第31話 炎に寄り添って

あまりに突然でそこにいた二人は声が出なかった。

瞳の『紫』も気になるところだが、

この間にも彼女の背中はずっと炎に焼かれ続けている。


「シロさん⁉背中熱くないんですか⁉」

驚いたイデルの声にもシロは小首をかしげるだけだった。

「…大変興味深い状況だが、まずはあらましを説明しよう」

B&Bは気にせずこのような状況になったのか話始めた。

イデルは話よりもシロの背中が気になって仕方がなかったのは

言うまでもない。


「…といった状況でね。

 今のところ手詰まりといったところだよ」

B&Bの説明が終わるとシロは宙を見て考える。

考えた結果が、

「じゃあ、止めてくる」

という軽い返事だった。

あまりの軽さにイデルもB&Bもあっけに取られた。

「シロさん⁉お買い物とは訳が違うんですよ⁉」

驚いてシロの体を揺さぶるイデルと

顔の画面の波長を小刻みに揺らして笑っているB&B

各自あまりにも予想外の返事だったのだ。

「そうシロが言うのならば、任せるしかないな

 その手腕を見せてもらおう」

笑いの余韻が残りつつもB&Bはシロにいった。

それを聞いたイデルもいったんは動揺を治め、

「…無茶しないように、お願いしますよ!」

シロの腹部に触れた。

「うん、いってくる」

シロはイデルの頭を優しく撫でた後、炎に向き合った。


『紫』の炎は容赦なくシロに絡みついてくる。

炎の渦からまるで生き物ように、

獲物を食らうように、

逃がさぬように、

やがて、シロは炎に包まれた。


周りはすべて『紫』

その所々にまばゆく燃える光をちらつかせていた。

シロはその中で手を伸ばし何かを掴んだ。

掴んだのは勿論、『紫』の炎。

徐に炎を頬に近づけた。

まるで愛しいものに頬擦りするかのように

目を閉じて、優しく。


「…そうか」

シロは一人呟くと同時に体も炎に包まれた。

しかし、その炎は周りと違う挙動を見せた。

それはシロの体を這い、胸元の『赤』の宝石を

『紫』に染めた。

体に纏った炎は形を変え、

上品なレースを湛えドレスをなった。

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