第8話 彼女は何者?
唖然とするしかなった。
イデルもゴブリンも、
どうして信じられるだろうか。
『赤』かったシロの瞳が『琥珀色』変わるのを。
彼女の細腕がオーガの腕をはじき飛ばすのを。
考えられない。
信じられるはずない。
ありえない。
そんな事実が目の前にあった。
逆上したオーガは両手を握り頭上から勢いよく振り下ろす。
地面はへこみ周辺に亀裂を作る。
シロは立った2、3歩後ろに退くだけで回避した。
そして、オーガと同じように両手を握る。
同じように振り下ろす。
違ったのはオーガの拳を地面にめり込ませたことだ。
オーガの悲鳴が轟く。
必死に自分の拳を引っ張り出そうと躍起になっている。
でも、めり込んだ拳は抜けなかった。
―何が起きているのか、わからない。
―彼女は何者だ?
イデルはただその光景を目に焼き付けていた。
1週間の間は彼女は『普通の人間の女の子』だったはず。
それがどうだろう、
今は自分の大きさの倍はある相手を負かしている。
信じられない光景だった。
オーガはやっと己の拳を抜いた。
さっきはまぐれだ。
すぐに壊す。
そんな意気込みでシロに反撃を行う。
驚いたことに、
反撃する相手は己の眼前にいた。
その刹那、
オーガは顔の側面に彼女の拳が当たり、その巨躯が吹き飛んだ。
顔面から地に落ち、オーガは動かなくなった。
少しの静寂。
それを破ったのはゴブリンだった。
「いやー、お嬢さんお強いネェ」
イデルを軽く蹴り飛ばし、シロに近寄る。
「参った、参った!俺の負けダァ!
実はあのオーガに脅されてやったんですよー。
これからはお嬢さんの下で頑張らせていただきますヨォ!」
これがいつもの手口。
強いものに取り入って手下となる。
そのあと、相手が心を許したら『毒』を盛る。
意のままに操る『毒』。
だいたいが事情を知らない強い相手を選ぶ。
そうやって間接的に強者になる。
イデルは声をかけようとするが、声がかすれて出ない。
―早く、知らせなきゃ。
せき込みながらも、必死に声を出す。
その間もゴブリンは必死に媚を売る。
「さあ、お嬢さん。助けてくれたお礼に
ご馳走し…」
言葉が終わる前にゴブリンは吹き飛んだ。
イデルやオーガ程度ではない。
地面には落ちず、遥か森の方へ吹き飛んでいった。
「は、ははは…」
イデルはかすれた笑い声が漏れた。
そして急に彼の視界は暗転した。
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