キス
放課後になり、和明は生徒会へ向かうための廊下を嬉しそうに歩いていく。
この時間が学校での一番の楽しみで、恋人になった今は更にその気持ちも高まっていた。
「ねぇ、君…確かに和明くん、だよね?」
「え? あ、はい」
突然声を掛けられて振り向けば、そこには三年の先輩。
特に面識はなかった為、和明は呼び止められたことに疑問が浮かぶ。
「何か…用ですか?」
「うん、まぁね。俺、直の友達の堅誌(かたし)って言うんだけどさ、この間、たまたま見ちゃったんだよね。君と直が野球場でキスしてるとこ」
「っ!」
『野球場』『キス』という言葉に和明の頭にはこの間のキスの場面が浮かんできた。
この先輩があの日のキスを見ていたことはすぐに理解でき、和明の顔から血の気が引いていく。
「まぁ、俺はそういうのに偏見とかないからいいんだけど、もし他のやつに見られて変な噂立てられたら、困るのは直なんだよね。俺は直の友達として言うんだけど、もう直に近づかないでほしいんだよね」
「そ、んな…」
「それが直の為…なんじゃない?」
堅誌の言葉は正論で、和明には反論する言葉すら見つからなかった。
結局、堅誌の言う通りにするしかなくて、さっきまでの幸せとは裏腹に、今度は重い空気が和明を襲う。
確かにあの日は嬉しさの余りあんな場所でキスをしてしまった。
それについては場面を弁えなかった自分が悪いと反省している。
もしもあの場面を他の誰かに見られて噂になっていたら、と考えれば、自分の浅はかな行動に少しばかりの後悔が押し寄せた。
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