第9話 縁②

 安土殿、懐妊――。

 その報せは安土城内を瞬く間に駆け巡り、人々を湧き立たせた。元々は一介の侍女であった安土に対するわずかな反発と嫉妬の声もかき消すほどの勢いであった。信長の第一側室にまで昇りつめた安土の栄華は、ここに来てついに揺るぎないものになったかのように思われた。人々の関心は、生まれてくる子が男か女かに集中した。今や安土は、城で最も注目を集める人物となっていた。

 しかし当のささは、そんなことはまるで気に留めていなかった。ついに信長の子を授かったという喜びは、春を過ぎ夏になっても少しも薄れることがなかった。極楽浄土に住まう神仏や天女もかくやというほどの幸福を、ささは膨らんできた腹に手を当てる時、その中に微かな動きを感じる時、味わっていた。

 懐かしいおねからも、温かな祝いの言葉が綴られたふみが届いた。ささは何度も読み返し、すぐに返事をしたためた。また会いたい、ぜひ安土城に顔を出してほしいという言葉と共に、ささは自分の素直な思いをおねに打ち明けた。

『安土としてではなく、一人の女子おなごの笹として、私は生まれてくるこの子を心から愛し祝福したいと思っています。己が母となるということが、いまだに信じられません。かつて私は一人でした。それがお屋方さまと出会い、二人になり、こたびは三人になろうとしています。子を持つと、女子はいかように変わるものなのでしょうか。お屋方さまに見初められて以来、幾度も移ろってきた私は、この子を育て守る母になることができるのでしょうか。今はただ、無事に育ってほしい、早く声が聴きたい、顔が見たいという思いで胸が一杯ですが、それでも時折、先行きに惑うのでございます。今があまりに幸福なゆえになおのこと』

 おねからはすぐに返事が来た。

『私には子がないため、安土さまの充分な助けにはなれず、申し訳ない限りです。けれど安土さまはお強く、お優しい方。何があろうとも、きっと大丈夫だと、信じております。どうかお身体にお気をつけて、元気なややを産んでくだされませ。心より祈願申し上げております』

 ささは唇を噛みしめてその手紙を読んだ。そして、心の中でおねに詫びた。

(おねさまも、濃姫さまと同じだったのだわ。正室でありながら子ができないおつらさは、私に分ちあえるものではない。己が幸せだからといって、浅はかなことを言ってしまった)

 酔いしれてはならないと、ささは己を戒めた。

 とはいえ、実際にはささはすぐにそれを忘れてしまいそうだった。濃姫は、初めてささに告げた時の複雑な表情は二度と見せることなく、それどころかささと同じくらい腹のややに夢中だった。手をあてたら動いた、蹴ったといって手放しに喜ぶ濃姫に、ささは一瞬すまなさを覚えるものの、すぐに笑顔になってしまうのだった。

 夏を過ぎる頃、おねは安土城を訪れ、ささと再会した。ささは喜んでおねを迎えたが、心の奥底にはわずかな気後れがあった。けれどおねの態度に嫌味な所は何一つなく、むしろ本当に嬉しそうに祝いをのべ、ささを気遣ってくれるのだった。おねの優しさは、ささの心をお湯につけたようにときほぐしてくれた。

(私は、このように良き方々に恵まれて、本当によかった)

 そう思い、ささはおねを送り出してから涙ぐみそうになった。もう癖になってしまった仕草で、そっと腹をおさえる。

(喜びなさい。あなたは、この世の誰より愛され、祝福されて生まれてくるのよ) ささは我が子にそっと話しかけた。するとささの手を、そっと誰かが蹴った。




 宗易そうえきは、黒い茶碗をことりとささの前に置いた。

「そうですか。順調にそだっておいでですか」

「はい。あと三月みつきかそこらで、この子に会えます」

 ささは微笑み、茶碗を持ち上げて一口飲んだ。それだけの動作をするにも、身体がひどく重たそうだ。宗易は、その静かに澄んだ目で、じっとささを見つめている。

 いつもより時間をかけ、ささは茶を味わった。

「…ここは、静かですね」

 自然と、呟きがこぼれた。宗易は頷き、ひしゃくを手にとった。

「茶室ゆうんは、そういうもんです。静かなのは、お嫌いですかな?」

「さようなことはございませぬ。ただ、近頃の私の周りは、常に賑やかですゆえ、新鮮に思われます」

「成程。お笹殿の心は、まだざわついていらっしゃるようですなあ」

「はい。以前とは違う部分が」

 宗易はゆったりと微笑したが、何も言わなかった。

 再び茶を点てる音だけが室内に響いている。ささは見るともなしに宗易の手元を見ながら、その静けさに浸っている。けれどささの心の一部は、いつも我が子のことを考えていた。

