No.047 まつろわぬカミ



 前回までのあらすじ!

 僕は和紗と一緒に近くのイタリアンに来ていた。

 そこで和紗に声をかけてきたのは1年A組の生徒で財閥のご子息。

 しかも金で解決させようとしてるしもう面倒だ。

 僕の平和はいつ訪れるんだー(早口で)。


 と、アニメっぽい始まり方は置いといて、


「僕はお金には困ってないから」

「はぁ、爺や」


 北星ほくせいは溜め息をついた後、執事らしき人を呼んだ。


「今俺が命令すれば君の家族は死ぬことになる」

今僕が本気を・・・・・・だしたら君は・・・・・・地獄を見る・・・・・ことになる・・・・・


 『言霊』と『殺気』の特別2段サービスだ。

 それは「爺や」と呼ばれた老人にも向けておく。

 だってこの老人さっきから殺意剥き出しなんだもん。


「大丈夫? 急に尻餅なんてついて」


 言霊と殺気によって尻餅ついた北星に、僕は立ち上がって手を差し伸べる。

 もちろん僕の手なんて掴まずに立ち上がる北星は、


「今何をした!」

「なんにも。お店にも迷惑になるからその辺の方がよくない?」


 確かこのお店は北星が関係なかったはず。


西曜せいよう家が許可しますよ」


 そうそう、西曜家がここの管理者だ……マジかよ。


「ありがと、胡桃くるみ


 北星は席にいる1人の女の子にお礼をした。

 って事は、4大財閥の1つ、西曜家のご令嬢なのか。


「はぁ、なら明日相手をするから大修練場にね」

「明日は、名を聞いてないが君が可哀想だから夏休み明けでいいよ。せいぜい準備するんだな。それと、せめてその娘は置いていってあげろ。君の都合で連れ回すのは可哀想だ」

少しは黙れ・・・・・人間・・


 出し惜しみすることなく本気で脅す。

 お店はギシギシと音をたてて揺れて、お皿は急に震えだして割れ始め、ガラスは粉々に砕けちり、停電を起こす。


「行こっか、和紗」

「う、うん」


 そのまま個室のあるお店に入って夜ご飯にする。


「ちょっとやり過ぎじゃないの?」

「大丈夫でしょ、西曜家が許可出してたし」

「変にお金請求されても知らないよ?」

「そしたら和紗が一緒に働いてくれるよ」

「えー、どーしよっかなー」


 楽しく食事をして、寮に帰った。



 ※



 富士山ダンジョン



 ~~61階層~~


 今までの階層は迷宮って感じだったけど、ここからは樹海って感じだ。

 霧が濃く視界を白く覆う。

 気温も少し冷たく少し薄暗い。

 まぁ吸血鬼だから気にならないんだけどね。



 それから1週間歩き続けてどうにかボス部屋までたどり着くことが出来た。

 肉体的疲労はないが、精神的疲労は大きかった、特に斗駕とうがが。


「今日はここで10時間くらい休憩してからボスに挑もう」

「ありがとうございます」


 斗駕にお礼を言われた。

 そんなに疲労していたのだろう。


 交代で仮眠をとって10時間経過する。


「そろそろ行こうか。ボスは60よりは弱いと思うから」

「葛さま、こちらはローザスからです」

「これって、魔法収納袋?」

「はい、それを4つです」

「ありがとう」


 これで内容量が50kgになった。

 相当量入れる事が出来る。


 ボスはやっぱり60階層よりも弱く簡単に終わらせる事が出来た。

 それどころか、40階層よりも簡単なような気がしたのは気のせいかな?



 ~~80階層~~


 順調に、順調に1週間でここまで来る事が出来た。


「なんか簡単になってない?」

「それはレベルが上がってるからだと思います」

「なるほど、流石セバス」


 ダンジョンカードを見ると、Lv.106→Lv.195まで上がっている。

 他のスペックも結構上昇してるから、幻獣種を倒したのが大きいのだろうな。


「ここも流れでいくと幻獣種だから気を抜かないようにね。特に今までよりも強いだろうから。和紗、大丈夫? 疲れてない?」

「うん、大丈夫だよ」


 みんなにも確認するが問題無さそうだからボス部屋へと足を踏み入れる。


 ビュッ、という突風と共にボスが、風神と言えばわかりやすいか……?

