キス
結局、堅誌の言う通りにせざるを得ない自分に嫌気が指し、心が痛む。
同時に自分はまだまだ子供なんだと言われたようで、直に好きになってもらえる資格なんてないんじゃないか、とすら思えてしまう。
(直先輩…僕はただ、あなたが好きなだけなのに…)
たかがキス。
恋人なら普通にする行為。
それなのに、男同士というだけで周りの目が気になって仕方ない。
そんな重い気持ちを抱えたまま、和明は生徒会へと向かった。
「遅かったね、和明くん」
「あ、先輩…すみません。ちょっと色々あって」
笑顔で迎えてくれる直の笑顔が今は眩しすぎて、心がチクリと痛む。
こんなに愛おしいのに、周りに公言することも、堂々とデートすることもしてやれない。
本当にこんなので直は幸せなのか、とネガティブな思考はどこまでも和明を襲ってきた。
「ん? なんか和明くん…元気なくない?」
「そ、そんなことないですよ! あ、僕、この書類先生に届けてきますね」
何かを悟られた気がして、咄嗟に机の上の書類を掴んで生徒会室を飛び出した。
(少し不自然だったかな?)と思いながらも、和明は職員室へと足を進めていく。
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