Ⅰ-2 民法の三大原則

 一般に、民法には3つの大原則があるとされる。大きく5つある原則のうちどの3つを3大原則とするかで、いくつかの学説がある。まずは、5つある原則を1つずつ、見ていくこととしよう。また、これらは民法、したがって私法全体の中心をなす原則であって、例外的な法令もまた有効に存在することに注意を要する。



A 権利能力平等の原則

 私法上の権利および義務の帰属主体となり得る資格は、自然人もしくは法人といった人を単位とするという原則である。

 例外的な法令の例:現行法令では、外国人は、日本の船舶や航空機の所有が制約されている。



B 私的自治の原則

 私法上の権利および義務は、人という単位が、自由意思に基づき、自主的かつ自律的に設定するという原則である。

 例外的な法令の例:意外にも、民法第1条の基本原則が私的自治の原則の例外のもっともたるものである。


// 民法第1条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

// ② 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

// ③ 権利の濫用は、これを許さない。


 B-1 所有権絶対の原則

 私的自治の妥当するところにおいては、典型的な物権関係である所有権もまた絶対であるとされる。


 B-2 契約自由の原則

 私的自治の妥当するところにおいては、典型的な債権関係である契約もまた自由に締結できるとされる。



C 過失責任の原則

 加害行為と発生した損害の間に因果関係がある場合でも、加害行為をなした者に故意・過失が不存在の場合には損害賠償責任を免れるとする原則である。

 例外的な法令の例:自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)制度などに見られる。



 学説には、大きく分けて、

A、B、B-1 の3つを私法の三大原則とする学説

B-1、B-2、Cの3つを私法の三大原則とする学説

BとB-1の2つを私法の二大原則とする学説

……などの説がある。つまり、これらの学説を整理すると、BやB-1にAやB-2およびCを加えるかで、見方や考えが異なるのである。

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