第8話 縁①

 天正九年の春。

 桜の花が一斉に咲き乱れる頃、織田信長の権力と威力は全盛期を迎えていた。そして二月二十八日、京の都にてついに、信長の催す馬揃えが始まろうとしていた。

 この一世一代の催事に出席するため京を訪れた一人の女性がいる。

 大きな目をきょろきょろさせている幼い三人の娘を連れて、行列を見通す桟敷に姿を現したその女性の姿に、居並ぶ武家や公家の者達はざわめいた。信長によく似た面差しを持つ、輝くばかりの美女であった。彼女の名は浅井市あざいいちといい、近江おうみ小谷おだに後に城を構える大名・浅井長政あざいながまさするまでは織田の姓を名乗っていた。織田信長は、彼女の実兄である。

 しかし、人々の羨望と後期の目をものともせず背筋を伸ばして桟敷に座している市の表情は硬く強張っていた。それは、兄が催す華々しい祭りを見物する妹の顔ではなかった。戦場にのぞむ武士のそれであった。

 市の胸に、兄への親愛の情は無きに等しい。六年前、市が心から愛した夫・浅井長政は信長との戦に敗れ、切腹をとげた。夫を喪った悲しみ、信長への恨みを、市は忘れないでいる。馬揃えに出席したのは、ひとえに現在彼女が身を寄せる兄・信包のぶかねの顔を立てるためであり、三人の娘達に京を見せてやるためであった。

 そこへ現れた、萌黄色の打掛をまとった女性がすっと市の隣へ座し、手をついて深々と頭を下げた。

「お市の方さま。お久しゅうございます。こたびは、兄上さまの催される御儀を共に拝謁する光栄を賜り、恐悦至極に存じます」

おもてを上げてくだされ、たま殿。私も、お目にかかれて嬉しく思います」

 市は、凛としてよく通る声で応じた。神秘的な陰をたたえたひとみで市を見つめた女性もまた、市におとらぬ美貌の持ち主である。信長の妹の隣に座することを許されている彼女は、馬揃えの総奉行、明智光秀の娘・たまだった。信長の仲人で、家臣・細川忠興ほそかわただおきに嫁いでいる。

 桜の花びらが風に運ばれて桟敷に降り注ぎ、やがて馬たちが通るであろう路を白く染めていった。人々は楽しげに談笑しながら、行列を今か今かと待ち受けていた。

茶々ちゃちゃはつごう。行儀よくしておるのじゃぞ」

 はしゃいでいる娘達に声をかけてから、市はたまに向き直った。

「ときに、たま殿。あちらの桟敷には誰が座することになっているのか、ご存じですか」

 市が白い手で指したのは、二人のちょうど向かい側に空いた白木の桟敷である。武家側にも公家の側にも属さない、中間の微妙な位置にぽつりとこしらえられたそれは、先程から少なくない数の注目の視線を集めていた。

「あれは、安土さまのお席にございます」

 流石に総奉行の娘だけあって、たまはよく心得ていた。それを聞いて、市の目にめらりと炎が燃えた。

「安土。兄の、新しい側室ですか」

「はい。昨年の夏に召し抱えられて、安土城に住まわれているとか」

「兄上さまも酔狂だこと。その安土とやら、元はただの侍女だというではありませんか。それも兄上さまのご嫡男、信忠殿の側室でもおかしくない年頃だとか。安土殿も、兄上さまに劣らず恥知らずな女に違いありませぬ」

「…お市さま」

 たまは痛ましげに眉を寄せる。が、否定はしなかった。市は唇を噛みしめ、白木の桟敷をにらみつけた。血の気の失せた白いおもては、凄絶なまでに美しかった。

「その女の顔、この目でしかと拝んでやりまする」

 押し殺した低い声で市が呟いた時、群衆のざわめきが一際大きくなった。

 主のなかった白い桟敷に、今、一人の女性が裾を引きながら入ってきていた。


 「信長公」「安土殿」という囁きが群衆の中を駆け巡ったが、それもやがて消えた。皆が息を飲み、その女性の一挙一動を見つめた。市は息を詰め、安土が打掛をさばいて座するのをじっと見守った。

 噂にたがわず、はっとするほど若い娘だった。小柄で華奢な身体には、薄紅の地にぎっしりと白や紅や金や橙の小花を刺繍した、これ以上派手にできないほど豪奢な打掛をまとっているのだが、彼女がまとうと、けばけばしさよりむしろ、活きた花をそのまま身につけているかのようだった。

 突き刺さるような、剥き出しの好奇の目にさらされながら、安土は平然と座し、真っ直ぐに前を見ていた。これと言って際立つところのない平凡な面差しだが、きらめく大きなひとみだけは別だった。くっきりと見開かれ、強い意志の力に溢れていた。

