第6話 若頭、女神にプロポーズする
メルディスの言い訳を聞いてみれば……どうやら、推し? と言うよりは、崇拝される人の数によりその世界を守護できるかどうかが決まるらしい。
そして、どうやら女神とは有る一定の期間その世界を守護すれば、次期女神候補たちと現女神とで、崇拝の人数により入れ替わると言うことのようだ。
では何故、魔王を暗殺しようとしたのか……それは、メルディスの任期が後数週間で切れるためだったようだ。
「はぁ~。おめーは……そんなことで、人様の命を奪おうとするなんて……まったく」
『うぅ……ごべんなさい~』
反省したのかシュンとしながら謝るメルディスの頭を撫でてやる。
しかし、世界を守護する女神も大変なんだな……。それにしても、次期女神候補って奴らは何人いるんだ? メルディスは女神でいたいのか……そうなると、結婚してつーのはどうなんだ? 嫌われるか?
うーん……。
無い頭で色々悩んだものの、まずは本人に聞いてみようと思い立ち直接確認してみることにした。
「なぁ。メルディス」
『あい……もうぅ嘘はついてないですよぅ』
「それはもういい。お前はきっちり謝ったし話したからな。それよりもだ、大事な話がある」
『なんですか~?』
「その……もしもの話だぞ? もしも次の選挙で女神になれなかったら、おっ、俺んとこに嫁に来る気はあるか?」
『ふぇ?』
「私は、お二人が結婚されるのであれば是非、キャラリン様と二人仲人をしたいと思います」
プロポーズ的な聞き方になってしまったが後悔はしていない。
ゴクリと喉を鳴らし、メルディスの答えを待っていれば……いつの間にか数センチ扉が開き、魔王の三白眼がこちらを見つめ、仲人をかって出た……。
「いや、おめーただキャラリンに会いたいだけだろ?」
「そそそそそそそっ、そんなことはありませんよっ!」
「わかりやすいぐらい、動揺してんじゃねーか」
魔王の言葉に、どうせキャラリン目当てだろう? と聞いてみれば、激しく動揺した。
真横にいるメルディスが、俺のシャツを引っ張るのを感じそちらを見れば、むぅっと頬を膨らませている。
「おー。すまん。それで返事は?」
『竜馬さん……私を好きなんですか?』
何を今更と思いはしたが、何か裏がありそうな気配を感じ訝しんで見れば、可愛く上目遣いに俺を見上げてきた。
くっ……幼い子供の姿の癖に、男心をわかってやがるぜ!
気恥ずかしい気持ちを隠すため、半ばやけくそ気味に「あぁ。そうだ! 俺はおめーに惚れてる」と認めれば、メルディスは実に嬉しそうに笑って見せた。
「それで、おめーは俺の嫁になる気はあるのか?」
『もし女神に
「おっ、おう」
『ふふっ。よろしくお願いしますね。だ・ん・な・さ・ま♪』
「おっ、おう」
本音を言えば答えは否だと思っていた。……原因は、この顔にある。ガキの頃、母親の不注意で、ベランダから落ちた俺は命は助かったものの、木の枝で額から頬にかけ生涯残る傷を負ってしまったからだ。
母は、何故か俺の顔に残る傷を塞ぐことはせず……自身の好きなジャ○ーズ所属のアイドルグループARYASHIの松木順三郎の顔に似せるため整形を受けさせたのだ。
そのせいで……元が不細工な親から生まれたガキが、イケメンと呼ばれる種族になるはずもなく……不細工が更に傷を負うことで、凶悪な面構えになってしまうと言う惨状を招いた。
おかげで、ガキの頃から女子と言う女子に、姿を見せれば怖がられ目が合えば泣かれると言う人生を歩んできた。
嘘じゃねーよな? これが夢でしたなんてオチになったら俺は!
自分の耳を疑い、思いっきり頬を殴りつければ痛みを感じた。
「うぉぉぉぉ!! 痛ぇ~。母ちゃん、父ちゃん、親父、義兄弟、そして舎弟たち、俺はっ、俺はついに嫁を迎えることになったぞぉぉぉぉ!」
喜び吠えるように叫んだ。
メルディスに、旦那様と言われ浮かれポンチになった俺は、この時メルディスの言葉の意味を理解していなかった。
あの事を思い出すのに相当の時間をようした……そう、プンティーのことだ。
俺は、不憫な幼女を養女に迎えるべく、まずは嫁を説得しようと試みた。
「メルディス」
『はい?』
「実はな、プンティーを養女にしたいと思ってんだが、おめーはどう思う?」
『養女……ですか?』
訝しんだ顔をすると、こめかみに指を置いたままメルディスは黙り込んでしまった。
今言うべきことじゃなかった? けどよー。いずれは話すことだったしな……早めに聞いておくに限るだろう! それにだ、相手に黙ってことを運ぶなんざー漢じゃねーしな! そうだろ親父?
魔王の間の扉を見つめ親父を思い出せば、梅○辰男ばりに黒く日焼けした親父がアロハシャツ姿で大きく頷いた。
それでも、頭に入れておいてくれればいいと考え、メルディスに「今すぐ答えなくていい。考えておいてくれや」と伝えた。
彼女はそれに頷くと、戻る時間だと言い残し消えていく。
その刹那、何かを思い出したのか俺に光沢のある白、黒、赤の色をしたあるものを投げてよこした。
「うぉ! 花子じゃねーかぁぁぁ!」
口をパクパク動かす花子が苦しそうに見え、魔王の三白眼に向って水槽を要求すると魔王は、人さし指を1本だけ数センチ開いた扉から出すと「テエクロマイクムマエヤッコサンイム」と唱え、金魚鉢を魔法で作った。
「ちいせーよ!」
「大丈夫。それどんな魚も入る」
「本当か?」
「……た。ぶ。ん」
はっきりしねー野郎だ! と少し焦りを覚えるも、苦しそうな花子のことを考え、やけくそ気味に花子を突っ込めばなんと、花子がスゥーと金魚鉢に吸い込まれていった。
ガラス越しに覗けば、優雅に泳いでいる。
「うおぉぉ。魔法ってすげーなぁー! 感謝するぜ!」
魔法に感動しつつ、未だ目と指しか判らない魔王へ礼を言った。
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