強敵現る!
「武器のオーダーメイドをお願いします」
俺は今、クレア工房の受付で新しく使用する片手剣のオーダーメイドを頼んでいた。
「それではこちらの紙に記入をお願いします····」
防具を作ってもらった時と同じ紙を貰い、記入する。
そしてそれを受付に渡す。
「お願いします」
「了解しました。それでは代金と素材の提出を····」
俺は前と同じように代金と素材を出した。すると受付の人の手が急に震え出した。
「こ····黒龍!?少しお待ちを····」
そう言うと、受付の女性は店の奥に行ってしまった。
「やってしまった····」
俺は受付の女性がクレアさんを呼びに行ったことを知っている。
なぜなら····2回目だから。
「また君か····」
「すいません····」
俺はクレアさんに呆れられてしまったようだ····
クレアさんは先程提出した紙を見ると少し安堵の表情を見せた。
「今回はそこまで難しくないから工房の待ち場所で座っていてくれ」
「わかりました!」
俺が返事をしたときにはもうクレアさんは居なかった。
「仕事が早いな~」
それから30分後····
クレアさんが待ち場所に来た。
「できたぞ!」
「ありがとうございます!」
俺は受け取った双剣を一緒に作ってもらったホルダー付きのベルトの両横にしまう。クレアさんは忙しいのか剣を渡すとすぐに戻ってしまった。
「うーん····新しい武器を作ったは良いものの、魔法付与の仕方がいまいち分からないな」
俺が剣に
何かコツが必要なのかな?マナとに聞いてみよう。
「マナ!」
「なんですの?」
「魔法付与の仕方って分かるか?」
「私は攻撃魔法専門なので分かりませんわ」
「そうか····ありがとう!」
マナが分からないとすれば····リーなら分かるかもしれない!
「リー!」
「どうしたんです····か?」
「魔法付与の仕方って分かるか?」
「分かります····よ?どうしてです····か?」
「この剣に魔法を付与させたいんだ」
そう言って、剣を見せる。
「え····必要ないと思います····よ?」
「なんで?」
「もうすでに····たくさんの魔法が付与されてるから····です」
今思えば、俺は魔法付与をしただけでその魔法を発動するための魔力を込めていなかった。
「あとは····この剣に付与された魔法を全て発動させれるだけの魔力を通せば良いだけ····です」
「教えてくれて、ありがとう」
「どういたしまし····て」
これで、使い方は分かった。あとは戦いの中で維持ができるかどうかだな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1週間の間、俺は毎日のように黒龍と戦っていた。
「やっぱり、強いな黒龍は····」
「ゴォォォ!!」
この魔力を通した双剣では、黒龍をワンパンとまではいかないが、鱗を切り裂くことくらいは出来るようだ。
「でもなぁ····やっぱ銀龍の鱗は切れないだろうな····」
黒龍はものすごく暴れている。このままじゃ時間がかかる。仕方がないので、聖剣を使おう。
『聖剣召喚』
聖剣を一振りすると黒龍は真っ二つになる。
「やっぱ、聖剣強いなぁ。これに頼ってるとすぐ魔力なくなるから大変なんだよな〜」
特訓の成果によって俺の魔力量は5倍にまで上がっていた。
アイテムボックスに黒龍の死体をしまう。
「よし!帰るか!」
と、歩きだそうとしたその瞬間だった。どこからか飛んできた剣が俺の目の前を高速で横切った。
「····誰だ!」
いつの間にか俺の目の前にローブを纏った男がいた。
「我はアストラルだ····」
「なに?アストラルだと!?貴様は魔王の血を継ぐものか!」
「そうだ····」
「俺になんの用だ!」
「答える必要はない····」
聞く耳持たずか····本気で戦わなければ死ぬ。俺の心がそう言っている。
『
即座に俺は魔王の力を解放する。この前とは違い、魔王化することはなかった。
『聖剣召喚』『魔剣召喚』
俺は2本の剣を手に持ち、男に切りかかる。
しかし、その前に男の口が開く。
『
目の前の男から、衝撃波が出る。俺はそれに吹き飛ばされてしまう。
「くっ····これが本物の!」
「行くぞ現代の魔王よ······」
男の手に、俺と同じ2本の剣が現れる。俺が瞬きをした瞬間、男が消える。そして後ろに男がいることに気付く。
「遅いぞ····やはり所詮は人の身、この程度か····」
「くっ····このままじゃあ、殺られる!」
『
仁は自分のスピードを上げる魔法を使い、男に切りかかる。男は光よりも速い斬撃を軽々避けた。
「なに!?お前は、いったいどれだけ速いんだ!」
「我は光の速さなど等の昔に超えている····」
この男は強化魔法なしで、この次元までたどり着いた。きっと、とんでもない修行を積んできたんだろう。
「もう、お前の斬撃は見飽きた····この戦いを終わりにしよう····」
『
男の周りに黒色の魔力が集まっていく。それはどんどん膨らんでいく。しかし、男の魔力が霧散し、男の体が透明になっていく。