「お屋方さまは、お笹殿を大切にしてくださいますかな」

 宗易が唐突に尋ねた。ささは我に返って頷いた。

「それはもう。これまでのあの方を、全て合わせたよりも…今までのどの時より、一番お優しゅうございます」

「そうですか、ようございましたな。確かに、お笹殿にはもう、閉じた所が見受けられませんな」

 ささは頬を染め、花のような笑みを浮かべた。

「宗易さまは、以前お会いした時、己の心に素直になれと私に説いてくださいました。私は、そのお言葉を守っているだけにございます」

「今も、お屋方さまを好いていらっしゃいますか」

「はい。…今も、これからも、ずっと」

 宗易を前にしていると、ささは恥じらいもためらいも脱ぎ去ることができた。宗易の澄んだ目がそうさせるのかもしれないと、ささは思う。ささが安土の鏡なら、宗易はささの鏡だ。あまりに澄んで凪ぎ、そこに映し出される己の姿を、ささはじっと覗き込むことができる。

 宗易の目に映るささは、たおやかな肢体に花のような可憐さを増した女性だった。大きな目は以前と変わらず風のように穏やかだが、孤独な少女の戸惑いはもはやそこにはない。突き出た腹の上で両手を重ね、小首を傾げた格好は、幾分なまめかしくすらあった。妻として、母として、一人前の女性としてのなまめかしさだった。

 宗易の目に浮かんだ表情を、ささは絵巻物を見るように読み取った。けれどもたじろぐことも揺らぐこともなく、ささはくっきりと目を見張って宗易を見つめ返した。これでよいのですと、その目は言っていた。己の得た物、失った物から決して目をそらさず、全てを受け入れようとするささの態度を、宗易は好ましく思った。

「お笹殿と織田さまは、明日、竹生島ちくぶじまへお参りに行かれるそうですな」

 宗易が話題を変えた。ささは目を輝かせた。

「はい。安産祈願に、お連れ下さるそうにございます」

「身重の身体で、不安ではありませぬか?」

「産み月はまだ先にございます。それに、私は信長さまを信じておりますから。あの方のお言葉があれば、どこへでも参ります」

 宗易が、この日初めて声をたてて笑った。

「お笹殿は、ほんまに織田さまがお好きでいらっしゃいますなあ。織田さまもそうですが、二人ともえろう変わりなさった。それもええ方へ」

「宗易さまにそう言っていただけると、笹は嬉しゅうございます」

 ささも笑った。そうして、濃姫にも打ち明けていないこと、打ち明けてはいけないことを、初めて口にした。

「ややができたことを初めて申し上げた日、信長さまは私にお約束くださいました。生まれるまで、側室の…つとめを、休ませると。そして今に至るまで、そのお約束を破るそぶりをお見せになったことはございません。私には、それが、とても嬉しいのです」

「どなたかに心底惚れるとは、己を喜んで犠牲にできるゆうことです。織田さまは戦と天下に惚れこまれた方やと思ってましたけれども、お笹殿にも惚れこまれたようですな」

 宗易の言葉は明瞭で率直だった。ささは穏やかな表情で、頷いた。

「私もにございます」

 そう囁いた声が、どこまでも優しく柔らかく茶室にしみていった。




 翌日、信長はささを、竹生島へ渡る船に乗せた。沖へ出る三隻の船のうち一隻には、二人の他に森蘭丸とその弟の坊丸ぼうまるが、残る二隻には護衛や小者が乗り込んだ。ささの侍女達は、船に乗る勇気のあるものが一人としていなかったため、陸に残ることになった。

「加減はいかがですか」

 何枚も座布団を重ねた上にゆっくりと座した身重の側室を気遣い、蘭丸は尋ねた。

「大丈夫なようです」

 ささは、蘭丸に微笑みかけた。幼馴染にむけるような、気さくで無垢な微笑みだった。

 森坊丸が、緊張した顔でささの脇に脇息きょうそくをそっと置いてくれた。まだ少年といっていいほど若く、前髪も下ろしている。人形のように整った顔立ちは、兄とよく似ていた。このお小姓は、溶けあう水と風と光を思わせるささを直視することもできず、小さな声で「何かございましたらいつでもお申しつけくださいませ」と言うなり早々に引っ込んでしまった。

 ささがおかしさをこらえて隣を見ると、信長も楽しげにささを見ていた。ささの胸に、安堵が広がった。

 船頭の掛け声とともに、船はもやい綱をとかれて湖へと漕ぎ出した。

 気持ちの良い秋晴れの日だった。ささは揺れを全く気にせず、うっとりと目を細めて、光る湖を見渡している。城下で生まれ育ち、側室となってからは城の奥からほとんど出たことがないというのに、ささは馬の背も揺れる小舟も全く怖れていない。むしろ、楽しそうでもある。そうして、日の光を存分に浴び、長い黒髪をわずかに風に乱したささは、いつもより一層美しく輝いていた。

