2.謎の組織に加入しました。あとイケメン怖い。

イケメンはあのあと、マンションの5階という事を物ともせず飛び降りた。

俺は死ぬかと思った。

そう言ったら、「そんな訳ないでしょ」と言われたから、この人に常識は通じないと判断した。

「きゅー?」

謎の生物は心配そうにこっちを見ている。

因みに5階から飛び降りた瞬間にこいつも恐怖を感じたらしく、俺たちの間には絆が生まれた。細かいことは気にするな。こんなイケメンより、ずっとこいつの方が信用できる。イケメン怖い。

ちなみに今は車の中だ。有無を言わずに乗らされた。

…これ誘拐?

と言いたいが、5階から飛び降りた時、

「あ、お前の親子さん心配するねー?」

と言って、5階に戻り母さんに許可を取ったのだ。母は、イケメンを見た瞬間、コロっと落ちやがって、息子が青い顔してるにも関わらず、笑顔で

「いってらっしゃい」

と手を振ったのだ…。


母よ!!


黒塗りのいかにも高そうな車の中は、いかにも高そうだった。そのままだな…。

「あ、そうだ。僕は柊日鞠ひいらぎひまり。日鞠でいーよ。君はー?」

「えっ、あっはい。えっと…冬咲日和です。」

「冬に咲か。…うん。日和君よろしくね。いくつだい?中学生?」

「…高校生です。」

くそ、イケメンだからって…!身長はこれから伸びるんだよ!

「そっか、そっかー!ならちょうどいいね。」

「?」

「?気にしなくていーよ。」

何がちょうどいいんだ。気にするだろ、色々と!

「日鞠様、流石に少しは話した方が良いんじゃないですか?この子何も知らないようですし…」

グッジョブ運転手さん!いきなりでてきて驚いたけど、その通りだ!俺は何も知らなくて困惑してるぞ!

「きゅー」

ほら!きゅー吉も気にしてる!あ、なんかこう、こいつには親近感が湧いてキュー吉と名付けました。

「えー。めんどくさいなー」

いやいや。説明してください。頬膨らましても可愛くないです。イケメンだけども!「あ!お前が説明してよ、あられぇぇ」

「嫌です。面倒。」

お前も結局めんどうなんかーい!

「えー、一応僕当主なんだけどなぁー」

「当主なら、さっさと説明して下さい。」

「えー。うーん。」

「あの、日鞠さん…」

「はー。どこから説明した方がいいのかな?うーん。とりあえず、君のソレは精霊って呼ばれるものだよ。」

きゅー吉に視線を投げてそう言った。

「精霊…?」

「そ!精霊。人じゃないんだ。で、俺たちはその精霊の力とか色んなパワーを使って悪の組織と戦い、みんなの平和を守ってるんだ!以上!」

「…」

イケメンは中二病だった。

「日鞠様…」

すごく残念そうな視線を運転手さんが日鞠さんに送っていた。

「はー、日和君もあられも酷いね。本当の事じゃないか。じゃあ。そのきゅー吉とやらはどう説明つけるんだい?」

「…」

「ま、これから分かるようになるさ!これからよろしくね!」

「ぇっ、」

「?だから、よろしく!」

首を傾げた姿もイケメンだけど、いやいやいや

「えっ、俺も平和を守る正義のヒーローになるんですか?」

「正義のヒーローかぁぁ。いい響きだね!」

「いや、だから、俺は普通の…」

「えーダメかい?うーん。きっと僕たちと来れば、君の知りたい事、色々と分かると思うよ!」

いや、俺は普通の高校でありたいです。

「きゅー吉の事だって何も知らないでしょ?何がこの子の餌になるか知ってるかい?普通の動物ではない事くらい分かってるでしょ?拾ってきた場所に戻すのかい?」「…」

いや、飼うとは言ってないが、拾ってきた場所、俺の部屋だから戻し場所がない。ちょっと、どーしよっかなって思ってたのは確かだけど…。

「それに、君の目。きっとそれも分かるよ。」

「!」

なんでそれを?!

「一応、僕も柊家の当主だからね!それくらいは分かるさ!」

「…」

「あ、もちろん。衣食住は用意するし。」

「いや…」

別にそんなのもらったって…

「給金もでるよ。」

「やります!」

「うん!決まりだね。冬咲日和、よろしく頼むよ」


冬咲日和、高校2年生。

今日から正義のヒーローになりました。

グッバイ。俺の平和日常。

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