「そろそろ、時間のようだ····次こそはお前を殺す。覚悟しておけよ、現代の魔王」
男は完全に消えてしまう。
「とりあえず、助かったのか?」
『
自らをアストラルと呼んだあの男は、余裕で俺を捻り潰せれるだけの力を持っている。もしかしたら、あの男だけで、大陸が1個滅ぼせれるのではないかと思う。
「とりあえず、帰ろう」
仁は宿の自分の部屋に戻り、着替える。そして、アリスたちと晩ごはんを食べる。
「仁はまた修行ですか?」
「ああ」
「私たちも連れていって欲しい····です」
「危険だぞ?」
「いったい、何と戦っているんですの?」
「黒龍だけど?」
「黒龍なら、もう私たちでも倒せるのですよ!」
アリスたちは、銀龍の装備を着けているため、黒龍の攻撃など、簡単に弾いてしまう。
「考えておくよ。それよりも聞いて欲しいことがあるんだ」
「なんですか?」
あのローブの男について話す。
「へぇ~、聖剣を使う男ねぇ····」
「あれは、勇者の一族に伝わる聖剣と同じものだと思うんだ····」
「つまり、仁はその男が勇者で仁を倒しに来たって言いたいの?」
「そうだ····」
「はぁ····仁は夢でも見てたんじゃない?」
「なんでそう思うんだ?」
「だって、勇者が勇者を倒しに来たなんて、あり得るわけないじゃない?」
確かにそうだ。だって、あの場には俺以外に誰もいなかった。この話を信じる者は誰もいなかった。
「そうだな····ちょっと疲れてるみたいだから、寝るよ····おやすみ」
「「「「おやすみ~」」」」
仁は部屋に戻ってからもあの男のことを考えていた。
(あの男は確かに、聖剣召喚と魔剣召喚を使った...というか魔王はそもそも聖剣を持っていない····だとすると、あの男は····いったいどうして俺を殺そうと?)
「もう二度と会いたくはないな····あれはもはや神の領域に達している。次会えば確実に殺される····」
まだまだ修行は続きそうだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1ヶ月後、俺魔力量はあの男と戦った時の20倍まで増えていた。
「仁...あなたはいったい····何者なんですの?」
「急にどうした?」
「仁の魔力が100倍まで増えてるんですけど?これは、どういうことなんですの?」
マナは唐突に俺に問う。まぁ、そりゃあ常人の200倍もの魔力を持っていたら聞きたくもなるわな。
「毎日、自分の魔力を空にし続けてたら、ここまで魔力が増えた」
「それは、分かるのですけれど····100倍はないでしょ····」
俺もまさかここまで増えるとは思ってなかったけどなぁ····まぁ、良くない?別に····
「なんの話をしているの?二人とも」
「今、俺の魔力量についてマナと話してたんだ」
「仁の魔力量がどうしたの?」
マナがさっきの話を最初から最後までアリスに説明してくれた。
「仁····この世界で一番魔力が多い人って知ってる?」
「知らないけど?そんなに有名な人なの?」
「魔法皇ですわよ····なぜ仁は知らないんですの?」
誰だよ、それ?いやいや、「これ一般常識ですよ?」みたいなに言われても、この世界のこと調べる時間なんて、ほとんどなかったから分からないよ。
そう思いながら首を傾げると、アリスが説明を始める。
「魔法皇は、前の大戦を最上級魔法30発で沈めた、1国の王様です。そしてその後、魔力欠乏症になり、亡くなりました」
「へぇ~」
「仁は今、最上位魔法を何発打てるんですの?」
「そんなに使ったことないから分からないよ...確認しに行く?」
「では、平原に移動して試してみますの、そうすれば、大体分かりますの」
俺はアリスとマナに連れられ、平原に来た。
「いくぜ!」
『
まず、外に被害が出ないように守護領域で箱作る。
『
まずは、箱の中に1つ目の最上位魔法を発動する。
「まだ、体は大丈夫?無理してない?」
「全然、余裕だよ」
そう言いつつ、もう10回ほど惑星爆発を起こす。しかし、魔力はほとんど減らない。
「よし!次だ!」
『
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁ、もう疲れたよ····」
俺はもう最上位魔法を1時間も打ち続けたせいで、魔力が残り少なかった。
「仁、お疲れ様~」
「ずいぶんと長かったですわね」
二人が少し心配そうに近寄ってきた。
「俺、何発くらい最上位魔法を打ってたんだ?」
「大体、200発くらいですわね」
マジか。まさかそんなに打てるなんて思ってなかった····これで俺はこの国で一番魔力が高いことが判明してしまったわけだ。まぁ、『魂解放』を使えば、1000発は打てることになるのは····黙っておこう。
「さぁ宿に帰りましょうか····」
「そうだな」
もう、日が暮れ始めた。1日が終わるのは早いな...
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