第4話 園芸部の日
今日は園芸部がある。授業後、僕と優馬は学校のジャージに着替えた。
今日は学校の花壇に新しく花を植える作業がある。
僕と優馬は集合場所である体育館前の花壇へ向かった。
「今日は花壇の整備か。」
優馬はそう言い軍手をつけた。
僕もいつも通り軍手をつけ優馬と会話する。
「だね。今日は花も植えるから結構大変だよー」
園芸部の活動内容は基本的に学校の花壇の整備や清掃などである。
毎日花の水やりを交代で担当している。
僕と優馬は二人で火曜日の昼休みに花の水やりを担当している。
週一回の部活では主に花壇の整備か掃除をする。
園芸部の部員は全員で8人いる。
顧問は、
一年生は僕を含めて5人。
僕こと
1年E組の写真部と兼部している写真と植物が大好きな
この三人が園芸部1年の男子だ。
後の二人は女子で1年C組の
松村さんは花屋の娘らしく元気で気が強い女の子だ。
菊川さんは無口で正直何を考えているのか分からない女の子だ。
二年生は女子の先輩が2人。
佐藤梓先輩と井口くるみ先輩。
この二人はとても仲が良く三年生の先輩である
3年生は仁先輩一人で園芸部唯一の三年生。
穏やかでメガネをかけた優しい先輩である。
仁先輩は受験を控えているが時々園芸部に顔を出しに来る。
今日は受験勉強の息抜きということで来ていた。
顧問の高間先生は今日は会議で来れないという。
部員はたったの7人でかなり人数の少ない部活である。
部長である2年生のくるみ先輩がいつものように今日の予定を話した。
「今日はこの体育館前の花壇に花を植えていきます!がんばろうねー」
「はーい!」
とりあえず、みんなで手分けして花を植えていく。
この色とりどりの綺麗な花たちをたった7人の部員で植えていく。
「この花何ていうのかな…」
僕は綺麗な白い花を見た。正直、園芸部だけど花の種類や名前は全然分からない。
「知らね。松村にでも聞けば?おーい、まつむらー」
優馬も知らなかったらしく花屋の娘である松村さんを呼んだ。
「あぁ、それはノースポールよ。
寒さに強い花だから今の時期には良いと思う」
「へぇー詳しい。」
今野がそう言いパシャリと音を立てて僕たちの写真を撮った。
今野はいつも一眼カメラを手に持ち写真を撮影している。
「ちょ、あんた、ちゃんと花植えなさいよ。」
松村さんが今野に注意するも今野は写真を撮ってばかりだ。
それを見ていた梓先輩が今野を呼んだ。
「あ!今野君、私たちのこと撮ってよ!」
くるみ先輩と梓先輩がポーズを決める。
「もちろんです。いきますよー」
今野は写真を撮り始める。
それを見ていた松村さんはため息をついた。
「はぁ~」
松村さんは責任感が強く、
一年生ながら、この自由人だらけの園芸部をまとめている存在だった。
すると松村さんは3年生である仁先輩に助けを求めた。
「仁先輩も、注意してくださいよー」
「あ、ごめん。おーい、そこの三人~。ちゃんと花植えてねー」
相変わらずおっとりした仁先輩は注意も緩い感じだ。
梓先輩とくるみ先輩が「もちろん!」と叫んだ。
優馬がつぶやいた。
「花の種類とか全然分かんないけど、綺麗だな」
すると松村さんが反応した。
「でしょ?森岡、最初は花とか興味ないとか言ってたけど
綺麗だと思うようになったんだね。」
優馬と松村さんは結構仲がいい。
というより松村さんは多分、優馬の事が好きだ。
僕は二人の会話を聞いて少し微笑ましくなる。
少し離れたところで菊川さんが黙々と丁寧に花を植えていた。
僕が少し菊川さんに視線を向けていることに気づいた松村さんは、
「小春ったら、凄い集中してるわ」
といった。
すると優馬は、
「菊川さんの名前可愛いよな。小春って。」
と真顔で言った。
僕はどう反応していいか分からずとりあえずうなづいた。
カメラマンである今野が菊川さんに近づく。
そして、パシャリと菊川さんの写真を撮った。
さすがの菊川さんもそれに気づいたようで今野の事を見た。
「…」
菊川さんは無言で今野を見た。
「あぁ、すまん。でも、お前けっこう良い被写体だからさ。」
今野はそう言い菊川さんを撮り始めた。
その様子を僕と優馬と松村さんは眺めた。
菊川さんは、カメラの事を気にせず花を植え始めた。
僕と優馬と松村さんも今野と菊川さんのそばへいった。
松村さんは菊川さんに話しかける。
「大丈夫?小春疲れてない?」
「うん。大丈夫だよ。」