 船は滑るように進み、やがて小さな島に着いた。

 竹生島――うっそうと茂る針葉樹の森におおわれた、美しい小島である。ここには、伊吹山いぶきやまの女神と浅井岳あざいだけの女神が祀られたやしろがある。弁財天、すなわち楽の神ともうたわれる彼女達に奉納するため、ささは大事な琴を持参していた。

 島は静かだった。蘭丸の腕につかまり、ささがわずかによろけながら浜に降り立つ。その後に、布で幾重にもくるんだ琴を抱えた坊丸が従う。

「安土さま。お手をお貸ししなくて、本当に大丈夫なのですか」

 須磨すま神社と呼ばれる本堂へ続く、百段はありそうな石段を見上げるささに、蘭丸が気遣わしげに訊ねる。ささは、きっぱりと頷いた。

「大丈夫です。このくらい、一人で昇ります」

「されど、もし障りなどあれば」

 ささの腹は今や弾けそうに膨らんでいる。ここで無理をして産気づかれては大いに困るのである。けれどうろたえる蘭丸をよそに、ささは先に上り始めている信長の背を見据え、石段に足をかけた。ゆっくりと息をしながら、一段一段、誰の助けも借りずに上っていく。その、意地ともいえる意志の強さに、蘭丸はつくづく感服しながら、黙って後に従った。

 苔の柔らかな感触が足の裏に心地よかった。森のさわやかな緑が目にしみる。次第に身体が火照り、胸が苦しくなる。周りの空気がいつもと違うことが伝わったのか、時折ささの中で子が動いた。ささはそのたびに優しく腹を撫で、大丈夫、大丈夫と無言のうちに語り掛けた。

(母がついている。あなたは、きっと私が守るから)

 そう思うと、不思議なほど力が湧いた。

 蘭丸は文字通り寿命の縮む思いでささに従っていたが、ささは決して弱音を吐かなかった。蘭丸は何度も声をかけようか迷ったが、水をくぐったように輝くささの大きなひとみは、一時いっときも揺らぐことなく信長を見つめ続けた。そこに他者の入る隙は存在しなかった。

 時間をかけて、ささはついに石段を上りきった。秋だというのに、玉のような汗をびっしり浮かべて激しく息をするささに、とっくにてっぺんに到着していた信長が呆れたような顔で言った。

女子おなごにしておくにはちと惜しい気概じゃの」

「女子であればこそ、子を産むこともできるのでございます」

 ささは小さく笑みを見せ、なんとか答えた。信長は、しっかりと両手のあてがわれたささの腹に目をやり、軽く頷いた。

「そうであったな」

 柔らかい声音に、ささは全身の疲れがすうっと溶けてゆくように感じた。




 やしろの中は、しんとしていた。寺社に特有の、さえざえと清らかな空気に浸りながら、ささは信長と並んで奥へ進み、そこにまつられている弁才天の像に手を合わせた。

(どうかこの子が、無事に生まれてきますように。この子が長生きしてくれますように。信長さまに似た子でありますように)

 ささは目を閉じ、真剣に祈った。一心に祈り続け、ようやく目を開けて横を見ると、信長は腕を組んでじっと弁才天像を見つめていた。ささが祈り始めた時と何ら変わらぬ姿勢であった。薄暗い中でも、信長の目が強く光っているのが分かった。

 もしかしたら信長は、神に手を合わせるということをしなかったのだろうかとささは思った。微かな影が、心をよぎった。

 それから、ささは琴を奏でた。一切を忘れ、琴と一体となって、妙なる音色を紡いだ。控えていた蘭丸と坊丸は、この世のものと思えぬ美しいその音に背筋が冷えたが、信長はじっと腕を組み、泰然と耳を傾けていた。縦横無尽に紡ぎだされる琴の音は七色の糸のように外へ流れ出し、静かな小島に夢のような儚い華やかさをもたらした。

 やがて、弾き終えたささが顔を上げた。この世ならぬ場所に据えられているかのような眼差しが、彷徨い、神の像ではなく信長にとまった。信長は真っ直ぐにささを見ていた。強い、厳しい、射抜くような、けれどどこまでも真摯な眼差しだった。ささは信長の目に吸い寄せられた。胸が一杯になり、しばらく動くことができなかった。




 祈願と奉納を終えて外に出たささは、思わず目がくらんだ。神社のある小高い山の上からは、広い広い琵琶湖が一望できた。城から見るのとはまた違い、木々に囲まれて、荒い土を踏みしめて立っていると、ささは琵琶湖の真の壮大さをようやく肌で感じ取れたような気持ちになった。

