いやその勇者パーティを追放された善人おっさん、実はSSSSSSS級の治癒士兼召喚術師ですから! ~自分でも気づいてない能力で陰の実力者としてやり直し2週目復讐建国スローライフ~
第12話 きっとみんな幸せなリアルを過ごしているよ
第12話 きっとみんな幸せなリアルを過ごしているよ
「やっぱりそうだ......。これも、これも」
嫌な予感が的中する。
偶然......ってことはないよなこれじゃ。
しかし、誰が何のために。
なんにせよ新聞からわかるのはここまでだ。
あとは地道に足で捜査か。
でも、どこからどうやって調べたものか。
気は進まないが、ムゥにも相談してみるか。
ロクでもないことしか言わないだろうけど、1人で考えていても煮詰まるだけだ。
そう思って階段を降りていると、食堂の辺りから大人数の笑い声が聞こえた。
なんだなんだ。
近寄ってみると、ムゥを中心に人集りが出来ていた。
なにやら身振りを交 えながら達者に話しており、皆んな熱心にそれに聞き入っている。
「そこでクサナーグ男爵はヤマグート提督にこう言いました。
『お前さん、 公然わいせつならばともかく強制わいせつはよくないよ』と。
おあとがよろしいようで」
ドッ!ワハハハハ!
聴衆は大ウケだ。ジョークだか小咄だか何かでもやっているのか?
あいつにあんな特技があるとは。
話の内容がちょっと気になったが、危険な香りしかしない。
深掘りするのはよそう。
本作品はフィクションであり実在するいかなる人物・団体とも一 切関係ありません。
「待たせたなムゥ。お取り込み中だったかな」
「お疲れ様ですご主人様。いえ、丁度終わったところですので。
聴衆の皆様もありがとうございました。また会う日まで」
拍手喝采を浴びながらムゥは皆んなに一礼をする。
早速ファンが出来たのか、パンやら果物やらをどっさり押し付けられている。
人気者やなー。ルックスも相まって好感度が激アゲなんだろう。
皆んなこいつの本性知らないから .......。
「ムゥ、ちょっと相談したいことがあるんだけどこの後時間取れるかな。
ここでもいいし、宿でも取ってからゆっくり話すんでもいいけど」
一回荷物を片したいから先に宿を取りたいかなー。
なんて思っていると。
グキュルルルルル!
ムゥの腹から爆音が鳴り響いた。
「かしこまりましたご主人様。
しかし、あらゆる問題は早期認識早期解決が鉄則です。今ここで伺いましょう。
折角ですのでこのパンや果物をお茶請けにしながら聞きましょうか。
よろしければご主人様もどうぞ」
「腹減ってんだろ。いいよいいよ。なんか食いたかったら注文してもいいぞ」
まあいいか。席についてお茶を注文した。
さて、憶測混じりの話になるけど、ちゃんとムゥに伝わるかな。
俺が違和感を持ったのは、サラの村の件だった。
ちょうど流行り病が村を襲った時に魔物が襲撃するというのは、タイミングが良すぎる。
一度だけなら不運な偶然と言えるだろう。
だが、俺がこの街にいた時から、何度か似たような話を聞いた気がしたんだ。
小さなニュースにしかならなかったから、新聞を読み漁らないと気づきにくいけど。
そもそも各農村の警備体制として、そういう事は起こりにくいように設計されているはずだ。
昔は村が魔物に襲われるってのは結構あった。実際俺の故郷もそれで滅んでるからな。
でもこのベルダイン周辺の農村は、先代領主の意向で引退冒険者をそれぞれの村の用心棒として常駐することが随分推奨されたはずだ。
サラの村にも そんな人がいたな。
高齢冒険者の生活支援の意味もあって、たしか補助金も 結構出してたんじゃないかな。
それもあって、魔物の被害に遭うケースが激減したはずだ。
でもこの10 年か15年位で、またポツポツとそんな事例が出ている。
ちゃんと用心棒も いるような村でもだ。
そんな時は大抵、流行り病がタイミングよく(悪く?)」 村を襲っている。
「統計を取ってみると、偶然で片付けるには悩ましい頻度なんだ。
俺の考え過ぎならそれが一番いいんだけど。
誰かの何かの悪意が背後にあったりはしないかと思ってさ」
「考え過ぎということはあり得ません。
これは間違いなく事件です。
黒幕が存在し、悪意をもって行われている犯行です」
やけにはっきりとムゥが断言した。
「そ、そうかな。
そこまでの自信は無かったんだけど」
「はい。
今後基本的にご主人様の考えが的外れになるということは起こりません。
仮に勘違いをしたとしても、結果的に勘違いしたおかげでより功を奏したというケースしか起こりません。
日間民は失敗や回り道が大嫌いですから」
そんな理由かよ!
また日間民か!
「ご主人様はこの先の人生で全ての問題を迅速に解決し、全ての敵を華麗に 圧倒し、全ての人達から賞賛と羨望を浴び続けます。
これは神の意志です。
勝利と成功と喝采。この快感を読者に伝え続けることこそ我らが使命なの ですから」
「すげえ事を言い出したな!?」
「全ての台詞全ての地の文が最終的に快感と優越感を与えるためだけに存在 するのですから、一瞬たりとも気を抜いて頂いては困ります」
そんな無茶な。わけがわからないよ。そんなの絶対おかしいよ。
「第4話冒頭の回想シーンで登場した、幼少期のご主人様を救ってその後の 生き方に大きな影響を与えた方も、きっと終盤の大事なシーンで劇的な再会 を果たす事でしょう。今から楽しみですね」
「なんで!それを!今!言った!」
台無しだよ!全部台無しだよ!
ふざけんなよ!マジでふざけんなよ!
もうさあ、滅茶苦茶やないか。やりたい放題やないか。
「そうと決まれば早速行動開始です。
目標は2時間以内のスピード解決です。
このパンを食べたらすぐに出発しましょう」
「ちょ、ちょっと待って。流石にもう疲れたよ!
今日のところは宿を取って、調査するなら明日からにしようぜ」
「なにを悠長なことを仰っているのです。
日間民は待たされるのが一番嫌いなんですよ。
何のために1話あたりの字数を減らして毎日更新しているのですか。
あらすじで一駅感覚がどうとか訳の分からない言い訳までして」
訳の分からないことを言ってるのはお前だ!
「でも今日はやだぁ!
ぬわぁぁん疲れたもおおん!
さっきまで長旅をしてき たじゃないかぁ!お風呂入りたぁぁいビール飲みたああい!」
「むっ........」
そこでムゥは考え込むような姿勢となった。
「確かに、疲れた身体に鞭を打つというのも印象のよいものではありませんね。
日間民にはブラック企業にお勤めの方もいらっしゃるでしょう。
むしろおそらく大多数でしょう。
考えを改めました。
現実の辛さを想起させる描写をしてしまったのは私の 不徳の致すところです。
創作の世界でぐらい自由に振る舞いたいものですよね」
「よくわかんないけどすげえ酷いこと言ってないか?」
そんなことないよ。きっとみんな幸せなリアルを過ごしているよ。
「よいでしょう。
スローライフ感を獲得(ゲイン)するためにも、本日は休息 としましょうか。
よい宿を取りたいところですが、路銀の関係からそれも難しいですね。
せめてお風呂とお酒を楽しんで下さい。明日もあるので飲み過ぎないで下さいよ?」
「やったぁ!」
今夜はフィーバーだ!
ビール!ビール!
と意気込んだはいいけど、結局ジョッキ一杯でダウンして寝た。
おっさんは気持ちに体が付いていかない。
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