 抱いていた侮蔑の念は戦慄にとってかわる。市は、その小柄で細い身体と若々しい顔立ちを遥かに超越する威厳をふりまく娘から、目をそらすことができないでいた。

(どこで、どうやって、兄上さまはこの者を見初めたのであろう…)

 だが、息をひそめたような沈黙は長くは続かなかった。賑やかな笛と太鼓の音と共に、ついに行列が現れ、たちまち歓声が上がった。

「なんとまあ、きらびやかな」

 たまがため息交じりに言った。金銀の着物で飾りたてた武士や供人が、見事な馬と共に、途切れることなく通り過ぎて行く。真っ赤な小袖に金の羽織を得意げにまとった信包を見つけ、茶々達がはしゃいで手を振った。明るい楽の音に、人々の笑い声や賞賛の声が混じり、空に溶ける。

 市も目を奪われてはいたが、合間にちらちらと安土を見やるのは忘れなかった。安土は落ち着き払って手を重ね、口元に小さく笑みを浮かべている。他の見物客のように、声をあげて笑うことも話すこともないので、彼女だけが別の世界に浮遊しているかのようだった。

 信長の息子達も参加しており、嫡男の信忠と次男の信雄は父の側室の前を通る時に軽く頭を下げた。安土はふっと目を瞬かせ、それから笑みを浮かべたまま小さく頷き返した。安土をまるで無視する者、冷ややかな礼をよこす者、あからさまに不躾な眼差しを向ける者など、安土の前を通る者の態度は様々だった。しかし柴田勝家や森蘭丸のように、慇懃だが心のこもった仕草で頭を下げている者も少なからずいた。

 やはり伊達に安土の名を冠しているわけではないようだと、市は思った。

 隊列の最後に、白馬にまたがった信長が姿を現した。

 軽快な囃子はぴたりと止んだ。身体の奥底を揺らがすような太鼓の音が鳴り響く。派手な赤と白の南蛮衣装を袴と上衣の上にまとった信長は、純白の白馬の上から、真の天下人たる威厳を放っていた。

「うわあ、母上、すごいものでございましたね」

 三姉妹の末っ子にあたる江が無邪気に言った。市ははっと我に返った。

「ああ…そうであったな」

 辛うじて言い、ふと安土の座している桟敷に目をやる。たった今、その威光をこれでもかとばかりに天下に見せしめた男の側室たる若い娘は、相変わらず静かな空気をまとって一人で座しており、太陽をじかに見た者のように眩しげな表情で目を細め、夫を見送っていた。



 全くの偶然で、市が京都にいる間にじかに彼女と言葉を交わすことができたのは、馬揃えの翌日のことだった。

 市はまだ衝撃から立ち直っていなかったが、せっかくの京都を娘達にとくと見物させてやりたいと思い、山の中にある静かな仁和寺にんなじを訪れていた。そこなら、御苑で遊ぶ娘達を見守りながら濡れ縁でゆったりと休むことができる。

 空は淡い水色にけぶり、春のうららかな風が心地よい日だった。茶々がほうった毬を、江が一生懸命に追いかける。初が先にそれを拾って姉に投げ返す。三人のあどけない笑い声が、閑静な境内に響いていた。

 市は微笑んでそれを見つめていたが、心は兄・信長のことを考えていた。

(兄上さまは、私達の手の届かない所に行ってしまわれた。兄上さまの目は天上の目。やがては治めることになるであろう、この国全てを見渡す目…)

 そんな兄に、どうして畏敬の念を抱かずにいられようか。市の心は複雑だった。兄を素直に崇拝し、昔のように慕う思いと、恨む思いが混じりあう。信長は、天下に泰平をもたらそうとしているのかもしれない。けれどそのために市の嫁ぎ先を攻め滅ぼし、市にとっての幸せと泰平を奪ったのは、ほかならぬ信長なのだ。

(結局、男にとっての泰平と、女子おなごの望む幸せは、相容れぬものなのだろうか)

 いつしか市の美しい顔から笑みは消え、厳しい眼差しは娘達を離れて遠くへ彷徨っていた。

 その時、江が何かに足をとられて転んだ。彼女の手から離れた毬が勢いよく転がっていき、御苑を眺めながら歩いていた女性の足にぶつかった。女性が立ち止まり、袖をおさえながら毬を拾う。江が走って行って毬を受け取る。

「ありがとうございます」

 舌足らずな江の声に、市は我に返って目を向けた。

 軽く膝を曲げ、江に微笑みかけているのは、安土だった。

 驚いた市が何も言えないでいるうちに、安土も市に気づいた。はっとしたように目を見開く。それから、静かに頭を下げた。

 遠くで鳥が歌っていた。




「安土にございます。お目にかかれて、嬉しく思います」

 日のあたる広縁で、両手をつき深々と頭を下げる娘を、市は不思議なものを見る眼差しで眺めていた。淡い色の小袖だけをまとっているせいか、昨日よりも威厳が感じられない。花の茎のように華奢で、兄の娘であってもおかしくないほど若いのが際立った。いや、大きなひとみを静かに見開いて市を真っ直ぐに見つめてくるその姿は、あどけないと言ってもよい程だった。

