第3話 月曜日の朝は特に憂鬱
ああ、朝になっちゃたよ。学校じゃん。行きたくない。
そう思いながらも、ちゃんと僕は布団から這い上がった。
だんだん寒くなってきて毎日布団から出るのも億劫だ。
朝の準備を終えると、いつもの7時30分の電車に乗って通学した。
朝の電車は人も多いし憂鬱だ。
気分を上げるために毎日電車でイヤホンをしている。
とにかく音楽に集中すると、あっという間に学校がある駅に到着するのだ。
朝は本当に憂鬱だ。特に今日は月曜日だから尚更億劫だった。
でも今日は天気が晴れてるから、まだましかなぁ…。
そう思っているうちに学校の最寄り駅についた。
僕の学校は駅から歩いて30分。
結構遠い気もするけど、いい運動になっていると思う。
僕は、いつもの道をゆっくり歩いた。日の光がイチョウの木やもみじを照らす。
ぼんやりした意識が少しずつ夢から覚めるようにはっきりしてきた。
朝、学校など行かず、純粋にこの道を歩くだけなら良かったのに…
なんて思うこともあった。
あっという間に、学校へ到着。
僕はいつもクラスで3番目くらいに教室に到着している。
学校の下駄箱で上履きを履き階段を上り自分の教室に近づいて来ると、
ほんの少し動悸がする。
教室に入りたくない。
そんな思いもある中、ちゃんと扉を開けて朝の静かな教室の自分の席に座る。
すでに教室にいるクラスメイトはスマホをいじっている。
僕も鞄からスマホを取り出し何となく眺める。
しかし、すぐに目が疲れてしまった。
少しずつ登校する人が増え教室中でクラスメイトが、べちゃくちゃとしゃべりだす。そして僕の友達も登校してきた。
「おはよっす!晴斗!今日って英単語のテストあったけ?」
僕の友達の
「おはよう優馬!あるよ。78ページのところ」
朝のホームルームが始まるので優馬は僕に一声かけて、すぐに自席へ戻った。
正直このクラスで仲のいい友達は優馬くらいだと思う。
一時間目は現代文。僕は国語はかなり好きなのでいつも楽しみにしている。
色々な作者の感情や経験に触れることができ、とにかく面白い。
僕の席は窓際の一番後ろ。
かなりお気に入りの席ではあるけれどプリントの回収が少し億劫だったりもする。
一番後ろの席で面白いのはクラスメイトの授業中の行動が見渡せることだ。
寝ている人もいれば隠れてスマホを見ている人。
他にも、お絵かきをしたり、こそこそと話してるやつらがいることもある。
僕は、しっかりと授業を聞いてノートにメモを取る。
学校には学びに来ているわけだから来たら勉強はする。
それは、もう自分でしっかりとけじめをつけていた。
休み時間になると僕の前の席の女子、
「ねぇ、晴斗君。ノリ持ってない?」
「ああ、ノリ…。」
僕は筆箱の中からノリを取り出して甘井さんに渡した。
「ありがとう!ちょっとこれ借りるね!」
甘井さんは僕からノリを奪いプリントを貼っているようだ。
僕は内心この甘井さんが苦手だ。いろんな人に声をかけて仲を深めようとしているのかどうかは知らないけれど、なるべく関わりたくない人物の一人である。
甘井さんはクラスの中では人気はあるけれど、やはり僕のように甘井さんを苦手としている人も一定数いるようだった。
「ありがとう。」
甘井さんは形では礼を言うが僕のような奴を上手く利用する癖があるらしい。
文房具くらい自分で用意しろよと思ってしまう。
自分で自分の事をなんて心が狭い人間なんだと思ったが、やはり毎回のように物を借りられるのは不愉快だった。そろそろ文房具を貸すのを断ろうと思う。
二時間目は英語。僕が数学の次に苦手とする教科。
クラス別で行われるが僕はもちろん下のクラス。英語の授業は教室を移動する。
寒いから教室から出たくない。
そう思っていると優馬と
仕方なく教室移動した。ちなみに高志はバスケ部でスポーツマン。
勉強は得意な方だけど英語はかなり苦手みたいだ。
