No.045 鑑定ハンザイシャ



 富士山ダンジョン



 ~~40階層~~


 ボス部屋前には相変わらずの人の多さ。

 まだ中々勝ててないのだろうな。


「あっ、あのー」

「はい」


 そんな事を考えながら歩いていると1つのパーティーに声をかけられた。

 斗駕さんが。


「申し訳ないのですが、俺たちのパーティーを一緒に連れてってくれないでしょうか?」

「どういう事ですか?」

「俺たちも一緒にボス部屋に入れてほしいんです」


 その言葉を聞いた周りは一斉にこっちを向く。

 そして雪崩のように押し寄せてきて、


「俺たちもお願いします」

「金、金を払うからそんなパーティーよりも俺たちのパーティーを頼む」

「こっちは女や男を出す。なんなら武器だってやるから」


「私に言われても判断出来ませんよ」


「えっ、パーティーリーダーじゃないのか?」

「1番リーダーなような気がしたのに」

「なんだよ、リーダーじゃねぇのかよ」


「葛さま、どうしますか?」


 んー、ここはどうするべきか。

 別に一緒でもいいけど対価を貰うべきだよな。

 けどお金には困ってないし、武器もだし女とか興味ないって言うか和紗で十分。

 そもそも和紗が可愛いし浮気するつもりはない。


「まぁ、いいですよ。それでどうすればいいんですか?」

「葛さま、ここから4つのパーティーを選んでいただいて、そこから分ければ問題ありません」

「わかった。じゃあそこと、そこと、そこと、そこ!」


 適当に4つのパーティーを選んでから分ける。

 僕は全てのパーティーリーダーと一緒に。

 他のみんなは各パーティーに和紗たちが入る形をとる。


「じゃあ先に行くねー」


 僕の仮初めパーティーから最初にボス部屋に入る。

 するとボスは出現せずに進むことが出来た。



 ~~41階層~~


 他のパーティーが来るまで待ってないといけない。


「20階層で幻獣種が出たと聞いたんですけど本当ですか?」

「あー、あれか。あれは凄い硬い亀だったやつか」

「亀、ですか。ちなみにどんな武器が落ちたんですか?」

「盾だってよ、盾。なんでも表と裏があって片方は物理耐性で片方は魔法耐性らしい。強い盾だよな」


 面白い盾だな。

 けど表と裏って普通に使いにくくないかな?


