第2話 胸の赤い宝石

「なんで、こんなことになったかなぁ」

彼は頭を抱えている。

とりあえず彼女にはシャワーを浴びて

もらうために浴室に押し込んだ。

ぬるま湯しか出ないが、

無いよりはましだろう。


彼の部屋はかなり古い作りだが、

ある程度のものがそろっている。

すべてが古いがテーブルも椅子もあり、

キッチンもある。

ほかの部屋にはベットもある。

これらはすべて

彼の旧友から譲り受けたものだ。

押し付けられたような気がするが、

今となってはありがたく思う。


しかし、

あの少女はなぜあそこにいたのだろうか。

知らず知らずのうちにこの町へ来て、

追剥にでもあったのだろうか。

それ以前に


―彼女はどうしてこの町に来たのだろうか。


正直ここは 治安が悪くなってから

長いこと旅人が寄り付かない。

それどころか、街の住人もほとんど家からでない。

そのような場所に何の意図があって

やってきたのか。

彼の頭の中には謎が出てくるばかりだった。


ちょうどその時に、浴室の方から音が聞こえた。

ひたひたと近づいてくる足音も聞こえる。

「シャワーが終わったかな」

彼は音の方へ振り向く。

そこには彼女がいた。

彼の視線は彼女にくぎ付けになった。


『人間』の特徴である地肌が見える体。

肌の色は温かみのあるような白さ。

夜を写したような黒い髪。

目はまるで血のように赤い。

しかし

『人間』の特徴にないはずのものがあった。

胸の上部にある大きな『赤い宝石』

それは彼女の目と同じように

赤く、赤く光っていた。

ネックレスのように

首にかかっているのではない。

体に埋め込まれているように、

元から体の一部であるかの様にそこにあった。


彼はその宝石に目をやりながらも彼女に話しかけた。


「服着てください」

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