第21話 彼女に新しい世界を

「厚かましいお願いかも

 しれないのですが、


 シロさんにいろんなことを

 教えて欲しいんです」


イデルの願いは

”彼女の幸せ”

たくさんの経験

たくさんの知識

たくさんの思想

これらに触れれば触れるほど、

己が生きていくうえで

幸せになる方法を

掴みとれる手助けとなる。


「僕だけだとやっぱり

 教えてあげられることに

 限りがあるんです。


 だから、皆さんにも

 お願いしているんです。

 シロさんに

 彼女に

 たくさんのモノを

 与えてほしいと」


イデルはシロを見る。

シロは相変わらず

感情がないような顔を

向けている。

しかし、その目は

イデルの目をじっと

見つめている。


「俺はそれでもかまわないが、

 それによりここより良い場所を見つけ

 君の元から去ってしまうかもしれないぞ。

 それでもいいのか?」

B&Bの問いかけに

イデルは間を置かずに答える。


「かまいません。

 彼女にはここじゃない

 ところにも行ける

 力があるんです。

 

 …でも、力の使い方を

 知らないままでは、

 生きることは難しい。

 だから、いろんなこと

 知って欲しいんですよ」


若干の静寂。

その言葉を静かに聞いていた

B&Bが声を出す。


「OK、わかった。

 やっぱり、君たちは面白い。

 協力するよ」

そういうと右手を差し出した。

イデルもそれに答えるように

右手を出し握手をする。

それによくわかっていない

シロが右手を重ねた。

それを見た二人は

同時に噴出した。

笑い声が部屋に響いた。


「長居をしてしまったね」


B&Bは立ち上がる。

軽く会釈をして

イデルとシロに話かける。

「これからもよろしくお願いする。

 Ms.シロ、Mr.イデル」

その時イデルはこう返した。

「”Ms””Mr”は付けなくて

 いいですよ。

 僕らもそのほうが楽ですし、

 

 フランクにいきましょう」


その言葉にB&Bが笑う。


「ああ、よろしく頼む

 シロ、イデル」


そう言い直したB&Bに


「また

 会う

 B&B」


シロが言葉を口にする。


「まず、その話方から教えていこう」

「助かります。

 僕が教えてもなぜかうまくいかなくて」

「楽しみが増えた。他に何を教えよう。

 本当に楽しみだ」


B&Bのくぐもった声でも

わかるぐらいに嬉しさが

こぼれ出ていた。

そうして、B&Bは

二人の家を後にする。


…そうして数日後、町には

『電気』がもたらされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る