「この眺めを堪能したいがために、わしはしばしばこの島を訪れる」

 ささの傍らで、やはり湖を見つめながら、信長が言った。ささは大きく頷いた。

「まことに、素晴らしき眺めにございます。私も、この島が好きです。いつか訪れ、女神さまにお礼を申し上げたいと思っておりました」

「ほう。何故じゃ?」

 風に吹かれながら、ささは小さな顔を信長に向けた。

「竹生島は、私が信長さまにお目をかけて頂いた、きっかけのようなものですから」

 それは、はるか昔の事のようだった。もしあの日、信長が竹生島へ出かけなかったら、侍女達は揃って外出することもなく、ささは未だにゐよと共に、黙々と針を運ぶ日々を送っていたかもしれないのだった。

 信長はふっと笑い、ささに近づいて彼女の顔をよく見下ろせるようにした。

「そうであったな。そちは、弁才天に気に入られているのやもしれぬな」

「有難きお言葉にございます」

「今宵は長浜城ながはまじょうに泊まる。もはやあのような不快な事にはなるまい」

「それがようございます」

 ささは心から言った。そうして、張りつめた心で冷たい顔をしていたあの頃の己を懐かしく思い出していた。

 信長もまた、地味で愛想のない侍女の面影を探すようにささをしばらく見つめていた。あの時、さしたる深い気持ちもなく見初めた娘が、なくてはならぬ存在になっている。ひたむきに己を慕い、受け入れ、そして今は二人の子を宿している。

 信長の身体の熱がささを包み込んだかと思うと、ふいにささの足がすくい上げられて宙に浮いた。くるりと身体が斜めになり、思わず悲鳴を上げたささはあっという間に信長に横抱きにされていた。

「いけませぬ、私ごときにこのような…!」

「この方が楽でよい」

 言いきるなり信長は、軽々とささを抱きかかえて石段を下り始めた。首筋まで真っ赤に染め上げたささの弱弱しい反論は、もちろん受けつけない。浜辺で待っている家臣達の顔が見られなくて、けれど行きの道に比べると格段に速くて楽なのは確かで、しかも恥ずかしいのと同じくらい嬉しく思う気持ちも抑えることができず、結局ささは信長の胸に顔を隠してぎゅっと目をつぶってしまった。舟に乗せられるまで、ささはそのままだった。




 長浜城は、信長が秀吉に与えた城である。中国地方を長期戦で攻めている最中である秀吉にかわり、女房のおねが一行を温かくもてなしてくれた。ささは流石に疲労を隠せずにいたが、おねを見ると嬉しそうに顔を緩めた。おねはささの、月の形に膨らんだ腹を見つめ、それからささと目を合わせてにっこりと微笑んだ。どこか濃姫に似た、慈しみと祝福に溢れた笑みだった。

 信長はいつにない優しさを見せておねをねぎらい、おねは恭しさの中にも親しみのこもった受け答えをし、夕餉の時は穏やかに過ぎていった。ささは食欲がわかず、長浜城の侍女達に世話をされて小さな離れで休んでいた。

 本丸から漏れてくる賑やかな笑い声をききながら、ささが静かに横たわっていると、ふいに腹の子が母をつよく蹴っ飛ばした。ささが思わず声を漏らし、身じろぎしたのと同時に、長身の影が寝所に入ってきた。

「信長さま」

 ささは思わず名前を呼び、起き上がった。信長は腰を下ろし、そっとささの腹に手をやった。

「具合はどうじゃ」

「大丈夫にございます。まだしばらくは、この子も母の腹の中がよいようで…あっ」

 ささの顔が一瞬歪んだ。揺れる肩をとっさにつかんだ信長は、まだ彼女の腹にあてがったままだった手のひらに何かがあたるのを感じた。小さな足が元気よく動き回り、信長の手をぽんぽん蹴っていた。

 少しの間ぎゅっと目をつぶっていたささが、くすくす笑いだした。信長も、我が子の躍動を手に感じながら、目を細めた。

「どうやら父上が分かるようですね。いつもよりずっと元気に暴れております。もう、夜も遅いというのに、仕方のない子」

 俯いてそっと話しかけるささは、既に母親の顔をしている。もう一度そっと彼女の腹を撫でてから、信長は柔らかい身体を引き寄せた。温かな腕にすっぽりと包まれ、ささはこのうえなく満ち足りた思いで信長の胸にもたれた。