菊川さんは松村さんや女子の先輩には笑顔を見せる。
だけど僕たち男子とは全く話してくれないのだ。
―――なんやかんやありながらも花を花壇に植え終えることができた。
「みんな、お疲れ!」
くるみ先輩が元気いっぱいに声をあげる。
すると梓先輩がいった。
「あ、そうだ仁ちゃんしばらく受験勉強で園芸部来れなくなるらしいからさ、
今日ファミレス行こうと思うんだけど…みんな来れる?」
みんな来れるということで僕たちはそれぞれジャージを着替えるために更衣室へ向かった。
「仁先輩。受験勉強どうすか?」
優馬が質問する。
「うーん…まぁ勉強はしてるけど、こればっかしはどうなるか…」
仁先輩はメガネを外し、上のジャージを脱ぐ。
「仁先輩って理系にいくんですよね?」
今野もぐいぐい先輩に質問する。
男子更衣室では他の運動部の男子が多くいた。
制汗剤と汗のにおいが漂いサッカー部の時のことを思い出す…
僕は、こんな空間で先輩に受験の質問をすることは少し抵抗があった。
男子更衣室はいつも騒がしいし、
仁先輩は気にしている様子はないが僕はなるべく無神経なことは言いたくなかった。
僕たちは着替え終えて校門の前で女子を待った。
少ししてから、女子がきた。
そしてファミレスへ向かった。
男子四人と女子四人で向き合いまるで合コンのように席に座った。
今までも8人でファミレスへ寄っていたが少し久しぶりである。
僕は一番奥の席に座った。目の前には菊川さんが座っている。
菊川さんはじっと黙っていた。
菊川さんは松村さんが話しかければ反応するが、
それ以外は飲み物を飲んで黙っている。少し緊張しているように見えた。
くるみ先輩と梓先輩が仁先輩に受験勉強の事を聞く。
僕たちもそれに耳を傾ける。
仁先輩は農業が学べる大学を目指しているという。
僕たちは仁先輩の話を聞き人生の参考にした。
ファミレスを出てそれぞれの帰り道へ別れた。
今野と松村さん、仁先輩は徒歩で帰る。
梓先輩とくるみ先輩は自転車通学だった。
僕と優馬と菊川さんは、園芸部の帰りはいつも一緒に帰っている。
といっても、ほとんど菊川さんは話さないが女の子を一人で帰らせるわけにも行かないので一緒に帰っている。
僕と優馬は、ほぼ二人で会話しつつも菊川さんにも話しかけた。
ファミレスから帰る場合はちょうど僕がいつも通っている大通りから帰った方が近いということを知っていたので、菊川さんにもこっちの道を通ってもらっている。
「今日疲れたな。」
優馬がそういい、のんきに伸びをした。
「疲れたけど、楽しかった。」
僕もそう言い、少しだけ菊川さんもうなづいた。
辺りはもうだいぶ暗い。
僕と優馬と菊川さんは帰る方向が同じ電車で優馬が最初に降りる。
電車はラッシュではなかったので、あまり混んではいなかった。
僕たちは少し疲れ電車では無言になった。それぞれスマホを見る。
そして、途中で優馬の最寄り駅へ着いた。
「んじゃ、またね」
そう言って優馬は俺と菊川さんに手を振り電車を降りた。
優馬の最寄り駅は結構人が下りる。
だから席も空く。
菊川さんと僕は二人になる。
この瞬間がいつも気まずい。
電車は人が少ないし、席も空いているが座るかどうか迷ってしまう。
菊川さんはスマホを見ていて誰かとやりとりしているようだった。
僕は空いている席に腰を降ろすと、松村さんも一つ席を空けて僕の隣に座る。
これが、いつも通りの距離感だった。
何となく今日は菊川さんに話してみようという気になった。
「菊川さん、今日は花植えるの大変だったねー」
僕はそう言い菊川さんに笑顔を向けた。
菊川さんはうなづいた。よく見ると少し微笑んでいるようにも見える。
菊川さんは美人という感じではないが
肌は白いし顔も優しげなので笑うと結構可愛いんじゃないかと思う。
本当はもっと話してみたいが、
いつも話そうとすると菊川さんの最寄り駅についてしまう。
菊川さんは最寄り駅に着くと立ち上がる。その瞬間にいつも僕は手を振る。
「じゃあ、菊川さん気を付けてね!またね!」
僕は笑顔で菊川さんに手を振り見送る。少しだけ菊川さんも手を振ってくれる。
この時いつも胸の中がほわほわする。
自分でもよく分からないが、菊川さんを守ってあげたいような気がする。
僕は電車に揺られ自分の最寄り駅に着くまで目を閉じた。
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