「お市さまも、お寺の桜を見にいらしたのですか?」

「ええ。昨日の見物で少々疲れましたゆえ」

「左様でございましたか。兄上さまの催されし馬揃え、素晴らしゅうございましたね」

「あの、兄は…兄もこちらに?」

「いいえ。お側衆を連れて、鷹狩りへ行かれました」

 市はほっと肩の力を抜いた。そんな市を、安土が静かに見つめる。茶々達は遊び疲れて、濡れ縁でうとうとしている。

 もう二度と来ないかもしれない、兄の側室と2人きりのこの時に、市はふいに訊ねてみたくなった。

「安土殿。一つお聞きしてもよろしいでしょうか」

「どうぞ、何なりと」

「なぜ兄の側室へ上がったのですか」

 市は率直に尋ねた。

「あなたはまだ若い。もっと他の人を、己の伴侶として選ぼうとは思わなかったのですか。いえ…もっとはっきり言うなら、兄の何が欲しゅうて側室となったのですか」

 ゆっくりと数回、大きなひとみが瞬いた。そこにたたえられた澄んだ光は、揺るがなかった。

「それ程までに、私は不似合いに見えますか」

 皮肉や棘を一切含まない声に、市は答えなかった。すると相手のひとみに、微笑みが浮かんだ。今日の日差しのように柔らかく、温かな笑みだった。

「私は、織田信長という方をお慕いしております。故に、こうしてここにいるのです」

「え…兄を慕っている…?」

「はい。心から」

「なぜ」

 市は思わず言った。

「武将としては比類なく優れていても、心は非情な人間です。あの人の、どこを一体」

「非情などではありませぬ」

 凛として、安土は言った。

「私にとっては、誰よりお優しく、素晴らしい方にございます」

 迷いのない口調だった。けれどそれから、安土は唇を噛んで頭を下げた。

「申し訳ありません…お市さまのお辛さを、知りもせずに。差し出がましいことを申しました」

「よい。許すゆえ、おもてを上げてくだされ。安土殿」

 市はつとめて冷静に言った。娘は顔を上げ、思いきったように言った。

「私の本当の名は、笹と申します。どうか、笹と呼んで頂けませぬか。まだ安土となる前、安土の名を重く感じなくなるよりも前に、私はお屋方さまに出会ったのです」

「笹殿。それは、よい名です。あなたに、よく合っています」

 市は本心から言った。安土という名は、あのきらびやかで恐ろしいほど大きく堅牢な城を思わせるが、笹はただ静かな竹やぶを思わせる。娘は――ささは、嬉しげに笑った。

「昔の私は、何も分かっていない、ただの醜く無知な女でした。笹としても、安土としても、堂々と生きようと今思えるのは、お屋方さまのおかげです。あの方の側室になり、私の心は変わったのでございます。けれど本当なら、この美しい着物も、安土の身分もいらない。ただ、お屋方さまをお慕いするがために、私は側室となったのだと――そのことだけは、信じて頂きとう存じます」

 ささは心をこめて語った。声にも、ひとみにも、隅々にまで真実がみなぎっているのを市は聞き取った。だが、まだ信じきれない気持ちだった。

「…本気で、兄を好いているのですか。それは、苦しくはありませぬか」

 知らず知らずのうちに、声に気遣いがこもる。ささは、花が咲くようににっこりと笑って首を振った。

「その苦しさも全て含めて、お慕いしているのでございます。信長さまは、私が最初で最後の恋をした方です」

 深い思いをこめて、明るくささは言った。市は、瞬きもせずにささを見つめた。

 手の届かぬ所へ行ってしまったと、最初から諦めていた。それなのにこの少女は、手を伸ばし、寄り添おうとしている。細い身体にどれ程の強い心が隠れているのかを、市は思った。

(このような女性を選ばれたのなら、結局は兄上さまも、それほど非情になってしまわれたわけではないのかもしれぬ)

 市は口を開き、低い声で言った。

「安土としてではなく…笹殿としてなら、私はあなたを、好くことができるような気がします」

 聡いささは、それが市の精一杯の気持ちであると汲み取ったようだった。穏やかな表情で、頷いた。



 ささが安土へ戻ったのは、それから数日後のことだった。信長はしきりに遠慮するささを強引に輿へ乗せて安土と京を往復させた。これも信長公からあの風変わりな側室への寵愛の証かと、家臣達は驚き呆れて噂した。

