僕も君もまだ知らない

@aceyou

第1話

喉から生きた血がどろりと落ちた。

20xx年、我々人類のそこまで遠くない未来。

車が空を飛ぶ訳ではないが運転手の必要のない車が開発されて事故もめっきり減った。

自宅ではAIとの共存が確立され一家に1人マイボットがいる生活が当たり前。

マイボットは購入者個人の情報を元に個々で異なる性格を持つ。

例えば旦那を亡くした女性には過去に居た旦那の性格に限りなく近く、購入者が富裕層ならば愛人や召使い。その家庭にあったマイボットがいる。

僕の家は昔から貧乏で一台数十万のマイボットなんて夢のまた夢でした。あの日まで…


20xx年9月15日13時50分あの日全世界の人間が花火を見るかのように空を見上げていた。燦々と地球を照らす太陽が2つ現れたかの様にそれは現れた。

丸く丸くどこまでも黒い球体。突然現れたその球体には大きく3とだけ数字が書いてある。誰もその意味は分からない。初めは手持ちのスマホで写真を撮るものばかりだったが数週間もするとそのもう一つの太陽は我々の生活に溶け込んだ。

20xx年12月31日から日付が変わる時それはごく自然に2へと変わった。

気がついたのは僕がいつも通りコンビニのバイトをしている時。ふと空を見上げると2に変わったもう一つの太陽が浮かんでいる。

何故だか不安は無くただただ数字が減った球体を写真に撮ってSNSにアップした。

同様、全国各地で同じ写真がアップされ一時は終焉へのカウトダウンだの宇宙人が攻めてくるだの噂が広がった。

次の日ニュースではもう一つの太陽の数字が減った事と新型のマイボットが開発され数日中に販売が予定されているとのニュースが大々的に取り上げられていた。大学でAIプログラミング学を学ぶ僕にとってそれは物凄く興味を沸き立てられた。

マイボットとは福嶋重工が発表し同時に世界各国で当時10万台以上売れた高人工知能が搭載されたロボットである。また1年に1度改良がなされ新型モデルが発表、発売される。

ただマイボットはどの様に開発され生産されているかは福嶋重工のごく僅かな人間しか知らないらしい。

現在、就活中の僕はこの福嶋重工に入社する為に友達も作らず毎日AIの事を調べては研究しその成果により福嶋重工のインターンを受けられる事が決定した。

東京港区にある福嶋重工本社ビルのエントランスに当日集まる様事前に聞かされていた。

インターン当日、僕を含め選ばれた4人がエントランスに集まった。もちろんその場で自己紹介が始まった。


「俺の名前は佐藤純、明王大学から来たんだ!短い期間だけど宜しくな!

「私は野田彩子、万葉大学から来たわ。宜しくね。

「えーっと、僕の名前は三上大知。智星大学から。お願いします。

「…

佐藤「お前名前は?

「内本真矢

野田「真矢ちゃんか!宜しくー


その瞬間、エントランスの光が遮られ1人ポツンと白衣の男性が立っていた。

「ようこそ皆さん。我が福嶋重工へ。私がこの会社の代表をしております、中井と申します。本日から皆さんには弊社でとびきり愉快で思い出に残るインターンを送って頂きたい。あ、そーだ。この会社で見た物、聞いた物は全て外には口外しない様に。身の保証が出来ないからね。それから今回インターンを受けてもらうに辺り全ての電子機器を預からせて頂きます。変な電波でてたらあの子達…いやマイボット達に異常が起こりかねないからね。

佐藤「へぇ。あれが代表か。初めて見たけどなんか嘘くさい奴だな。あんなんが時価総額数兆円の代表だなんて

中井「こらこら佐藤君、人を見た目で判断しちゃいけないよ?それからロボットもね。ではここからは私の秘書が社内を案内するからくれぐれもはぐれない様にね!では!

秘書「それではこちらへ

秘書から案内された待合室には先程中井が着ていた白衣と同じ物が人数分用意されていた。

佐藤「お!研究者っぽくなってきたじゃん!

野田「佐藤君はしゃぎすぎ、いつも大学でも着てるでしょー笑

佐藤「三上も着てみろって!なんかいつもと違うからこれ!

三上「う、うん。確かになんか働いてるって感じする。内本さんは?着ないの?

内本「私、遊びに来たんじゃないの。そんなの毎日着てるでしょ大学の研究で。

佐藤「つれねぇなぁ。まぁそんなんはほっといて大学でどんな研究してたか話そうぜ!

かれこれ数十分話していただろうか。佐藤はAIによる自動配達の研究、野田はAIによる医療科学の研究が評価されここへ呼ばれた様だ。

佐藤「内本は?どんな研究してたんだ?

内本「クローンにAIを搭載し独自感性を持たせる研究

佐藤「はっなんだそれ。それじゃクローン人間作るみたいなもんか。

内本「そんな簡単な話じゃないわ。分からないわよあなたには。

佐藤「なんだよその言い方。変わり者は1人で楽しんだろよ。

その場の空気がどんよりするなか先程の秘書から内線がありエントランスに白衣着用で集合するよう言われた。

その白衣に腕を通すのが間違いだとも知らずに

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕も君もまだ知らない @aceyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る