第16話 殺し合いの真意

「さて、ここで答えないといけないな。

 『なぜ殺し合いしてほしいのか?』」

B&Bが花の冠を触りながら答える。


「彼女の本気を見たい。

 そのための殺し合い。

 本気を出させるには

 殺し合いが手っ取り早いのさ」

「…それだけ?」

「そう、それだけ」

イデルは頭を傾げる。

―意味が解らない。


「死ぬかもしれないのに?

 なんで、そんな必要があるんです?」

命がなくなるかもしれないのに

平気で『殺し合い』と言う彼が

イデルは信じられなかった。

イデルの顔を見たB&Bは

少し困ったような声で話し出す。

「そんな、顔しないでくれよ。

 俺の命なんて軽いもんだよ。

 それ以上に彼女の能力は魅力的なんだ」

「能力?」

「目の前で見ただろう?

 あの能力は前例がない」


あの時シロはどうだっただろう?

『赤』から『琥珀色』

目の色が変わった。

あの細腕から

あり得ないほどの力を出した。

後は…。

何があっただろうか。


「僕はよくわかりません

 というか、あなたはどうして

 そんなに詳しく知っているんです?」

あそこには4人しかいなかったはず…

「ああ、ずっと見てたよ。

 …彼がね」

B&Bが手を上げると

小さな羽の生えた鉄の球が突然現れた。

虫のように透明な羽が2対。

鉄の球は眼球のように動く。

ゆっくりと降りていき

B&Bの手のひらに収まった。

「彼は普通風景と

 普通じゃない風景を写す

 俺はそれをすべて見た」

―普通じゃない風景って何だろう?

自分が普通であることは

イデルは十分理解している。

目の前でシロのあの姿を見ても

唯々茫然とするだけだったのだから。


「でも、これ以上彼女を危険に合わせるのは

 僕は嫌です」

強い声で、はっきりと言い切るように

イデルはB&Bに向き合い言った。

伝わったのかはわからない。

彼の画面には自分の姿が映るだけだった。


「きみは彼女のなんだ?」

「えっ」

言葉に詰まった。

自分は彼女にとって

シロにとってなんだ?

確かに今一緒にいるが、

友達、親、兄弟

一体なんだろうか。

黙ったイデルにB&Bは言い放った。

「決めるのは彼女だ。

 君じゃない」


頭にのせられた、花の冠を外し

座っていた木の株にのせる。

「シロ、俺の願い

 聞いてくれるね?」

シロはその言葉に

少し時間をおいてうなずいた。

わかっているのか、わかってないのか

わからない。


「ありがとう。

 そうだ、君はこの場から離れることを

 おすすめするよ」

B&Bはイデルに向くことなく

淡々とした口調で言った。

イデルはただうつむいたままだ。

動こうとはしない。

「まあ、動かないのも一つの手だね。

 でも、そう決めたのなら

 もう動かないほうがいい」

B&Bはシロと共にイデルから距離を置いた。


かなり、イデルから離れたところで

二人は距離をとって向き合う。

―結局、こうなってしまうのか。

イデルは遠くから眺めるだけと

なってしまった。


「それ、じゃあ始めようか」


そういった一瞬

激しい音が響いた。

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