(これでは本当のお姫さまのよう。私は歩いても全くかまわないのだけれど)

 ささは照れくさくも温かい気持ちでそう考えながら、輿を下りて安土城を見上げた。ほんのしばらく離れていただけなのに、ひどく懐かしく感じる。天高くそびえたつ城に、ささは今、包み込まれるような安心感を覚えていた。

「私は、うちに帰ってきたのだわ」

 誰に言うともなく、ささはそっと呟いた。




 本丸に入ってまもなくの場所で、ささは温かな笑みをたたえた濃姫に迎えられた。

「よう戻ったな、安土。長旅ご苦労であった」

「濃姫さま。ただいま戻りましてございます」

 濃姫は大きく頷き、近づいてささの手をとった。

 二人はささの部屋で、菓子をつまみながら心楽しく話をした。濃姫は京の話を聞きたがり、矢継ぎ早に質問をした。ささは一つひとつに丁寧に答え、楽しげな笑みを見せた。

「ようやくそなたも人並みに笑うことを覚えたと思えば、今度は笑いどおしか。何がそんなに嬉しいのじゃ」

 濃姫が呆れたように言った。

「安土城に戻ることができ、濃姫さまとお話しすることができて、嬉しいのでございます」

 そう答えて、ささはまた微笑む。咲いたばかりの花のように可憐でみずみずしい笑顔に、濃姫は思わず目を吸いつけられた。近頃のささは、人が変わったように明るくなった。よく喋り、よく笑う。それも、活き活きと、幸福そうに。変化はささにだけ訪れたのではないことにも、濃姫は気づいていた。表情がどことなく和らいできているのは、信長も同じだ。二人の間に何があったのかは、誰の目にも明らかだった。

「人は、変われば変わるものじゃな」

 濃姫はしみじみと頷いた。ささは穏やかな目をして頷いた。

「私も、己がこれほどに変われるとは思いもしませんでした。心のままに泣き、笑うことができるようになるなんて」

「そなただけではないぞ」

「…え?」

「殿も、変わられた」

 濃姫はささに微笑みかけた。

「そなたが、殿を変えたのじゃ」

「…」

 ささの目がわずかに潤んだ。それから、袖をそっと口元にあて、何も言わずに微笑んだ。そのまま静かに、目をきらきらさせているささに、濃姫は出会った頃のようにわざと居丈高に言った。

「ただし、私から見るとまだまだじゃな。安土としてはよくやっておるが、側室としては半人前じゃ」

「…それは、どういうことでしょうか」

 ささが不思議そうに訊ねた。濃姫は大きなため息をついた。

「そなたのそういう所は変わらぬな。側室の本来のつとめをころっと忘れおって」

「本来の、つとめ」

 濃姫は以前よくしていたように、こめかみをおさえて首を振った。

「そこまでそなたが分かっていないなら、はっきり言う。かくなるうえは、一刻も早く殿のお子を産むのじゃ。できれば男子がよい」

 ささが菓子にむせた。

「濃姫さま…いきなりそのようなことを言われましても」

「いきなりではない。そなたが側室に上がった瞬間から求められているつとめじゃ。そもそも今までそなたが怠けていたのが悪い」

「でも、言われてすぐにできることではありませぬ」

「ならば励むのじゃ」

 濃姫はきっぱりと言った。ささは困った顔をした。耳まで真っ赤だ。「返事は」と濃姫が厳しく問うと、「…努力いたします」と小さな声で答えた。




 ささはまた、安土城の安土殿として、豊かで平穏な生活に戻った。京での『お披露目』を無事終え、ささにはまた新たな落ち着きと自信が加わった。琴を奏でたり、花を活けたりしていると、満ち足りた気持ちになる。馬揃えの始末を終えて戻ってきた信長の、細やかな気遣いと優しさが、いっそうささを幸福にした。

 しかし、穏やかな生活は長くは続かなかった。

「武田を討つ。そちの兵を総動員し、甲府を囲め」

 信長は軍会議で、嫡男・信忠に命じた。信忠は強張った顔で、その命令を受けた。馬揃えから遡ることひと月近く前、二月三日のことであった。

 武田家はかつて、織田家が足元にも及ばぬほどの隆盛を誇った大名であった。しかし、みるみるうちに膨れ上がる信長の強大な力を前にしてはなす術もなく、辛うじて抵抗の姿勢をとってはいたものの、その命はもはや風前の灯火であったのである。

 総大将に信忠を据え、駿河国からは徳川家康とくがわいえやすが加勢し、その他にも二名の大名が助太刀の名乗りを上げた。武田家はじわじわと、着実に追い詰められていった。

 馬揃えから戻って一週間も経たないうちに、信長は自らも出陣する準備を進めていた。

「いよいよにございますね」

 うたうように艶やかな声と共に、信長の手にした盃にとくとくと酒がつがれた。うむ、と信長は頷き、口をつける。その様子を、陶器の如く白い肌の女が、嬉しげに誇らしげに見つめている。

