第5話 思ったより面白い

放課後、僕は優馬に誘われた。


「なぁ、なんか藤堂ふじどうがカラオケ行くんだって。お前も来いって言ってるよ。」


「え?藤堂が…?」


僕は驚いた。正直藤堂とはあまり話したことがない。


「え…優馬は行くの?」


僕はまずは優馬が行くか気になった。


「んー今日バイトもないし行こうかなぁーって思ってる。

 まぁ、晴斗も暇だったら一緒に行こうよ。無理にとは言わんが。」


「あぁー…」


僕は優馬が行くなら行こうとも思ったが少し迷った。

優馬は僕とは違いクラスメイトの人とそれなりに話している。

たぶん僕は優馬のついでなんじゃないかと思う。

そうこう考えていると藤堂たちがやってきた。


「めんどくせーな。行くのか行かないのかはっきりしろよ君島。」


藤堂が直接僕の元へやってきた。相変わらず口が強いから少し苦手だ。


「行こうぜ。晴斗。金なかったら俺払うし。」


そう言われて僕は断る理由もなかったので仕方なくカラオケへ行くことになった。

駅前のカラオケ店で僕と優馬と、藤堂とよくつるんでいる箸橋はしばし新島にいじまの5人で行くことになった。僕はいつもクラスメイトからの誘いを断っていたが今回は連れていかれてしまった。正直、優馬や高志以外のクラスメイトとはあまり関わったことがなかったので少し気まずい。


「どっちの道行く?」


優馬が僕を見つつ通学路の方か大通りからカラオケ店に行くか聞いてきた。


「いつもお前らが通ってる方から行こうぜ。」


藤堂が大通りを選んだので僕たちは大通りへ行く。


「藤堂、僕と優馬がこっちから通ってるの知ってたんだ…」


僕がそういうと藤堂が僕に言った。


「なんかいつもお前らこっちの道歩いてるだろ。わざわざ遠回りなのにさ。

 なんか面白いもんでもあるわけ?」


すると優馬が答えた。


「面白いものはないけど…こっちの方が雰囲気あるだろ?」


「雰囲気ってなんだよ。」


藤堂は優馬につっこんだ。

箸橋は「この道が雰囲気があるというのは分からなくもない」と

優馬に同意を示していた。


すると新島もうなづきながらつぶやいた。


「まぁ、彼女と二人で帰るならここの道いいかもしんないけどな。」



そうこう話しているとカラオケ店に着いた。

僕の高校の制服を着た生徒や他の学校の生徒もいた。

しかし、そんなに混んではいなかったのですぐにカラオケをすることができた。

僕たちはドリンクバー飲み放題で3時間歌うことにした。


「よし。俺先歌うわ。」


先に曲を入れたのは藤堂で勢いよく歌い始めた。

最近流行っている恋愛曲で、

藤堂はあまり歌は上手いとは言えないが感情を込めて歌っていた。


「藤堂、好きな奴でもいるの?」


そう言ったのは新島だった。

すると箸橋が答えた。


「いるよ。こいつ甘井が好きなんだって。」


「へー」


僕たちは声を合わせてうなづいた。


「おい、てめぇ何言ってんだ箸橋。」


そう言うと藤堂は箸橋にプロレス技をかける。


「言っとくけど俺、甘井のこと好きじゃないから。」


そう言いつつも藤堂は顔を真っ赤にしていた。


それからどんどん曲をいれ歌った。

僕も今流行している曲を入れて無難に歌った。


すると藤堂が言った。


「お前、上手くね?」


「え、そうかな」


僕は歌を少し褒められて嬉しかった。

最初は気力がなかったが、思ったより楽しく歌えた。

カラオケの料金は500円で学生料金なので結構安く済んだ。


「はぁ~、歌った歌ったー」


「な。すげぇ疲れた。」


それぞれ口々に話す。

結局、僕は優馬や高志の他にこの3人とも遊ぶようになった。


藤堂は軽音部のギターで結構上手いと評判である。

しかし口が悪いため先生にはあまりよく思われていないらしい。

僕も最初は苦手だったが思ったより悪い奴ではない。

箸橋は藤堂と同じ軽音部でベース。縁の下の力持ちである。

箸橋は結構話しやすい雰囲気がある。

新島は野球部でポジションはライト。

前は坊主だったが最近少し髪を伸ばしモテるようになり彼女がいるらしい。

今知っている3人の情報はこれくらいだ。


僕は、そんな感じで少しずつ友達もできていった。







―――それからも、このメンツで結構遊んだりするようになった。


「なぁ、今日はゲーセン行こうぜ」


相変わらずいつも提案するのは藤堂だが、それぞれ部活やバイトのない日は遊ぶようになった。今日は電車に乗り隣町で遊ぶ。優馬の最寄り駅でもある。


「今日は絶対、とってやる。」


そう言って優馬は意気込んでいる。

というのは、優馬はどうしても欲しいキャラクターのフィギュアがあるらしい。

ゲーセンに着くと僕たちは優馬を見物した。


「ああーくそ。とれねー」


優馬は、なかなかとることができず悔しがる。


「え、俺にも一回やらせろよ」


と藤堂が優馬をどけて挑戦するがフィギュアは取れなかった。

藤堂も負けず嫌いでフィギュアを取ろうと意気込んだ。

優馬と藤堂は何としてもこのフィギュアを取るために金をつぎ込んでいった。

その様子を僕と箸橋と新島は無言で眺める。

僕はお腹がすいてしまった。


「僕、そろそろお腹減っちゃった。」


そう言うと箸橋も、


「俺もー。なぁ、そろそろどっか食いに行かね?」


新島は飽きた様子でスマホをいじり「うん、俺も」と軽く言い

藤堂と優馬も腹が減っていたらしくいつも通りファミレスへ向かった。

僕たちはいつものようにメニューを見る。


「今日何食べる?」


優馬はみんなに聞いた。


「俺はパスタ。」


藤堂はすっぱりという。


「藤堂いっつもあのパスタ食うよなぁ。」


という箸崎。


「ていうか、藤堂は店のチーズかけすぎだつっーの。」


と新島。


「それな」


とみんなで馬鹿笑いする。


僕たちはドリンクバーで様々なジュースを混ぜ飲みあった。

もちろん、店に迷惑にならないように必ずジュースを飲み干すというルールだ。


「まって、それ色えぐくね?」


僕のジュースを見るとみんなが笑った。

僕の混ぜたジュースは結構どす黒い色だった。


「え、そうかな?」


と僕はボケて普通に飲んで見せたりする。

正直、最近は何をしても面白い。どうでもよくてくだらないのに笑ってしまう。


こんな風に僕の高校一年の冬は思ったよりも楽しいものへ変わっていった。





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