第19話 混色

「シロさん!!」

あまりの光景にイデルは叫んだ。

このままでは彼女は死んでしまう。

そう思った。


シロが後ろ手にB&Bの腕を掴んだ。

さすがのB&Bも驚いた。

振りほどこうとするにも

びくともしない。

―どういうことだ…。

その疑問はシロの顔を見て理解した。


『琥珀色』の瞳

前に戦ったボンゴの、

オーガの瞳


―まずい、この体制は…。

B&Bが気付いた時には遅かった。

シロはB&Bを投げ、

地面に叩きつけた。

B&Bの画面にノイズが走る。

「さすがに…、これはきつい」

か細い声で呟く。

B&Bをシロが見下ろしている。

『琥珀色』の瞳は一瞬、

白く光ると『青』に変わる。

手には青い閃光。


―これは終わったな。

B&Bは覚悟を決めた。

『死』の覚悟を。

シロは拳を閃光とともに打ち出した。


しかし、それはB&Bの顔の横に

突き立てられた。

シロは拳を抜くと呟いた。

「終わり」

シロの体は煙のように揺らめくと

元の姿に戻っていた。


「シロさん!」

イデルはシロの体をペタペタと触る。

驚いたことにケガはない。

さらに言えば、最初の段階でついていた

焦げ跡すらなくなっていた。

「一体あなた、そんな魔術を…」

イデルの問いにシロは首を傾げた。


―ああ。しばらく動けないな。

B&Bは空を見ながら、今後のことを考えていた。

「大丈夫ですか?」

イデルが話かけてきた。

「肯定か、否定かで言うなら

 否定だな」

「でしょうね。誰か迎え呼びますか?」

「いいや、自分で呼べる」

「そうですか」


一瞬の静寂があってB&Bが言う。

「わかったよ」

「何がですか?」

「彼女は君でできている」

「は?」

「彼女にとって君が『すべて』なんだ。

 彼女はちゃんと自分で決めてたんだ」

「ああ、さっきのことですか…」

イデルはさっきの言葉を思い出していた。

―君は彼女のなんだ。


「あれは、僕も考えました。

 でも、結局わかりませんでした。


 …でも、それで、いいと思いました。

 今はそれで『そのうち』ですよ」

「…ずいぶん楽観的だな」

B&Bが軽く笑った。

画面には空が映り、

それが夕日の色に染まりかけていた。

「もう、帰ったほうがいいんじゃないか?

 もうすぐ夜だ」

「…わかりました。

 あなたのお話楽しかったですよ」

「…そうかい、ありがとう」


「イデル」

シロがイデルを呼ぶ。

体が痛むのか、

ふらついている。

すると、シロはイデルを抱きかかえた。

二人は町へ戻っていく。


「シロさん…


 お姫様抱っこは、やめて」

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