 一口飲んだ盃を、信長はすっと彼女に差し出した。

「祝いの酒じゃ。そちも飲め」

「出陣の祝いにございますか?」

「違う。武田征伐の祝いじゃ」

 己の勝利を当たり前のように語る信長の言葉に、女の笑みが深まった。

「そちになら、それくらい分かっておろうが。濃」

「まあ、恐れ多いことにございますわ。でも、その祝い酒なら、喜んで預かります」

 そう言って、濃姫は闇を跳ね返すほど赤い唇を盃につけた。

 ときおり生温かな風の吹く、春の夜だった。開け放った障子の向こうに、朧月が白く霞んでいる。その月を肴に、信長は正妻の酌で酒を飲んだ。ややきつめの香が、濃姫の袖から盃に移る。彼女の整った面立ちは、月と同じ色をしている。

 かように酒を美味くする酌がつとまるのは、この姫をおいて他にないと信長は思っている。

「天下をすぐそこまで引き寄せたあなたさまなら、あの月もつかんでおしまいになるかもしれませぬね」

 夫に寄り添い、濃姫は囁いた。信長の口元に笑みが浮かんだ。

「あれが欲しいか」

「ええ、と答えたら?」

「では天下をとった後に、そちにやろう」

 濃姫は虚をつかれた。笑おうとしてやめたのは、信長の声にからかいや冗談の色が微塵もみられなかったからである。

「笹も、そちと同じようなことを言うておった。風の行く場所を見せよとな」

「安土が?それで、お見せになってやったのですか」

「無論じゃ」

 こともなげな返事をきいて、濃姫は微笑んだ。艶やかさの消えた、温かく優しい笑みだった。

「あの者の望みなら、何でもかなえておやりになるのですね」

「羨ましいか」

「いいえ。安土は、特別な女子おなごにございます。殿にとっても、また私にとっても」

 夫と妻が、夫の妾のことを話すには、あまりにも奇妙な会話である。だが、その妾というのがささである場合、これは奇妙でもなんでもなかった。野に咲く花が誰にでも愛されるのと同じだ。

 信長と濃姫には、子がない。現在十人いる信長の実子達は、全て側室に産ませている。そうした事情を、誰より理解し受け入れ、妻というよりは戦友のような心の強さで自分を支える濃姫を、信長は非常に高くかっている。

 信長は腕を伸ばし、濃姫の柔らかい身体を引き寄せた。

「我が正室であるそちもまた、唯一無二の女じゃ。それを忘れるな。天下統一の時は近い。必ずや世界を、あの空や月までをも我が物としてみせようぞ」

「楽しみにしておりまする」

 夫の肩に頭を預け、濃姫は大輪の花のように笑った。

 けれどそれから、濃姫の眉根がほんの少し寄った。

「それで、こたびのご出陣のこと、安土には…?」

「二日ほど前に告げた」

「何と申しておったのですか」

「何も言わぬわ。だが、あの者は戦を嫌っておる」

「まあ、なぜお分かりに?」

「笹の気質じゃ。笹は、嘘やごまかしは断じて言わぬ。その代わり、気に食わぬこともまた、決して口にせぬ」

 言いながら信長は、武田征伐のため出陣することを告げた時のささの顔を思い出した。

 その時ささは、黙って両手を握りしめ、頭を下げた。彼女は、信長の意思に口を出すことは決してない。けれどその表情は、鏡のように雄弁に彼女の心を映し出す。その時のささは、琵琶湖の真ん中で道を見失い、途方に暮れながら近づく嵐を見つめている、迷子の風の子のような表情だった。

 濃姫は軽くため息をついた。

「安土も所詮は女子おなご。戦を好まぬのは道理でございましょう」

「そうであったな」

 信長は低い声で言った。手酌でもう一口酒を飲むと、澱のように心にしみついていたささの眼差しが揺らいで消えた。

「濃、城の留守は頼んだぞ。託せるのは、そちだけじゃ」

「はい。安土は必ずや、この濃が守りまする。どうぞご存分なお働きを」

 二人は笑みを交わした。互いをこの世の誰より信ずる者同士の、誓いだった。




 南蛮の鎧をまとい、まんとをつけた信長が、兵達を率いて城の正門を出て行くのを、ささは自室の窓から見つめていた。

(どうか、ご無事で)

 そう祈ることしかできない自分を、どうしようもなく歯がゆく思う。ささは目を閉じ、きつく指を絡み合わせる。この頃、不安や恐れが湧き上がるたびに、悪寒や吐き気に襲われる。それは突発的なものであり、始まりと同じようにいつも唐突に収まったが、ささにはそれが不吉な兆しに思われてならなかった。

