第24話 迷子とは?

迷子。

迷い人。

この町に迷い込んでくる子供は珍しくない。

そのため町の住人は彼らの対応には慣れている。

そのはずなのだが。

家に来た男は首を傾げている。

詳しく聞いてよくわからないらしい。

「迷子…。迷子のはず…。多分」

ずっとこの調子である。

ここでB&Bが提案する。

「とりあえず、行ってみるか」


案内され迷子がいる町の広場へ向かう。

そして、人だかりから聞こえる怒鳴り声。

「だから、あなた方の弱者に要はないの!

 あなた方にかまっている暇はないの!」

声からして女、少女声だった。

可愛らしい声色ではあるが、

言うことに棘がある。

―これはどうしたことだろう?

イデルは首を傾げる。

それは周りの人々同じようだ。

全員が首を傾げている。

どうしたらわからない。

そのような様子だ。


「ど、どうしましたか?」

イデルが声をかけると

そこにいた全員がほっとした様子。

「イデルさん!よろしくお願いします!

 テクノポリスの方もお願いします!」

イデルとB&Bが人の波に押される。

もう自分たちには手に負えない

と言わんばかりに背を押される。

押しに押されたどり着いた迷子の前。

「あら、あなたがこの町で一番の人?」


ここに来る迷子は大体は

家族とはぐれた者

忌子として追放された者

暴力などを受け逃げ出した者

それゆえ衣服は汚れていたり、

破けていたりなどひどいものが多い。

しかし、目の前にいるのは

それと正反対の『紫』の少女。

金のレースが付いている上品なブラウスとベスト。

胸元にあるリボン付きのブローチ。

きれいに整えられた6つのロールヘア。

聞いたことしかなかった。

『貴族』という人種だった。


―これは完ぺきに上流階級の住人だあ…。

イデルが今まで生きてきて、

であったことのない人種。

そして今後も会うことはないと

思っていた人種。

そして最も苦手な人種。

「イデル、どうした?

 初めて見る顔だぞ」

B&Bに言われてイデルは気付く。

顔にしわが寄っていた。

―危ない…。

手を当て顔のしわを伸ばした。


周りが少女を凝視している。

それが不快に思ったのか、

少女が再び声を荒らげる。

「さっきから何?

 じろじろと人のことを見て。

 失礼な方々ですこと!」

少女はそっぽを向いた。

「はい…。すみません」

確かに彼女をイデルは凝視してしまった。

しかし、イデルだけではない。

町の住人も彼女を凝視している。

他に不可思議なことがある。

彼女の下半身は人のものではない。

ガラスがはめ込まれた鉄枠。

角灯、ランタンと呼ばれるものだ。

そして、中に鮮やかな『紫』の炎が揺らめいていた。


周囲が静まりかえる中。

最初に動いたのはB&Bだった。

「失礼したレディ。

 私の名前はB&Bと申します。

 あなたの名前と御用時を

 お聞きしてよろしいですか?」

その言葉に彼女は答えた。

「私の名前はラタンシア フラム キンデール。

 王子様を探しに来たの!」

周囲は再び静まり返った。

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