4.あ、すみません。とりあえず漫画みたいな設定って事ですか?

「その、きゅー吉は、精霊と呼ばれるモノです。簡単に精霊を説明すると、自然エネルギーの化身です。きゅー吉は恐らく水の精霊だと思います。」

「…水。」

だからこいつが泣いたとたん、恐ろし勢いで部屋が池みたいになったのか。

あ。俺、部屋の床拭いてないわ、やば。

「きゅー?」

不思議そうにこちらを見るきゅー吉をなでる。嬉しそうに手にすり寄ってきた。うん、可愛い。部屋を濡らした事はお前の可愛さに免じて許してやろう。母さんに叱られるのも目を瞑ろうではないか。

「あまり驚かないのですね。そしてよく懐いている」

「えっ?あ、はい。何かアニメとかゲームぽいのが現実になった感じ?ですかね。むしろ俺的には日鞠さんが5階から優雅に飛び降りて無傷って事が驚きです。…、あ。もしかして日鞠さんって…」

「残念ながら兄さんは人間です。」

「そうですよね」

「精霊は自然エネルギーを意図的に使う事ができます。そして人間もある条件を満たすと自然エネルギーを使うことが出来ます。…ちなみに人間が自然エネルギーを使うことをといいます。兄は術を使って、普通の人ができない事をやるのです。」

「なるほど。」

俺にもマンガのキャラみたいにビームとか打てるようになるってことか?

「その条件とは、まず精霊が見えるかどうか。そして人間に耐性があるか。」

「まじで漫画みたいだ…え。というか見えるって?」

「そのままです。精霊が見えるかどうか。認識できるかどうか。」

「…なるほど」

「見え方は個人差があります。幼少期から見える人もいれば、何かのきっかけで見える様になる人…。タイミングは決まってません。」

じゃあ、俺にそのタイミングが来たってことか。

「通常は幼少期から見え、それから力を使えるよう訓練を積みます。訓練や適性検査を経て、自然エネルギーを使えるかどうかの耐性が分かります。」

「ほう。」

「でも、そんな訓練なんかしなくても、見えるというだけで、自分の力の様に自然エネルギーを扱う方法があります。」

「裏ルートてきな?」

「…はい。」

じーっとこちらを見てくる夜ト君。なんだ裏ルート!ちょっといけない気がして、なんかドキドキするぞ。

「精霊と契約する事」

「えっ?契約?」

マンガや!!

「はい。精霊と契約する事で力を使えるようになります。」

「おぉ。」

「契約は2種類。1つ目は霊永契約えいれいけいやく。これは精霊と人間の意思と信頼関係が絶対条件であり、表面上は対等な関係です。しかし精霊は不安ていな存在でもあるので、契約をすると色々と制限を受けるのは精霊の方…だからこそ、この契約を結ぶときの主導権は実質的には精霊がもっています。しかし契約を結ぶとその主導権は人間に移ります。精霊の力全てを己の力として人間は使う事ができ、己の力と掛け合わせる事で爆発的な力を生み出します。」

「おぉ…」

「霊英契約は通常人間にマイナスはほとんどないのですが、精霊にとっては寿命を失う事になりす。」

「えっ」

「精霊の力すべてを人間が使うことができるという事は、そういう事です。…精霊は自然エネルギーなので、ある程度成長した精霊の寿命は遥かに人間より長い。精霊にとって、それを失ってもいいと思える程の人間じゃなければ、この契約は成立しないという事です。」

「…」

「それに、精霊が良いと言っても精霊の力が遥かに格上の場合、人間側がその力に耐えられず消滅してしまう恐れがあります。」

「しょ、消滅…」

えっ何それ。

「ですから、実質的に霊永契約を結べる人間はとても限られています。」

うん、そんな感じするわ。

「現実的なのはもう一つの簡易契約。文字通り簡単な契約です。」

そのままじゃーん!ってのは心にしまった。

「これは見える人なら結構、誰でも結べます。お互いに了承し契約すると、精霊の力を一部借りて使うことができます。一部なので、人にも精霊にも負担は少ない。」「は、はい、」

「そして人間の力が精霊よりも強かった場合、無理やり酷使することもできる。」

「酷使…?」

「…精霊は不安定な存在です。精霊によっては今にも消えてしまいそうなモノもいる。そのような力の弱い者を人間が強制的に力で抑え、自然エネルギーを得るというひどい奴がいるのも事実。そして最悪の場合、精霊は消滅する。」

「…」

じゃあ、日鞠さんが言っていた悪い奴らっていうのは…

「恐らく正義のヒーローの敵はそいつらです。」

「ですよね!」

アレ?俺声出してたっけ?

「いえ、顔にでてます。」

「まじですか!」

とりあえず、漫画見たいな設定に漫画見たいな悪いヤツがいるって事だな!


…まじか。大丈夫か、俺?

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