 それだけではなかった。

 雷神と呼ぶに相応ふさわしい姿の幻獣種まで現れた。


「2体の幻獣種。黒夜叉」


『神に歯向かう者』

『神に従わぬ者』


 その言葉と同時に後ろから強い気配を感じて振り向いてしまう。

 そこにいるのは1人の男?

 人間ではなく吸血鬼でもない、はたまた他の種族でもない何者かがそこにはいる。

 ただ僕たちには敵対心が無さそうに見える。


『まつろわぬ神』

『ここで始末する』


 新しい、僕が考えるにこの男、「まつろわぬ神」は味方としての幻獣種なのだろう。


「陽法 翠の太刀 飛雲」

『邪魔をするな、人間……?』


 僕は風神の方に斬撃を放つ。

 風神はその斬撃を防ごうとしていた。

 防ごうとしていたが、今の発言からわかる通り手が途中で止まり片腕を斬り落とした。


『よくも、よくもに、人間』


 少し戸惑っているのが面白いな。


「なかなかやるんだな」

「あ、ありがとうございます」

「俺も負けてられないな。流星槍りゅうせいそう


 魔法の一種なのか、魔力眼で見ると天空に光輝く槍がいくつも出現し、それが風神雷神目掛けて飛来する。

 風神は片腕を無くして上手く力が出せないのか無様に当たりまくるが、雷神は、


 ――――ドゴーーン


『小賢しいぞ、まつろわぬ神』

「俺には名がある。天津神あまつかみ


 天津神って確か星の神様とかそんなだったっけ?

 まぁ、いいや。


「陽法 紫の太刀 冥灰道」


 空間を抉り取る斬撃が雷神目掛けて飛ぶが、


『さっきから小賢しい、人間擬きが。フンッヌ』


 いつの間にか僕の目の前まで距離を積めていた雷神、その拳には雷を纏わせていて雷神として相応しいだろう。

 僕は咄嗟に腕をクロスにして防御体勢をとるが、後ろから思いっきり引っ張られて、


「よくやったな。だが、俺に任せとけ」


 雷神の拳と合わせるように天津神は剣を突き刺した。

 その剣は腕を貫通してそのまま心臓部まで貫き雷神を倒してしまった。


「久しぶりに楽しかったな。上で待っている」


 そう言い残して天津神は消えてしまった。

 「上で待っている」、つまりそういう事だろう。


「圧巻だった。葛くんよく動けたね」

「えっ?」

「私は体が動かなかったもん」

「申し訳ありません。私も体を動かせず」


 和紗含めて全員動けなかったようだ。

 こんな所にも吸血鬼の階級の差があるのかと染々感じた。


 さて、敵は、ボスは幻獣種だったから武器がもちろん落ちてる。

 それも2つ。

 風神雷神の2体だったから当たり前だが、なんだか得した気分だ。



 ※



 まずは風神の落とし物から。

 [風神の風袋かざぶくろ]という名で見た目はただのボロい袋。

 能力は〔固有能力:風穴かざあな〕で、弱い敵などを吸い込み殺す事が出来る。

 ただし1回吸い込まれたら出られない、出せないから魔石の回収は出来ないのが難点か。

 でもGの退治にはいいかも。


 次に雷神の落とし物。

 [雷神の小鼓こづつみ]という名で普通に小さな鼓で意匠は中々の物。

 能力は〔固有能力:鳴る子〕で、鼓を叩いて鳴る音の範囲に瞬間移動出来ると言うもの。

 一々叩くのは面倒だから使わない可能性が高い代物だ。


 2つとも魔法収納袋に仕舞っておく。


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