「生まれるまであと僅かじゃな。長浜に屋敷を用意させるゆえ、里下がりの際はそこへ移るがよい」

 ささのこめかみに唇をつけてから、信長が言った。ささは、驚いて顔を上げた。

「…なぜ、ご存じなのですか。私に、帰る家が、安土城以外ないことを」

ふみじゃ」

 こともなげな返事に、ささはますます戸惑った表情になる。

「ふみ?」

「側室となってからこのかた、そちが家族に文を出す気配が皆無であると濃が言うておったからの」

「ああ、それで…」

 ささは納得し、嬉しげに頷いた。

「ありがとうございます。喜んで、そちらに移らせて頂きます」

 答える代わりに、信長はごく微かな笑みを浮かべた。ささと共にいる時しか見せない笑みだった。

 そうして二人はしばし無言のまま寄り添い、見張りの兵が鳴らす弓の音を聞くともなしに聞いていた。やがてそれも止むと、信長が唐突にささに訊ねた。

「そちの両親は今、どこにおるのじゃ。笹は、安土で生まれ育ったのであろう」

「はい。されど二人とも、おそらくもはや安土にはおりませぬ。実の所を申しますと、私にも、己の親がどこでどうしているのか分からないのでございます」

 ささは静かに答えた。あまり思い出したくない、暗い記憶だったが、いつかは問いただされることを覚悟していた。案の定、信長は興味を見せた。

「それは、何故じゃ」

「少し長くなる話ですが」

「かまわぬ。今宵の寝物語に、話すがよい」

「承知いたしました」

 そう言ってささは、初めて他人に己の半生を語った。それは、とても孤独な物語だった。




――安土城へ上がるまでの記憶は、もはや薄れかけております。はっきりと覚えているのは、熱した飴が溶ける匂い、家の裏の竹やぶがさらさらなる音です。

 私の母の名前は、おたけといいます。物静かで、娘の目にもたいそう美しい人でした。私は、おそらく父に似たのだと思います。(ここで信長はちょっと面白そうな顔をしたが、何も言わなかった。)私は、父の顔を知りません。母は飴細工の職人で、女手一つで私を育ててくれました。父と母が何故一緒にならなかったのか、それは分かりません。けれど、母が父を、いつまでも、誰よりも慕っていたのは確かだと思います。

 私の知っている母は、いつも無口で夢見がちな人でした。母の見ている夢とは、父の夢でした。私を産んだのも、私が父の子だったからにございます。母にかまってもらった記憶はほとんどありません。私は大抵、竹林で一人遊びをして育ちました。

 いいえ、母を恨む気持ちは欠片もありません。私も無口で、一人でお話を作ったりままごとをして遊ぶのが何より楽しい子供でしたから。そう、家の裏の竹林には小さな石の祠があって、そこに祀られていた優しい顔のお地蔵さまが私の空想の遊び相手をしてくれました。(信長は、目に浮かぶと言いたげな顔をした。)

 何かの気まぐれで母が話してくれたところによりますと、母は父と出会ってから毎日、そのお地蔵さまに祈願をかけていたそうにございます。子が欲しい、あの人との子を授けてください、と。

 そうして生まれたのが、私なのでございます。お竹の子だから、お笹。竹やぶのお地蔵さまに授けて頂いた子だから、笹。私はそんな風に想像しております。

 私は望まれて生まれた子だった。幼い頃から、私にはその思いだけで充分でした。それに今なら、母の気持ちも少しだけ分かる気がするのです。

 母は私に関心を持ちませんでしたが、私を嫌っていたわけではありませんから、できるかぎりのことはしてくれました。衣食住を整え、自由に遊ばせ、生きていく術を教えてくれました。そうして私は、十三の歳に、大きな呉服屋に奉公に上がることになりました。

 商売道具だと言って決して触らせなかった飴細工を、家を離れる日に初めて、母は私に持たせてくれました。黄色い花の形をした飴でした。気をつけて、しっかりつとめるようにと言い、見送ってくれました。それが、母を見た最後になりました。

 その年の暮れに私が帰った時、母は姿を消していました。持ち物は全てそのまま、手紙一つ残されていませんでした。ほうぼうに訊ねてまわりましたが、母の行方を知る人は誰もおりませんでした。

 私は一人で門松を買い、家を掃除し、新しい年を迎えました。そうして休みが明けると、呉服屋へ戻りました。母とは、それっきりにございました。

 はい。もう、七年も前の話です。今はただ、母の息災を祈るばかりにございます。何となくですが、母が自らの命を絶ったとは私には思えないのです。そうするには、母の想いは強すぎました。

 もしかしたら母は、父を探しに行ったのかもしれないと思うのです。我が子が奉公に出て、一人でも生きてゆけるようになり、母はようやく自由になれたのかもしれません。だから、母は旅立ったのです。愛する人の元へ。慕い続けた、心一つだけを携えて。

 父のことですか?私は、己の父のことは何一つ分からないのです。父の記憶は、母だけの宝物でしたから。父と母が再会し、どこかで幸せに暮らしていてくれれば――そう思えば、私は少しだけ、寂しさを忘れることができたのです…。




 小さく身じろぎし、記憶の霧の向こうを見やるように遠い眼差しになったささを、信長は見つめていた。初めてささに目をとめた時、信長は十八歳の彼女の細く凛と立つ若木のような風情に惹かれたのだった。黒いひとみの深い淵に沈む孤独と、衣服のようにまとわりついていた静けさがどこから来るものだったのか、今ようやく信長は理解し得ていた。

