入学式




生徒会に入ってからはめまぐるしい 日々が続いていて、その代わりに直との距離は縮みつつあった。


帰りに一緒に帰ることも多くなり、気づけば一番仲のいい先輩になってい た。


直からすれば、ただ家が同じ方向だからかもしれないが、和明はそれでも嬉 しいと思ってしまう。


きっと、それは和明の中で直の存在が尊敬や友情以上のものになっていたか らだろう。


「なぁ、和明、お前野球とか好き?」


「え? うん、まぁ好きかな」


「だったら、これやるよ」


友人の岸田にそう言って差し出された のは野球の試合のチケットだった。 それも二枚。


「こんなの…貰っていいのかよ?」


「父さんが知り合いから貰ったもんなんだけどさ、うち皆野球に興味ないか らさ」


「ありがと、岸田」


「いいって、いいって」


岸田から貰ったチケットを見ながら、 和明はもう一枚のチケットの行方を考 える。 とりあえず生徒会の仕事があった和明は生徒会室へと向かった。


「ぁ…天草先輩、こんにちは」


「和明くん、いらっしゃい。今日も早 いね」


「他のみなさんが遅いんですよ。で も、先輩はいつも早いですよね」


「僕は一応会長だから、いろいろやることがあるからね」


そう言った直の前には山積みの書類が所狭しと置かれていた。それを見るとこの人はほんとに忙しい 人なんだと思い知る。


「いつも仕事ばっかじゃ大変じゃない ですか? もしよかったら息抜きに野球とか観に行きませんか?」


「野球? いいね。僕、実は野球大好きなんだ」

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