(戦場で、あの方に何かあったら…いいえ、そのようなことはあり得ない。信長さまはきっと戻ってきてくださる。きっと…)

 戦など嫌いだと、ささは苦々しく思った。城中の者達が、戦を華々しい祭りか何かのようにとらえているのが、ひどく疎ましかった。疲弊しきった武田を討つのが、信長自身の言うように、赤子の手をひねるよりたやすいことであったとしてもである。

 ささは、実際の戦を知らない。知っているのは、出陣する軍勢の後ろ姿、ときおり鳴り響く演習の鉄砲の音、そして戦について話す信長の目だけだ。

 あの目。一週間ほど前の夜、信濃へ向かうと告げた信長の目を、ささは久しぶりに怖いと思った。故に、側室・安土としての立派な態度を、とることができなかった。

(行ってらっしゃいませ、ご存分なお働きをと、言わなければならなかったのに)

 ささは、自分の心に嘘をつくことができなかった。俯くささの心を、信長はすぐに読み取ったようだった。微かな苛立ちを含んだため息に、ささの肩が震えた。けれど、信長の望む言葉を口にすることも、自分の本当の気持ちを口にすることも、ささにはできなかった。

 信長を愛している。その気持ちを、ささはためらうことも封じることももはやない。そして、湖のほとりで誓いを交わしたあの日から、ささは信長の気持ちをも信じている。自分への愛を。

 けれどそれでも、いや、それだからこそ、ささはときおり自分の気持ちを上手く伝えられなくなった。愛しているから、傷つけたくない。望まないことをしたくない。常に寄り添う者でありたかった。誇り高く孤独な夫にとって、安らげる場所、信じられる支えでありたかった。

「お帰りを、お待ちしています」

 ささに言えたのはそれだけだった。絞り出すようなその言葉に、信長はささの手をとって引いた。温かくゆっくりと波打つ胸に顔を埋め、ささは目を閉じる。そうして、愛しい人に抱きしめられる感触を、全身に覚えこませようとつとめた。

(どうか、ご無事で)

 徐々に遠ざかっていく騎馬の群れを見つめながら、ささはもう一度呟いた。いかに愛し合う男と女であっても、戦へ赴く男の帰りをただ待つことしかできない女の苦悩は、決して分ちあうことなどできないと思った。

(戦で男が死ぬ時、その人を愛し無事を祈っていた女の心も死ぬ。私の愛する人が散らすのは、私と同じような女が待っているかもしれない人の命なのだ…)

 城下町の屋根で休んでいた鴉が、人間共の凱旋に驚いて、騒々しくわめきたてながら空に舞い上がった。いかにも禍々しいその鳴き声を聞いた瞬間、ささの目の前がすうっと暗くなった。




 気がついた時、ささは布団に寝ていた。辺りは既に暗い。忍び足で入ってきた菊が、ささが気を失って倒れたことを教えてくれた。

「薬師をお呼びしましょうか」

 心配そうな菊の言葉に、ささは黙って首を横に振った。実際、気分の悪さは消えていた。菊が一礼して退室すると、ささはそっと起き上がり、床の間から小箱をとった。中には、信長に贈られた巻き貝がおさめられていた。

 ささは貝を抱いて、もう一度布団に入った。耳にあて、波の音を聴いていると、いくらか心が落ち着いた。二人で並び、貝の中だけにある海を見つめているような、そんな心地になる。

 ささは不安をこらえ、無理やり目を閉じた。



 戦など、この一年で数え切れぬほどあったはずだった。そのたび、ささは浮かない気持ちになったが、これ程心細さと不安にとり憑かれたことはなかった。

 もしかしたらそれは、ささの身体がいつにない不調を訴えているからかもしれない。食欲は衰え、長い間動き回っているとすぐに目の前が暗くなる。元来さほど病弱ではないはずのささにとって、それは言い知れぬ不安の源にも繋がった。