「己の望みのためにそちを捨てた母を、本当に恨んではおらぬのか」

 信長は呟いた。ささは心と眼差しを夫へ引き戻し、淡く笑った。

「わたしといてくれた時から、母の心は既に半分遠くへ行ってしまったようなものでした。本当に会えなくなって初めて、母を愛していたと気づきました。最後に、その思いを残してくれた母に感謝こそすれど、恨む気持ちはございません。ただ…たいそう、寂しゅうございました」

「会えるものなら会いたいか」

「いいえ」

 囁くような、けれどきっぱりとした即答が返った。信長は束の間、黙った。ささは、ゆっくりと、己に確かめるように言った。

「会わぬ方が、よいと思いますから」

 少し間があったが、信長は重ねて訊ねた。

「今も寂しいか」

 笹の顔に、混じりけのない笑みが浮かんだ。これなら誇りをもって答えられると思った。

「いいえ、もう寂しくありません。私はもう、己の居場所を見つけましたから」

 そっと仰向くと、信長の眼差しがささの顔を温めてくれた。心をこめて、満ち足りた思いで、ささは告げた。

「母の話は過去のことです。今は私は、一人ではありません。ここが、笹の生きる場所にございます」

「…そうか」

「はい。笹は、命尽きる時まで、信長さまのお傍におります」

 信長は頷き、ささの頬に触れて低い声で言った。

「その言葉、違えるでないぞ」

 ささは信長の手に己の手を重ねる。答える代わりにそっと握りしめると、信長はささの細い手を持ち上げ、静かに口づけた。




 その夜、信長はささの寝所に泊まった。二人は長いこと、囁くように言葉を交わし続けた。そしてささは、ためらいながらも、ずっと胸に秘めていたことをついに信長に訊ねた。

 信長の亡くなった側室、生駒類いこまるいについてであった。

 ささが己の半生を打ち明けた後だったからか、信長は拍子抜けするほどあっさりと話してくれた。

 るいと信長が初めて出会ったのは、信長が元服して間もない頃であった。るいは、武家でもないのに名字を持つほどの大変な豪商の娘だった。ささが信長から聞いたるいの姿は、かつて信雄のぶかつが言っていたことと大体一致していた。すなわち、色白で、華やかな美人で、信長の最も寵愛する側室の地位を得てからも謙虚さと優しさを失わず、信長に見初められてから十年後に病で亡くなるまで、家族を大事にし続けたという。

「何故、吉乃きつのさまとよばれるようになったのですか?」

「名付けたは濃じゃ。類という名は呼びにくい、嫡男をもたらした吉兆の女子おなごであるから、吉乃、と名を変えよ、とな」

 濃姫らしいとささは思った。

「左様でございましたか。でも、類さま、というのも、お美しい名にございます」

 信長は面白そうな顔になった。

「にしても、何故急に吉乃の話をききたがる。そちが吉乃を好くはずはないと思うておったが」

 図星だったので、ささは身体をすくめた。仕方なく答える。

「確かに、類さま…いえ、吉乃さまが、私は羨ましゅうございます。私より先に、私より長く、信長さまのお傍にいらした方ですから。けれど、やはり吉乃さまのことを、知りたかったのです。笹の心に、吉乃さまの場所を、作りたかったのです」

 るいのことを考える時、以前のような激しい嫉妬はもはやささの胸を焦がさない。信長に想われていることを知り、彼の子を身ごもったからかもしれなかった。ただ、墨汁を一滴落としたように、ほろ苦くもやもやとしたものが胸の内に広がってゆく。

(でも、それでも…吉乃さまがいなければ、私のお慕いする信長さまはきっといなかった。そうして、吉乃さまが身まからなければ、私は側室に上がることはなかったかもしれない)

 己をとらえた数奇な運命。そのより糸の一本がるいであったことを、ささはどこかで確信している。けれど、それを上手く言葉にすることはできなかった。

 そんなささを見つめ、信長は吐息にも似て小さく笑った。

「まことに、そちは不思議な女子おなごじゃ」

「恐れ入ります。信長さま、無理を申したこと、お許しください。吉乃さまのことは口にするなとお命じでしたのに」

「もうよい」

 あっさりと言われ、ささの息がとまった。ささの長い髪を梳く信長の指の動きは、ゆったりとして優しかった。

「そちに話すのであれば、よいのじゃ。…何故かは、この信長にも分からぬがな」

 訊ねようとしたささの先手を、信長は打った。ささは何と言ってよいか分からなかったが、胸の内に淀んでいたものが、すうっと溶けたような気がした。




 夜明け前に、ささは目を覚ました。澄んで冷たい空気が、冬の訪れの近いことを感じさせる。けれど、寒くはなかった。

 ささは、己の隣で眠っている信長の腕に頬を寄せ、そっと目を閉じる。瞼の裏に、幻の女性の姿を浮かべた。

(類さま)