授業中に発音したり話したりするのが恥ずかしいとか言ってたな。
確かに高志は寡黙で発表などは少し苦手らしかった。
でも、最近は英語を克服するために図書室とかで勉強しているのを見かける。
高志は偉いと思う。僕とは大違いだ。
英語の教室へ行く。授業が始まった。
みんな元気がない。先生が単語を発音した。
生徒はとても小さな声で単語の発音の真似する。
「みんなー元気出して」
先生が頑張って授業を盛り上げようとしたが結局駄目だった。
教科書の問題を先生が順番に当てていく。
僕は授業で当てられるのが一番嫌いだった。
特に英語はさっぱり分からないから困る。
なんとか今日の授業では当てられなくすんだ。
「英語だるかったなー」
優馬はあくびをして言う。
「うん。英語なぁー…なんか申し訳ないけど眠くなるんだよな。あの授業。」
二人もうなづいた。僕は心の底から英語が嫌いなわけではない。
英語の映画なんかはよく観るし話せるようになりたいというひそかな願望もある。
そのあと高志がぽつりと言った。
「俺、英語で海外のバスケ選手とかと話してみてたいな。英語が出来るようになったら他の言語も勉強したいし、いろんな国の人と話せたら楽しそう…」
高志は海外のバスケ選手に憧れているらしい。
「高志は偉いなー。俺、何の目標もなくて英語の授業だるいとか思ってたけど、
確かに英語話せれば、ぜってぇ楽しいよなー勉強すれば世界が広がるかもな」
優馬もしみじみとそう言った。
あっという間に憂鬱な月曜日の授業も終わった。
僕は優馬と、たくさんの落ち葉を踏みしめながら歩いた。
「高志は月曜から部活かー大変だな。」
優馬はのんきそうにそう言うが優馬もこのあとバイトがあるらしい。
「優馬もバイトだろ?それに比べて僕なんて帰宅だよ。自分でも何かしないとって思うんだけど、なんか動き出せないっていうか…めんどくさくって…。」
優馬は真顔で僕の顔を見た。
「いいんじゃないか。それは、それで。高校生だし。俺だって、何となくバイトしてるだけだし。無理はしなくていいんじゃね?今の自分の時間を大切にしなよ。」
「そうなのかなー…」
優馬はそう言ってくれたが僕も動き出さなければという焦りがあった。
突然、優馬は落ちている枯れ葉を一枚手にとった。
「この葉っぱ、いいな。」
そう言うとリュックを下ろし教科書を取り出した。
「なんで教科書?」
僕は尋ねたが優馬は無言で教科書に葉っぱを挟んだ。
「あ、そういうことかー。いいじゃん押し花。というか押し葉っぱ?」
僕も優馬の真似をして教科書にたくさんの葉っぱを挟んだ。
「え、そんな挟むん?」
優馬は少し驚いた顔をした。
「え、これは多すぎた?」
「まぁー良いんじゃね。
これで俺とお前はしばらく教科書を開けない口実ができたし。」
優馬は真顔でそんなことをつぶやいた。
「いや、うーん。僕は遠慮しとく。帰ったら図鑑に葉っぱ挟んでおく。」
「真面目だな。お前。」
優馬に真面目だと言われてしまった。
優馬は時々小学生みたいなことをする。
そして、たぶん僕も小学生みたいなやつだと思われている。
いい意味でだといいけど…。懐かしいよな。押し花とか。
自分で言うのもあれだけど、たぶん…発想が純粋なんだ僕たち。
「はぁーこのあとバイトだ…。なんか森とかで遊びたいな。
遊ぶっていうか駆け回りたいっていうか。」
優馬は大きく手を広げて伸びをした。
「分かるよ。その気持ち。僕も昔はよく自然の中で遊びまわっていたからなぁ。」
「なんだよ昔って。お前まだそんな生きてないだろ。」
「優馬には言われたくないけどね。」
僕と優馬が昔のことを語り合っていると、あっという間に駅へ着いてしまった。
優馬はこの駅ビルでバイトをしているので今日は駅でバイバイした。
一人になった僕は今日も変わらず、まっすぐ家へ向かった。
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