 ささを訪れた濃姫は、彼女の顔色の優れないことをひどく案じた。

「そなたのことじゃ。風にあたりすぎたのではないか」

「さようなことはございませぬ…少しばかり、眠りが浅いだけです」

 ささは淡く微笑んだ。濃姫は手を伸ばし、やや乱れたささの垂髪を直してやった。

「そなたは安土の宝じゃ。そなたに何かあれば、私が殿に手討ちにされるかもしれぬ。何か障りがあれば、いつでも申しつけるがよいぞ」

「お言葉は大変ありがたく存じますが、手討ちとは言いすぎでは」

「それほど殿がそなたを愛しく思っているということじゃ」

 濃姫は優しく言った。ささは笑みを消し、目を伏せた。

「濃姫さまは…それでよろしいのですか」

 聞き取れぬほど小さな声だった。濃姫はささの頬に手をあてがい、目を合わせ、迷うことなく頷いた。

「言うたはずじゃ。そなたと殿の添いあうことは、我が願いであると。殿の喜びは我が喜び、殿の好いておられる人は私にとっても大切な人じゃ」

 頬をはさまれたささは、目を瞬かせてから、先程よりずっと明るく微笑んだ。

「今の濃姫さまのお顔は、信長さまにそっくりにございます」

「そうか」

 濃姫も笑った。ささは、人前では信長を『お屋方さま』と呼ぶが、信長本人か濃姫と二人きりの時だけは、『信長さま』と夫の名前を呼んだ。

「私は、幸せにございます」

 ささは濃姫の目を見つめたまま静かに言った。

「信長さまを心からお慕いしております。誰かを愛し、愛される喜びを、私は初めて知りました。そして、その誰かというのが信長さまであって、心からよかったと思います」

 濃姫はそっと手をはなした。どこまでも穏やかなささの声だったが、そこに何か胸の痛くなるようなものが含まれていた。ささは、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「ただ…私は、弱くなりました」

「弱く?」

 はい、とささは頷く。

「私はもう、信長さまなしに生きることはできません」

 静まり返った部屋に、ささの声が響いた。

 部屋に活けた赤い花が微かに揺れた。濃姫は、初めてささにかけるべき言葉を失っていた。

「信長さまを失うのが恐い。お傍にいたい。…武士にとって何より大事な戦の時に、私が考えることといえば、ただそればかりにございます。身も心も信長さまに捧げたことに、後悔などありませぬが…それでも私は、己の強さを、失いました」

 きつく絡み合わせたささの指先が、白くなる。澄んだ大きなひとみには、痛みと切なさが浮かんでいた。その声は、微かに震えていた。

「私が何より憧れたのは、濃姫さまのお強い心でありましたのに」

 濃姫は、込み上げる熱いものをぐっと飲みこんだ。そして、ささをひたと見据え、低く言った。

「そなたのその苦しみ、そして悲しみ。全て胸にたたみ、ただ生きよ。信長公の側室として、そなたの選んだ道を一筋に生きてまいれ」

「はい」

 ささは静かに頷いた。濃姫は、ささを引き寄せ、強く抱き締めた。ささの身体が驚いたように堅くなったが、濃姫はかまわなかった。あまりに一途な愛のためなら誰より強くも弱くもなれる、可憐で儚い、真っ直ぐでありながら揺れている、花のような竹のようなこの娘が、ただ愛おしくてならなかった。

 ささは目を丸くし、されるがままになっていた。それからふいに、顔をくしゃりと歪め、震える吐息と共に濃姫にしがみついた。

 



 日が傾き、自室へ戻ろうとする濃姫を見送るため手をついたささが、ふいに胸をおさえた。

「いかがした?安土」

「いえ、何でもありませぬ。…近頃、よくこうなるのです」

 不自然に言葉を途切らせながら、ささはそう言って無理に微笑もうとした。濃姫は眉をひそめ、膝を折ってささの額に触れる。

「薬師にはみせたのか」

「じきに治ります。いつもそうですから」

「馬鹿を申すでないぞ」

 濃姫はぴしゃりと言い、控えていた侍女にすぐさま床を敷くよう言いつけた。徐々に強くなる胸の痛みと吐き気に耐えながら、ささは苦しげに呟いた。

「私の身体のことだけならよいのです。けれど、もしやあの方に何かあったのではないかと、それを思うと、私は」

 濃姫の顔からさっと血の気が引いた。辛うじて押し出された言葉に、いつもの威厳は感じられない。

「それこそ、それこそ馬鹿なことを…そなた…!」

「ならば、どうかお教えください。戦は、戦況は今どうなって」

 顔を上げ、訴えた瞬間、ささの鳩尾に拳がめりこんだような衝撃が走った。細い声を上げて、ささは気を失った。




 柔らかな雨音がささの不安な夢に入り込み、静かに闇を浸していった。ささは果てしない闇の中を彷徨っていたが、笹のはずれにも似た雨音が道をつくってくれた。ささは佇み、じっと耳を傾ける。そうしていると、いつかの雨の夜に寄り添った信長の広い胸の温かさを思い出した。