「お待たせいたしました、葛さま」

「うん。そんな待ってないよ、セバス」


 最初はセバス率いるパーティーのようだ。


 その数分後、質問攻めにあっている鈴華さんが到着した。

 どうやらパーティーメンバーに色々な質問、特にアンな事やコンな事を主に聞かれてたらしい。

 やっと解放された喜びから飛びついてきたが頭を押さえて事なきを得る。


 そのまた数分後、他愛ない会話をしながら斗駕さんが到着した。

 あれ? 和紗が最後なのかな。


「あっ、さっきのパーティーの1人がお手洗いのようなので先に、と」

「……なるほど」


 嫌な予感に嫌な展開。

 どうして和紗が最後になってしまった。


「あれ?」


 よく確認してみると1人足りない。

 それも和紗と一緒に来るパーティーのリーダーが、だ。


 僕は急いで40階層のボス部屋まで戻る。



 *



 富士山ダンジョン 40階層。

 そこにいる1人の吸血鬼と5人の下衆な笑みを浮かべた男たち、それとそれを影で見ている天神族。


「こ、れは?」


 和紗は自分自身を縛っているロープをほどこうとするが力が入らず地面に倒れ込む。


「それは特別なロープでな。力を入れられなくするんだよ。抵抗なんてされたら厄介だからな」

「兄貴、今楽しみませんか?」

「いや、ダメだ。あの鬼灯ってヤツや他の仲間がいつ来るかわかんねぇ。早く仕舞ってずらかるぞ」


「きゃぁ」


 たまたまだとしても悪意があったにせよ許されない。

 1人の男が和紗を担ぐ時に胸をさわってしまった。


「拘束、拉致。痴漢、窃盗、殺人」


「な、なんだよお前。チッ、獲物が増えた」

「よっしゃ」

「お嬢ちゃん大人しくな」


「えいっ」


 そんな間抜けな声と共にドスッ、とテラを捕まえようとした3人は心臓を一突き。


「まずはその娘を還してもらうよ」

「お前の娘じゃねぇだろ」

「それは友達だ。えいっ」


 和紗を担いでいた男も心臓を一突きされ息絶える。

 残るはパーティーリーダーただ1人。


「なんで邪魔すんだよ。そうだ、お前の命で払ってもらおう。逃げんなよ、嬢ちゃん」

「殺人、恐喝、拉致監禁。窃盗、詐欺、動物虐待」

「な、なにを言ってんだよ。し、死ねぇぇ」

「えいっ」


 最後も心臓を一突き、それで全員片付いた。



 *



 40階層のボス部屋に戻るとそこは地獄と化してた。

 なぜかそこにはテラがいてパーティーリーダーを殺した所。

 和紗は床に倒れて動けないのか?

 目が合うと嬉しそうにして、その瞬間ロープははち切れた。


「葛くん」

「大丈夫、和紗」

「うん、なんとか」

「テラが助けてくれたのか」


 テラはなんでここにいたんだ?

 そもそも和紗はロープを切れるならなんで抵抗しなかったんだろう?


「あっ、やっぱり鬼灯もいたんだ」

「テラはなんでここに?」

「ちょっとここのダンジョン報酬が欲しくてね」

「なるほど、ライバルって事か。それでパーティーメンバーは?」

「死んだ」

「……殺したの間違いじゃなくて?」

「いや、死んだ。それだけ」


 本当にそれだけかな?

 まぁ、テラがそう言ってるんだからそうなのだろう、僕は信じないけど。


「テラ、一応殺人だから警察には行った方がいいよ?」

「必要ない。僕は神の使徒で僕がしてるのは殺人ではなく断罪。僕は先を急ぐから」


 それだけ言い残して行ってしまった。

 さて、一応無事に和紗が戻ってきてよかった。

 てか、


「流石に歩きにくい」

「ご、ごめん」


 腰に抱きついてた状態から裾を申し訳程度に掴んでいる。


 41階層に戻って各パーティーに戻る。


「大丈夫でしたか? 葛さま」

「うん。テラって娘が殺ってくれたからね」

「テラ、ですか?」

「そう。ここを通ったと思うけど?」

「葛さまが戻る前は誰も通ってません」


 どういう事だ?

 テラがここを通ってないのって他の道があるということかな?

 それとも姿を隠していたか。

 でも普通は気がつくよな。

 もしかして殺人しまくってたからレベルが上がり過ぎてるのかな?

 手をつけられなくなるのは厄介だな。


「大丈夫? 葛くん何か悩んでる?」

「ん、和紗。大丈夫だよ。ただちょっとね」


「葛さま、ボス部屋を見つけて参りました」

「ありがとう、鈴華さん」


 考えようとしたがもうボス部屋についてしまったようだ。


「ここは40階よりは弱いと思うけど油断しないようにね。ってそんな死なないだろうけど」


 そう言ってボス部屋へ足を踏み入れる。



 ボスは黒騎士と呼ばれる魔物で絶対剣では勝てないとされている。

 それほど剣術の腕が高く物理耐性が高いのだ。

 まぁ、聖属性に弱いからすぐに終了したのは言うまでもない。



 ~~60階層~~


 基本的に40階層よりはどこも少し弱い感じで、まぁ、楽な攻略だった。

 そして60階層。

 流れ的にはここのボスは幻獣種のはずだ。

 気を引き閉めないと、いつまでたっても決着がつかないなんて事もあるかもしれない。


「まだ上は長そうだけど頑張ろー」


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