Ⅰ-3 形式的意味の民法とその成立史

 一般に私法の一般法というとき、それは実質的意味の民法を意味するものである。法律としての民法典のことを、形式的意味の民法とも呼ぶ。以下、日本の法令における民法典とその成立史を概観する。


 明治時代の初め、民法典を編纂しようという動きが本格化した。当時、最も名高い民法典であったフランス民法典(ナポレオン民法典)を参考に起草され、1890年に公布されてのち、1893年から施行されることとなった。しかし、忠孝を尊ぶ当時の日本人には、フランスの民法典はあまりにも自由主義的に映り、その内容をめぐり、賛否両論が巻き起こり、「民法出でて忠孝亡ぶ」などと、日本の良き伝統文化が亡ぶのではないかと嘆く者も多く居た。この旧民法は、民法典論争の末に、施行は無期延期となった。


 しかし、それでも日本の近代化のためには、民法典は必要である。そのため、当時の最先端であったドイツ民法典の草案、フランス民法典、日本の慣習を参考とした、まったく新しい案を作成して公布した。こちらは無事に1898年から施行され、これは一般に明治民法と呼ばれている。


 条文の整理の方法は、前者の旧民法はフランス民法式のインスティトゥツィオネン体系であり、後者の明治民法はドイツ民法式のパンデクテン体系に概ね従っている。パンデクテン体系の大きな特徴として、物権と債権とを区別してそこに総則を置く、という点が挙げられる。


 なお、1947年に、民法典の第4編 親族と、第5編 相続は、戦後の日本社会の男女平等化や、家制度の抜本的改革を取り入れるために、大改正が行われた。こうして、現在の民法典にかなり近い内容の民法典が出来上がった。


 その後、民法典は、社会の進展に伴い、何度も改正が繰り返され、現在に至っている。

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民法Ⅰ(民法総則) まろうソフトウェア工房 @marou_software_kobo

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