 ささが目を開けた時、濃姫が枕元に座してじっとささを見下ろしていた。目が合うと、濃姫はにっこりと微笑んだ。白い顔はいつもにまして美しかった。

「気がついたか、安土」

「…濃姫さま」

「喜ぶがよいぞ。戦は終わった。織田の軍の圧勝だったそうじゃ」

 ささの顔が、光の差したように明るくなった。

「それは、まことにございますか。では信長さまは」

「甲斐の国の整理を終えられたらすぐにお戻りになる。あと少しの辛抱じゃ。…それと」

 濃姫は言葉を途切らせ、ふっと目を閉じた。大いなる喜びと、複雑な感情のうねりがそのおもてに現れては消えるのを、ささは不思議そうに見つめていた。

 やがて濃姫は、ささの上にかがみこみ、壊れ物を扱うように頬を撫でながらそっと囁いた。

「安土。先程薬師が来て、そなたを診察していった。間違いないそうじゃ」

「は…?」

 濃姫は目を輝かせて、告げた。

「そなたは――」





 それから二週間ほどが経ち、ついに信長が安土城へ帰還した。長年の悩みの種で合った武田氏を攻め滅ぼしての華々しい帰還であった。

 幾千の鎧のぶつかりあう音を聞き、黒く長く続く塀の列を窓下にみとめるとすぐに、ささは侍女達が必死でとめるのもきかずに部屋を飛び出した。今日はとても調子がよく、身が軽い。ささは、打掛の裾をひらめかせて駆ける。風が運ぶ花びらのような彼女の姿に、すれ違う者達はぽかんとして見送った。

 ささが城から駆け出してきた時、信長はまだ馬から降りてすらいなかった。ちょうど最後の馬が門をくぐり終えた所であり、砂埃がもうもうとたちこめていた。

 その向こうから、蝶のように軽やかに駆けてくる者がいる。ぬばたまの髪がゆらりと踊り、紅色の袖がはためく。そして信長が見まごうはずもない、湖のように澄んで輝く大きなひとみ。

「安土さま?!」

 家臣の一人が動揺して声を上げるよりも早く、信長はささに気づいていた。ささは息を切らせながら立ち止まった。そのひとみは、信長のみをひたと見据えている。

 戦から戻ったその足で、信長がささを訪ねて行ったことがあった。そして今、ささが自らの意思で、信長に会いに来たのだ。

 信長は馬から降りて、ささに近づいた。何千という兵達、馬を引きに出てきていた仕えの者達が、しんと静まり返った。

「お帰りなさいませ」

 ささが言い、深々と頭を下げた。信長は頷き、おもむろに訊ねた。

「いかがした」

 ささは、信長の目を見つめて微笑んだ。信長が今まで見たことのない表情だった。

「お屋方さま。私は、お屋方さまのお子を身ごもりましてございます」

 喜びに溢れた声で、ささは告げた。

 一拍か二拍の間、信長は動かなかった。それから、突然風のように素早く動き、ささの肩をつかんだ。

「まことか」

 問う声は低かった。ささは大きく頷き、己の腹の上にそっと両手をあてた。

「はい。ここに、おります」

 信長の見開かれた目が、ささの顔から下へ、腹部へ動き、また戻る。

「ようやった」

 ただ一言、信長は言った。それだけで、ささには充分だった。肩をしっかりとつかむ手にこもる痛いほどの力が、信長の心を伝えてきていた。




 夜になって、二人きりになるまで、信長はそのことについて何も言わなかった。ささが信長に告げた、その場に居合わせた者達の口を通じて噂は野火より素早く広まったが、信長は淡々と執務をこなし、戦で功績を残した者達をねぎらった。

 夜、床の中で、信長はささを抱きしめた。それ以上のことは決してせずに、ただささをきつく抱き、艶やかに香る長い髪を何度も梳く。ささは一寸の隙間も残さぬようぴったりと信長に寄り添い、昼も夜も焦がれていた温もりと長いしなやかな指の感触を心ゆくまで味わった。そうして互いの愛しさを確かめあうその瞬間にも、二人はもう二人ではなかった。愛の結晶である小さな命が、ささの中に宿っているのだ。

「身体の調子はどうじゃ」

 何度目かの口づけの後、信長が尋ねた。ささは溢れる幸福に気が遠くなりながらも頷いた。

「だいぶ良うございます。…今は三月目みつきめに入る頃かと、薬師が申しておりました」

「そうか」

 信長は応じ、ささの腹に大きな手をあてた。ささはその上に己の手を重ね、我が子にその温もりが伝わるよう願った。

 いつになく優しく慎重に、信長の手がゆっくりとささを撫でる。帯の結び目の上で彷徨い、けれどそのまま離れていった。ささは、はっとして信長を見つめた。

「子が生まれるまではそちを抱かぬ」

 信長は言った。ささの目が大きく見開かれ、潤んだ。若竹のように華奢な身体を守るように抱き、耳朶に唇を寄せて、信長は静かな囁きを雫のように一つおとした。

「無事に丈夫な子を産め」

「…はい」

 頷いたささの目から、一筋の涙が零れ落ちた。人は、あまりに幸福でも涙を流すのだと、ささはこの夜に初めて知ったのだった。




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