第9話 おはよう

イデルが目が覚めると自分のベットの上だった。

まだ、体が軋んで痛む。

目も眩んで周りの風景が白く見えた。


「おお、よかった。目が覚めたかい?」

イデルが目を凝らすとそこには背の低い老人のがいた。

最近、外に出るところを見ることがなかったこの町で唯一の医者だ。

医者は5つの目でイデルを見る。

頭、口の中、体を見ると口に生えた髭を動かしながら話始める。


「体の打撲は結構落ち着いたし、口の傷も治りかけているね。

 もう大丈夫かな?でも、君3日間は眠っていたからね。

 でも、無理はしないでね。彼女が心配してたよ」

「…シロさんは!彼女はどうなったんです!?」

イデルは咳き込みながら医者に問いかけた。

医者の大きな目がやさしく微笑む。

イデルの背中をさすりながら語り掛ける。

「まあ、落ち着いて。彼女は無事だよ。

 彼女にはちょっと、おつかいを頼んだんだ。

 大丈夫。すぐ帰ってくるよ」

イデルは胸をなでおろした。


「しかし、すごいねー。

 彼女にはかすり傷一つない。

 わし、いらないよ」

医者は笑って見せた。

「なら、よかった」

イデルもつられて笑った。


二人が話をしていると、寝室のドアが開く。

そこにはパンの入った袋を抱えたシロがいた。

目はいつもの『赤』に戻っていた。

「ああ、かえって来たかい。おつかい、ありがとうねえ」

医者はシロの荷物を確認する。

「言われた物、きちんと買ってきたね。えらい、えらい」

満足そうにうなずくとイデルの方を向いた。 

「そのパンは柔らかいけど、スープに浸して食べてね」

そういうと、医者は出口に向かう。

最後にシロの方に振り返り、

「この町を助けてくれてありがとう」

そういった。


シロは首をかしげるだけだった。

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