるが?····そういう事か····)
アストラルは俺の考えを読み取ったようだ。
(そういう事だ····)
(だが、気を付けろ····時間魔法は制御が難しい····)
(大丈夫だ····)
「マナ····1日の間ここで寝ているから、俺が起きるまで待っていてくれないか?」
「分かりましたわ····ちゃんと起きますわよね?」
「ああ····」
「『
俺は目を閉じ、時間魔法によって自分の体の時間を早める。だが、俺の記憶は加速されない。なぜかって?そんなの頑張ったとしか言いようがない。
そして、俺は目を開ける。
「よし!体の調子は····元に戻ったようだな」
ちゃんと1日経っているだろうか。なぜか足が重たい····足元を見るとマナが伏せて寝ていた。
「すー····すー····」
「ずっと見ていてくれてたのか····」
俺はマナの頭を優しく撫でる。すると、マナの目がゆっくり開く。そして頭の感触に気付いたのか、驚く。
「な!何やってるんですの!?」
「すまん、可愛い顔があったから撫でたくなってしまった」
マナの顔がみるみる赤くなる。そして、バッ!と立ち上がり部屋から出て行ってしまった。そして、部屋のドアからひょっこりマナが顔を出す。
「元気になって良かったですの····」
そう言うと、ドアを閉めてどこかに行ってしまった。
「さて!それじゃあ準備をしますか!」
俺は宿の食堂に向かった。
食堂に着いたときにはすでに全員が揃っていた。
「みんな!おはよう!」
挨拶をすると、アリスたちは驚く。
「仁、おはよう」
「お、おは...よう」
「おはようなのです!」
「····」
マナだけが俺のことを黙ってじっと見ている。
「き、今日の予定は?」
「今日はギルドの依頼を受けようと思っています。」
「へぇ~、どんな依頼なんだ?」
「盗賊の捕獲····です」
「なんか、面白そうだな!」
俺は頷き立ち上がる。
そして盗賊のアジトに向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
盗賊のアジトにて
「よし!これで最後のひとりだな!」
俺たちは無事に盗賊の一味を捕縛した。
「意外と····すんなり」
「あぁ、俺もビックリした」
まぁ一味と言っても、たった5人なんだけどな!
「しかし、たった5人でこんなに盗めるなんて····」
アジトの宝物庫にはたくさんの宝石や金があった。
「ん?なんだこれ?」
俺は盗賊が装備していた、何やら紋章が刻まれているナイフを見つけた。
「この紋章、どっかで見たことあるんだけどな~」
絶対見たことあるんだけどな····どうしても思い出せない。
「仁の聖剣にもその紋章があったような気がするのです!」
「それだ!」
ってことは、勇者の一族の物か····誰だよそんな協力な武器を盗まれた勇者は!
すると突然、ナイフを持った俺の手の勇者の証が光を放つ。
「眩し!」
俺はとっさに目を腕で覆うが間に合わず、少し目が眩む。
光が収まり目を開ける。すると右手の丸い形だった証に翼のような刻印が増えた。
「何だ...これ?」
すると今度は、王の証が光を放つ。さっきよりかは、眩しくない。
「今度はなんだ!?」
王の証の形が丸から星の形に変わった。
「まさか、勇者の証が変化すると、王の証も変化するのか!?」
俺が叫ぶと、リーが寄ってくる。
「王の····証?何····それ?」
しまった····みんなには俺が魔王ってことを秘密にしていたのに、自分で言っちゃった····
「え、えーっと~」
俺は一生懸命言い訳を考える。
「教えれないなら····それでもいい····誰にだって····秘密は····ある」
「ごめん····今は教えられない····」
「わかっ····た」
リーと話をしている間に、盗まれたものを回収していたアリスたちが戻ってきた。
「盗品の回収終わりましたよ!」
「それじゃあ、ギルドに戻ろう!」
俺たちは依頼の報告のためにギルドに向かった。
「おめでとうございます!冒険者ランクがBに上がりましたよ!」
「や、やったぜ!」
冒険者ランクは、GからSSSまであり、依頼を達成したり街に貢献したりするとランクが上がる。俺たち、ファイブナイツは黒龍を倒したという功績があるためCランクから始まっていた。
「とはいっても、変わったのはランクだけなんだよな····」
そう、Bランクに上がったところで金持ちになったりするわけではない。ただランクが上がっただけ。
俺たちは、宿の食堂でランクアップの祝いをすることになった。
「では、私たちファイブナイツのランクアップを祝って····」
「「「「「乾杯!」」」」」
俺たちはワインの入ったグラスをカチンとならしそれぞれ飲む。
「なぁ?Bランクっていうのはそんなにすごいのか?」
俺はアリスに聞く。
「凄いか、凄くないかでいえば、すごいです。Bランクのパーティーはこの世界に100といません」
「マジか!」
数万とあるパーティーの内の100に俺たちが入っているのだからメチャメチャ凄いんじゃないか?
「そういえば、ランクA以上のパーティーはどれくらいいるんだ?」
「今のところは4つしかないよ。ちなみにSSSランクのパーティーは昔存在していたという勇者7人で形成されていたらしいわよ?」
つまり、俺の師匠の先祖はとんでもないやつらの集まりに入っていたってことか····
「ねぇ~!仁!」
「うぉ!ど、どうしたんだマナ!?」
いきなりマナが抱きついてきた。まさかこの人、酒で酔ってるな?
「ちょっとマナ!もう····あれだけ飲みすぎないようにと言っておいたのに····ごめん仁····マナを部屋まで連れていくから····」
「分かった」
俺は時計を見る。時計の針は12時30分を示していた。
「もう、こんな時間か····」
俺は自分の部屋に戻って着替える。そして、素早くベッドに入って寝た。
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