青い男
第11話 平和な日々
シロがこの町のボスになってから早3か月。
町は少しではあるが活気があった。
あのゴブリンが町から逃げ出したと聞いた町の人々は
少しずつ外に出るようになっていた。
少ない数ではあるが、外で商売をしている者が増えた。
その品物を見にまた人が出歩く。
良い循環になっているようだ。
そう思いながら、イデルはシロとともに街を見回っていた。
「ボス!いい果物あるから持ってけよ!」
「まぁ、シロさん。今ちょうどパンが焼きあがったの。
よかったら食べてくださいな」
「ボスのねーちゃんだ!あそんでー!!」
シロが町を歩くたびに、このように人に声をかけられる。
物を貰ったりすることも多く生活は楽になった。
―しかし、くっ付いて歩いているだけの僕が、
―この恩恵をもらってもいいのだろうか?
いささか、心配になるイデルであった。
少し、歩いていると見知った顔があった。
「ボンゴさん、体調はいかがですか?」
そうイデルが話しかけたのは、
シロが倒したあのオーガだった。
しかし、前のような殺気を帯びた雰囲気はない。
むしろ、優しさあふれる朗らかな表情であった。
現在はゴブリンの毒を抜く治療の最中で、
声が出せないことと精神が不安定になる時がある。
それ以外はいたって健康でらしい。
怪力を活かして町の人々に罪滅ぼしをしているとこだという。
今は休憩中の様で自然の花畑を眺めている。
「ボンゴさん、お花好きなんですね」
ボンゴはうなずく。
そして、花を一つ摘み取ると匂いを嗅ぐ。
とても幸せそうな顔だった。
それを見たシロはおもむろに花を摘み始めた。
一本ではなく、かなりの数の様だ。
イデルとボンゴはそれを不思議そうに見つめた。
数分後。
シロは器用に花の冠を編み上げた。
それをシロはボンゴの頭にのせる。
ボンゴは喜んでいるようだ。
ほほえましい光景であった。
―ああ、なんて平和な日なんだ。
イデルは幸せで涙を流した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます