第30話 そうしてこうなった
…こうして冒頭に戻ってくるのである。
『紫』の炎の渦に彼女はいる。
轟々と燃える音の中に鳴き声が聞こえてくるのだ。
「…あなたの所為ですよ、言いすぎです」
「はて、何がいけなかったのやら?」
イデルの発言にB&Bは解っているのか、いないのか
首を傾げて現状を見つめている。
「まあ、安心するといい。
防御壁の強度には自信がある。
それに、この状態はそう長くは続かない」
「それって、どういう?」
「先ほどの『器』の話とつながることだ」
先ほどの箱を思い出してほしい。
彼女の箱は小さくて、薄くて、脆い。
その中に爆竹を入れたら
どうなるだろう?
しかも、その衝撃がずっと続いたら
その箱はどうなるだろうか?
「この強大な魔力を維持し続けるのは見事なものだ。
『器』に見合ってないのが残念だ。
消滅は避けられないだろう」
「消滅って…
死んでしまうってことですか?!」
「そう思って差し支えないだろう」
イデルは嫌だった。
今日、突然に現れただけの少女。
「王子様を探しに来たの!」
ただそれだけで、振り回された。
迷惑を被った。
へとへとになるまで。
しかし、
「どうにか…、しなくちゃ」
「このままでも、解決にはなるが?」
「それは解っています。
すごくワガママ言ってばかりで、
すごく振り回されて、
それでも、嫌なものは嫌です!
僕はお人好しナノデ」
最後の一言は自分に対しての皮肉を言ったようにイデルは呟いた。
傍らでB&Bは小さくわらった。
しかし、残酷にも時間は過ぎる。
熱で喉が渇く感覚が、
頬の髭が焦げるような匂いが、
体が熱風で焼ける痛みが、
それらすべてが強くなる。
「イデル、もう少し距離を取ろう。
危険だ」
B&Bはそういうとイデルの腕を引いた。
その時だった。
轟々とした炎が彼らに襲い掛かったのは。
-ああ、これはだめだ…。
イデルの目の前に炎が飛び込んできた。
とっさに目をつむって痛みに耐える準備をした。
しかし、妙だった。
熱くない。
焦げてない。
灼けてない。
「ただいま、イデル」
目を開けるとそこには今までラタンシアと探し続けていた、
彼女の、シロの姿があった。
その瞳は『紫』だった。
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