 ささは、呼びかけた。

(類さま、お許しください。私はこれからも、心のままに信長さまを愛し、あの方のお傍で生きていきます。あなたのご冥福をお祈りします。…ありがとう、私に信長さまを会わせてくださって…)

 一番鳥が、遠くで鳴いていた。




 信長とささは、竹生島への参詣を無事に終え、安土城に帰還した。それからひと月後、年の瀬が迫る頃になって、ささはいよいよ重たくなってきた腹を抱え、信長が長浜に用意した屋敷へ、出産のため移った。




 静かな海と砂浜をのぞむ屋敷は、潮風を防ぐ囃子に囲まれ、簡素で、小ぢんまりとして、ささの気に入った。長浜の屋敷へささと共に移ったのは、菊を始めとする十数人の侍女達と、生まれてくる子の乳母となる、菊の姉の浅葱あさぎだった。

 浅葱は大柄だが気の優しい女性で、ささはすぐに彼女を好きになった。口の中でもごもご言葉を言うという悪い癖はあったが、浅葱はうら若い女主人をたいそう崇拝し、彼女が子を産む日を心から楽しみにしていた。

 天正十年の正月を、ささはその屋敷で迎え、侍女達と仲良く新年の挨拶を交わした。産み月の近い女性はいみとされていたので、ささの周りにいるのは女性だけだ。子の父である信長でさえ、無事に出産を終えるまでささに会うことは許されないのだ。

 ささはのんびりと浜を散歩し、縫物をし、静かな生活を楽しんだ。身体は離れていても、信長の存在を心で感じていたから、心は常に穏やかだった。


 年が明けて十日余りが過ぎた頃だった。

 冬の空は高く澄み、雲一つなかった。水鳥がかしましく泣きながら海辺でたわむれている。ささは広縁に座し、それを心楽しく眺めながら高坏たかつきから菓子をつまんでいた。

 信長が、他の様々な調度品や衣服と共に届けさせたその菓子は、南蛮伝来の珍しい砂糖菓子だった。金平糖、という名の、小さく透きとおった菓子をつまみあげ、ささはしげしげとそれを見つめる。とても可愛らしく、ほのかに甘い香りが漂う。

 一つ口に含むと、はっとするほどの甘さが口の中に広がった。ささは目を閉じて、そのたぐいまれな風味を楽しんだ。

(とっても、おいしい)

 そう思った次の瞬間、腹部に鋭い痛みが走った。

 はっと、ささが腹をおさえる。これは、今までのものとは違う。

 再び、身体の中を殴りつけられるような痛みがささを襲った。ささの手からぼろぼろと金平糖がこぼれ落ちた。

 細い悲鳴が静かな屋敷に響きわたり、仕事を放りだした侍女達があちこちから駆けつけた。身体を曲げて苦しんでいるささを見ると、菊がすぐに指示を出した。

「薬師と産婆を、早く。産屋うぶやの支度を。担架を運ばせるのじゃ」

 緊張が走り、侍女達が返事と共にさっと散る。にわかに騒がしくなる中で、ささは大きく息をしながら、菊を見上げた。

「いよいよ、生まれるのね」

「はい。安土さま、どうかお気を確かに」

「分かっている…大丈夫、大丈夫よ」

 ささは、己と菊の双方に言い聞かせるように呟き、目を閉じた。


 屋敷の中心の、広々とした部屋にささは運び込まれ、そこで真っ白い単衣ひとえに着替えさせられた。産屋では、出産する女も産婆や侍女達も、白い衣を着ることになっている。布団の上に膝をつき、ささは天井から垂れ下がる産紐うぶひもに両手でつかまる。

 そして、長い長いささの出産の苦しみが始まった。

 絶え間なく噴き出す滝のような汗を、菊は何度も拭ってやった。ささは何度も気を失いそうになりながら、それでも必死に己を奮い立たせ、波のように繰り返しやってくるすさまじい陣痛に耐え続けた。子がなかなか出てこないまま、日は暮れた。明かりが灯される頃、産屋には既にじんじんとした熱気がたちこめていた。

 もともと難産になることが予想されていたささの出産だった。ささは小柄で華奢で、丈夫とはいえない身体の持ち主であった。それは信長も懸念していたことであり、だからこそ頻繁に見舞いを送り、城下から評判の産婆をわざわざ呼び寄せたのだ。

 少しも収まる様子のないささの苦しみに、見守る侍女達の中には目に涙を浮かべる者も出てきた。ささの土色の額には脂汗が滲んでいた。だが、彼女のひとみに涙はなく、何度も噛みしめられ傷ができている唇から弱音が漏れることも決してなかった。

 痺れた手で女主人を支えながら、菊は自らも熱に浮かされたようにその姿を見つめていた。これまでも、物静かなささの内なる強さに驚嘆させられたことは何度もあった。けれど今、ささは人間の強さとか弱さを超えた所にいるようだった。そこにあるのは、生命だった。生か死か。その狭間で、もがいていた。

