民法Ⅰ(民法総則)
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Ⅰ-1 民法とは何か
民法とは、私法という法分野における一般法である。では、一般法とは何であろうか。また、私法とは何であろうか。
まず、一般法とは、何か。一般法とは、特別法に対する概念である。例えば、民法と商法との関係では、民法が一般法であり、商法が特別法であるため、商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、商法の定めるところによる。商事に関し、商法に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる、こととなる。
なおここで、一般法と特別法との関係は相対的なものである。ある法からみて特別法である法律も、別の法律からみたら一般法である場合がある。例えば、民法からみて特別法である商法も、手形法からみて一般法である。民法は私法体系において最も一般的な法であり、私法体系において民法の一般法は存在しない。民法よりも一般的な法は存在しないというその意味で、民法を「私法の一般法」と呼ぶことがある。
では、私法とは何か。古代ローマにも存在していた数々の法制度は、現代日本などの民法にも取り入れられてはいる。しかし、公法に対する意味での私法が成立するのは、ナポレオン民法典(1804年)においてである。もっとも、当時においては、いまだなお被治者相互の関係を定めたルールであり、そのような関係における積極的なアクターとしての市民による市民社会概念の登場はヘーゲルの『法の哲学』(1821年)を待たねばならなかった。それでもアクターである市民の幸福は公的な幸福を意味し続けた。個人の私的な領域という観念が本格的に登場するのは、1890年頃のアメリカでのことである。こうして、私法および私権の観念は、一個人が自分自身の幸福を追求していく法や権利へと深化してきたのである。
もっとも、このような、個人が一人放っておいてもらう権利は、極端化すれば、物質面では貧困を、精神面では孤立を生み出しかねない。そこで、民法に対する修正として社会法という法領域も作られた。社会法の思想の含まれた憲法として代表的なのはワイマール憲法(1919年)である。
現在では、この民法は単に商化してきているだけではなく、実は、社会化もしてきているのである。日本においては、民法などの私法は、社会化しても、なお、個人の自己決定権を尊重し、私法の社会法に対する価値序列的意味での優越的地位を認める立場が一般的である。民法を理解するにあたり、そのことも理解しておかねばならない。
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