第10話



タイムマシン計画が軌道に乗ると龍介の仕事は殆ど無い。

ネジ止め位だが、亀一が龍介には任せないので、龍介はふらっと現れて調達物資が無ければ、帰ってしまう様になっていた。


「加納は1人で何してんのかな…。」


悟が若干心配そうに言うのがちょっと嬉しくて、3人は自然と笑顔になった。


「龍はああ見えて忙しいんだよ。ポチの散歩もあるし、チビ達の遊び相手もしてやってるし、チェロもあるし。」


「ああ、チェロね。」


音楽会などで龍介がいるクラスはピアノの伴奏の他、龍介のチェロの伴奏もついて、ゴージャス感を増していた。


「全く…なんでも出来んだから…。」


大分龍介とは打ち解けてきたものの、結局憎々しげに言う悟に、寅彦が笑いながら言った。


「でも無いぜ。な?きいっちゃん。」


「そ。何故常にチェロで伴奏になっているかが鍵だ。」


「は?どういう事?」


朱雀が笑いながら暴露する。


「龍はね、音痴なんだよ。」


「音痴⁈あの顔で⁈」


驚く悟に亀一が説明し始めた。


「そう。凄え音痴。いくら指導しても何歌ってんだか分からん。あまりの深刻振りに、先生も諦めて伴奏させる事にしたんだ。」


「あんなにチェロが上手く弾けるのに、なんで音痴…。」


「分からん。七不思議の一つだな。」


「はあああ…。びっくりだな。面白い…。」


その頃龍介が酷いくしゃみをしていたのは、お伝えするまでもないだろう。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る