 長い長い、菊の人生で最も長かったその夜、菊はとりみだすことなくささの傍に寄り添いとおし、ささの生命がもう一つの生命を産みおとすのを最後まで見届けた。

 明け方、疲弊しきって強張ったささの身体が、ふいに大きくのけぞった。口から獣じみた長い悲鳴がほとばしり、目の前が弾けたように白く染まった。

 そして、その悲鳴よりさらに大きな、新しい泣き声が、ささの耳を打った。

 今まで己の中で暴れていた熱の塊がするりと抜け出ていくのを、ささは感じた。霞んだ目に最初に映ったのは、白い布団を汚す赤い血の色だった。それから産婆が、ものすごい声で泣きわめく小さな赤ん坊を抱えて、ささに差し出した。

「安土さま、よう気張りなさいました。立派な男子おのこのややにございますよ」

 明るく告げられたその言葉を聞いた時、初めてささの目からとめどなく涙が溢れた。

 朝の光が、障子の向こうから差し込んできた。




 天正十年一月十七日の明け方、ささと信長の子は誕生した。報せを聞いた信長は、翌日駆けつけてきて我が子と対面した。

 布団に寝かされたささの顔は青白くやつれていたが、母となった喜びに美しく輝いていた。その横には、赤子がすやすやと眠っている。

「どうぞ抱いてくだされませ。あなたさまのお子にございます」

 かすれた声でささが言う。信長は頷き、ゆっくりと手を伸ばして赤子を腕に抱え上げた。父に抱かれると、赤子は滑稽なほど小さく見える。ささは思わず微笑をもらした。

 無心に眠る赤子の頬を、信長は慈しむように軽くくすぐった。

男子おのこだそうじゃな。ようやった」

「はい。今少し大きくなれば、きっと信長さまに似ているのが分かります」

「笹にはもう分かるのか」

「だって、私がお腹で育てた子ですもの。信長さまに似るよう、毎日お祈りしながら」

 そう言ってささは嬉しげに笑い、もう我慢できないというように手をついてゆっくりと上半身を起こした。身体を引きずるようにして信長に寄り添い、我が子の顔を覗き込む。信長もまた、手放すのが惜しいとでもいうような様子で、腕の中の赤子をゆったりと揺すっていた。

 幸せだと、ささは思った。身体は疲れきり、節々が痛んだが、それすら忘れ果てるほどの幸福がささを満たしていた。信長が初めてささを見舞ってくれた時、琵琶湖のほとりで信長から想いを告げられた時、初めて口づけを交わした時、そして子を授かったと知ったときも、今まで生きてきた中で一番幸せだと感じた。けれど今、信長の腕の中で眠る我が子を見つめているささの気持ちには、どれも遠く及ばなかった。

「名を、つけてくださいますか」

 ささが言うと、信長はようやく視線をささに移して笑った。

「そうじゃな。…えにし、はどうじゃ」

「えにし…?」

「この子は、わしとそちを結ぶ宿世すくせえにしの証ゆえな」

「えにし、にございますか」

 ささはゆっくりと繰り返した。そして、大きく頷いた。

「とても良い名です」

「そうか」

「縁」

 ささは、我が子の名を呼んだ。何度呼んでも足りない。愛しくて、たまらなかった。





 信長は半日近く二人と過ごしてから、安土城へ帰って行った。ささは、むずかりだした縁に、浅葱の助けを借りて乳を飲ませ、再びとこについた。信長のたとえようもなく優しい眼差しや声が、ささを何より力づけていた。

(この子は、縁。私と信長さまの想いの証)

 ささは、思う。宿世の縁、といった信長の言葉を、ささはすんなりと信じることができた。自分が信長を深く愛し、結ばれることは、きっとどこかで定められたことだったのだ。

(この想いが変わることは、決してない。そして、同じくらい大きな想いをかけて、私は縁の母になりたい。織田と安土の名に恥じぬ子に…人を愛することのできる子に、育てたい)

 己の残りの生涯は全て、夫と我が子を愛し慈しむことに注ごうと、ささは思った。

 そ、そこでささは、まだ縁が腹に宿ったと気づかなかった頃を思い出し、一人でくすりと笑った。

(私ったらこの子を、不吉な予兆ととり違えたのだっけ。本当にうつけだったわ。縁は私にとって、喜びと幸せそのものなのに)

 早く元気になって、縁と一緒に安土城へ帰りたい。そう願いながら、ささは安らかな眠りへと吸い込まれていった。




 その、不吉な予兆が真実であったことは、わずか数か月後に明らかになる。

 織田信長の第十一子、幼名は縁。この子供が、稀代の天下人の末子となることを、まだ誰も知らずにいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る