嗣ぎ合わせの屍骸
仲田頼葉
蹂躙する魔将
『私達は貴方を歓迎します。』
『ーーーーーーッ!!』
何処かで誰かの叫び声が聞こえた。
悲鳴にも似た苦痛が混じった叫び声だ。
聞き馴染みのある音。
そうだ、これは生物が絶命する音に違いない。
竜のように猛々しい音ではなく、かといって蟲のように甲高く響く音でもない。
すぐに壊れそうでか細いニンゲンの声だ。
その叫び声を境に森には静けさが戻った。
さっきまでの鉄がぶつかり合う音や大地が振動する音、怒号が嘘のように感じる。
ふと、鼻に意識を向けると森の匂いに混じって他の臭いが漂ってきた。
これも嗅ぎ慣れた臭いだ。
生物が死んだ臭い。
生物を生物足らしめる潤滑油が漏れ出ている臭いだ。
私はその臭いの元へ近づいていく。
木々が薙ぎ倒された空間にニンゲンの死体が4つと膝をついて今にも倒れ込もうとしている姿があった。
巨体に緑色の皮膚、鋭い牙に大きな鼻。
一体のオークがそこにはいた。
「ッ!…てめぇ、何モンだ?」
オークは私の存在に気がつくと一瞬体を竦めたが、すぐにこちらを威圧しドスの効いた声でそう言った。
満身創痍で威圧するその姿は滑稽にも見えるが気概は称賛に値する。
何せ彼は種の進化を促される程の死闘を繰り広げた後なのだろうから…。
「これは失礼。貴方の戦闘を拝見させて頂いておいて挨拶を忘れるとは」
私の口調に虚をつかれたのだろうか、少し緊張の糸が緩んだようだった。
なお顔は硬いがさっきまでの悪鬼羅刹のような形相よりはマシだろう。
「私は魔王様配下、魔将が一体。『
「魔王だと!?」
魔王様の名前が出た途端、その表情は困惑と驚愕をない交ぜにしたような表情へと変わった。
魔族では知らぬものがいない、魔族の頂点。
その魔王の直属の配下が何の用だとでも言いたげな表情だ。
「えぇ、そうです。魔王様よりこの森での戦闘を見届けよ、との命令でやって来ました」
「……で?その魔王サマの配下サマが俺に何の用だってんだ」
回りくどい言い回しは好きではないらしく、本題を切り出してくる。
「魔王様はこうも仰っていました。『結果次第で引き入れよ』と…。見たところ貴方が今殺したニンゲンは勇者の一人のようですね。しかも貴方の存在力は桁違いに膨れ上がっている」
つまり、と私は少し溜め、仰々しくかつ優雅にオークへと今回の用件を告げた。
「私達は貴方を歓迎します。
嗣ぎ合わせの屍骸 仲田頼葉 @KunugiY
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