入学式



「え? えっと…」


自分はどう答えたらいいのだろう、と和明は口をつぐんでしまう。

ここは彼の話に合わせた方がいいというのはわかるが、嘘をつくのは気が引けた。


そうやっていろいろ考えていると、耳元で彼の声が発せられる。


「ここは僕に話を合わせて」


「えっと…はい」


結局、彼の話に合わせ、和明の遅刻は多目に見てくれることになった。


その日はこのホームルームで終わりだったらしく、入学後の説明を聞いたあと、和明は学校をあとにする。

さっきの人にお礼言い忘れたな、と頭の隅で考えながら歩いていると、学校を少し離れたところにある路地への別れ道のところで声を掛けられ立ち止まった。

自分を呼び止めた人の顔に目をやれば、そこに居たのはさっき学校で助けてくれた彼で、和明は目を見開く。


「ぁ、あの…えっと…」


まさか学校の外でまで会えるなんて、という驚きにことばが上手く出て来てくれない。


「さっきはなんとか誤魔化せてよかったね」


「ぁ、えっと…ありがとうございました。えっと…」


「あー、僕は三年の天草直(あまくさ なお)だよ。ちなみに生徒会長もやってるから、よろしくね、和明くん」


「は、はいっ!」


勢いよく返事をした和明はその数日後、生徒会へと入った。

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