第3話 SSSSSSS級スキル”情けは人の為ならず”が覚醒しました

山奥の洞窟に潜むオーク達はあっさりと討伐できた。



ゴブリン共をけしかけたのが、予想以上に功を奏した。

これが人間の討伐隊だったら女性達を人質にされて、もっと苦労しただろう。



オーク達からすれば無関係のモンスターによる襲撃なのだから、人質をとっても意味がないと判断される。

むしろ全裸の女性達をあえて解放してゴブリ ン達に向けて走らせてきた。


普通ならばいい作戦だったんだろう。

ゴブリンが女を殺すにせよ犯すにせよ攫うにせよ、必ずそこで動きが止まる。


しかしこのゴブリン達は俺の完全支配下にある奴らだ。

女には目もくれず、ひたすらオーク共に突進していった。

女性達を巻き込む危険がなくなったか ら、火でも毒でも使いたい放題だ。



召喚魔術の利点は、呼び出した魔物が自分の命をなんとも思わずに特攻してくれることだな。

ここまで徹底的に自我を消すには術者と魔物の間に相当な力量差が必要だ。

それもあって俺は最弱のゴブリンばかり召喚している。



女性達は酷く混乱している様子だったが、自分達が助かった事を知ると声を 上げて大泣きしていた。

その場に崩れ落ちる人も沢山いた。

被害に遭ったのは気の毒だが、それは仕方がないと割り切るしかない。

少なくとも身体の傷は俺が癒してあげられるし、死人が出なかったのは俺倖だろう。



オーク共に略奪された食料や物品をゴブリンに運ばせながら村に戻ると、大歓声が待ち構えていた。

涙ながらに抱き合う夫婦、親子。


助けてあげられて よかった。しみじみそう思った。



「さて、と。まだまだやることはあるな。

土木ゴブリン召喚×20!」



俺が魔術を発動すると、黄色いヘルメットを被ったゴブリン達が出現する。

それぞれノコギリやスコップ、ツルハシなんかを持っている。



「さあお前達、破壊された村を建て直すぞ!

足りない資材は後で採取ゴブリンに森から調達させる!

さらに料理人ゴブリン召喚×10!炊き出しの準備だ!

村人のみんなに元気の出る食事を用意しろ!」



そう言いながら、俺は魔法袋から食料を取り出す。

計画性の乏しい勇者達のために食料品の仕入れ、管理を担っていたが、「そんな安物食わねえよ!高級食材持ってこい高級食材!」とのお言葉で放棄されそうだったところをとっ ておいた食料だ。



追放された時に差し出さなかったけど、必要な人たちに行き渡ったからいいよね。

大釜で大量に作られた豚汁がみるみるうちに無くなっていく。



「ウメェ!ウメェよ!ちくしょう箸が止まらねェ」


「やっぱり豚汁は最高だぜ!」


「冷えた体が温まりますね」



みんな喜んでくれてよかった。


そうこうしている内に大型の避難所が完成した。

壁と屋根があるだけで、床はゴザ敷きだがとりあえず雨風を凌ぐには十分だ。


皆の家を建て直すには何日かかかるだろうからな。

それまではここにいるつもりだと村長に話したら、涙を流してお礼を言われた。



「聖者だ・・・・・・聖人だ!いや、神だ!」


「もはや概念・・・・! 英雄という概念が具現化した存在.....!」


「感謝......!圧倒的感謝......!」



酒が入って妙なノリになる村人と一緒に、俺も楽しい酒を酌み交わす。

上等 な酒はオークに奪われて飲まれちまってたが、あったよ!村長秘蔵のどぶろくが!でかした!



村の広場で篝火を焚き、皆思い思いの時間を過ごしている。

......なんか久し ぶりだなー、こういうの。

アレスト達といたころは、効率的なレベル上げと、国王や貴族の依頼に応えてばっかりだったからな。


魔王を倒すため、各国との協力関係を築くためと思って必死だったけど。



そういえば昔はずっとこんな感じで過ごしてたな、なんてしみじみ過ごしていた。



「ヒャッハー!最高だぜ!おっさんマジ最高だぜ!」


サラの弟、エドが赤ら顔で跳ね回ってはしゃいでいた。

おいおい、誰だよあんな子供に酒飲ませたの。


そう思ってそちらを見ていると___



ガシャン!

足をもつれさせたエドが篝火に手から突っ込んだ。


大変だ。慌て て俺や周囲の大人が駆け寄る。



「痛えええ!痛ェよお!」



「なにやってんだエド!ああ大変だ!腕がこんなに火傷してる!」


「大丈夫大丈夫。ほらエド、俺が治してやる」



すぐに回復魔術をかけてやると、エドの火傷は痕も残らず完治した。

さらに 湧き上がる歓声。


都会だとこの治療だけでも随分な値段を請求されるだろうからなぁ。

俺は取らないけど。



酔いが覚めて恐縮しきりのエドを慰めていると、村の皆が片付けを開始した。

ちょうどいい頃合いかもな。俺も寝させてもらおう。



村長が自宅の賓客用の寝室を使うよう申し出てきたが、それは体力の弱った女性や子供に回してくれと断った。

俺は避難所で雑魚寝でいい。



--レベルが20に上がりました--



おっ、さっきの治療でちょうど経験値が貯まったのか。

こりゃあエドの奴に甘いものでも奢ってやらなきゃな。



--条件を達成したことにより、SSSSSSS級スキル”情けは人の為ならず”が覚醒しました。

脳内にガイダンスがインストールされます--



......ん?

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