No.044 関係 カンテイ



 富士山ダンジョン。

 そこは1階層ごとにボスを倒さないと次に進めない仕様になっていて、そのボスがおかしなくらい強いというのが事前情報。

 それと行ったことある階層ならボス部屋を通ってもボスは出てこないらしいから安心だ。

 今現在の最深階層は40階となっていて、ここのボスで1000人は下らないだろう数亡くなっている。



 ~~1階層~~


「目標は現在の最深階層40階に行くこと」


 まずはそこまでたどりつかないといけない。


 1階層は特になにか大きな事件など起きずに順調に進むことが出来た。

 ボスは大量のスケルトン軍団+金に輝く1体の大きなスケルトン。

 結果は圧勝。

 セバスチャンと鈴華さんは当たり前のように強く、それは納得だ。

 斗駕さんは銃を、拳銃を使いこなし敵をほうむっていたのは驚きだった。

 何でも斗駕さんはゲームを作る会社にいてVRMMOと呼ばれるジャンルを作っていたらしい。

 そこで主に銃器を使う部署で練習したのが今に役立っているらしい。

 なんとも世界は面白いように回っている。



 ~~40階層~~


 一気に進み最深階層40階。


 問題なく進めたし、1階層ずつテンポよくここまで来た。

 だからこうして40階から説明を開始する。


 さて、ここについてからみんなの(他のパーティー)の士気は嫌なくらい低い。

 なんでも現在1位のパーティーとレイド作戦(色々なパーティー合同でボスを倒す)をしようとしたところ、1位のパーティーのリーダーの武器が無くなっていて参加出来ないとドタキャンが入ったからだ。


 さて、その1位のパーティーリーダーはもちろん姫山ひめやま十蔵じゅうぞうの事で、姫山快斗かいとのお父さんである。

 そもそも今まで気がつかなかったという方が驚きだ。

 いや、それだけ素手でも強いという証明にはなっているのか。


「どうしましょうか? 私たちだけでも行きますか、葛さま」

「ねぇ、斗駕さん。お願いだから“さま”はやめてよ」

「出来ません!! 私を吸血鬼にしてくれた恩人。更には給料として魔石を貰いましたが、換金したら今までの給料の倍にはなります。そんな方を呼び捨てだなんて出来るわけありません。それに私こそ“さん”付けは申し訳ないのでやめてほしいくらいです」


 ダメだ、斗駕さんに“さま”と呼ばれると周りからの目が痛いのに気がついてない。

 セバスは見た目が、背があれだけどなんか動きとか含めて執事って感じが強いからなれたし、鈴華さんはなんか、うん。


「葛さま、ボスに挑む手続きをして参りました」

「はやっ。てか、いつの間に!」

「斗駕さんと談笑している時です」


 そっか、だから話している途中から色んな人がこっちを蔑む目線を向けてたのか。

 多分じゃなくて絶対セバスの見た目のせいでナメられてるやつだな。


「よぉ、兄ちゃんたち。今からボスに挑むんだろ? そこの嬢ちゃんたちは置いてけよ。危ないからな。ついでに可愛がってやるから」


 またもチンピライベント発生だ。


「和紗、鈴華さん、無視していいから」

「始末いたしましょうか?」

「大丈夫だからね、セバス」


 セバスは戦いが好きみたいだな、うん。


 僕たちはそのままボス部屋に入る。

 その時に一緒に入ってきた「魔法の目」を全て潰してからボスに向かい合う。

 ここで1000人以上殺してきたボス。

 それは、


「幻獣種か」


 そこにいるのは蒼く燃える炎を纏った角のはえた馬、ユニコーン。

 ユニコーンと言っても背丈は3階建の家くらいの大きさで、周りには「火の子」と呼ばれる子供くらいの火の魔物が沢山いる。


 ここで魔物種と幻獣種の違いは主に歴史に残っているか否か。

 それと能力。

 能力は段違いに強く、それでいて魔石ではなく武器や防具を落とすとされている。

 その武具はダンジョン報酬と同じくらいの価値があり高値で取引される代物。


「葛さま、たしか20階層でも幻獣種が出たと聞いたような気がします」

「なるほど、納得だ。じゃあ僕があのユニコーン倒すから周りをよろしく」

「「「ハッ、仰せのままに」」」


 和紗以外はそんな返事を返す。

 それを悪くないと思えてきた自分が嫌になる。


「黒夜叉。さて、ユニコーン」

『我は蒼角そうかく。全てを燃やし尽くす者ナリ』

「陽法 黒の太刀 断絶」


 巨大な丸太のような首を空間ごとバッサリ斬り落とす。

 斬れたは斬れた。

 けど斬れていない。


「炎で元に戻るのか」

『我に攻撃は効かぬ。我――――』

「――――陽法 紫の太刀 冥灰道めいかいどう


 灰すら残さない技、空間ごと蒼角を根こそぎ攻撃したつもりが思ったよりも早い動きで避けられすぐに回復されてしまう。

 ここまででわかったこと。

 斬り落とされても落ちた方が炎と化し元に戻る。

 もし残ってないと少し時間がかかるが炎がはえて元に戻る。


「倒す方法は2つ。1つ、跡形もなく消し去る。2つ、斬ったら隔離する……それでいこう」

『どうした? もう来ないのか? なら――――』

「――――陽法 紺の太刀 戯れ」

『し、死ねぇぇぇぇ』


 言葉を遮られたのが余程気に障ったのか真っ直ぐこちらに向かってくる。

 そして不可視の斬撃により斬り刻まれて、


「結界陰法 空絶血界くうぜつけっかい


 蒼角の破片は全て空間ごと結界に閉じ込めた。

 これにより回復する事も出来ずに潰すことができる。


『おのれ、おのれ、おのれー。我は、我はま……』


 その言葉を最後に蒼角は消えた。

 それに伴い周りにいた「火の子」たちも消えてしまった。


「ふぅ、片付いた」

「お疲れさまです、葛さま。こちらを」


 水の入ったペットボトル、うん、普通に美味しい。

 さて、


「これが幻獣種の武器か」


 ボス部屋のちょうど中央、そこにランスと呼ばれる槍が刺さっている。

 僕はそれに近づき手に持つ。

 それだけで破格の強さだとわかり、後は能力の鑑定をしたいな。


「よし、出るか」


 ボス部屋を出ると一斉に視線が集まる。


「勝った、のか?」


 誰かが言った言葉、それをセバスが答える。

 かと思ったが、


「行きましょう、葛さま。ここにいては面倒な事になりかねません」

「わかった」


「おい、勝ったのか教えろよ」

「どうやってあんなヤツに勝ったって言うんだ」

「お嬢さんたちー。俺のパーティーに入らないかー。夜も昼も楽しいことしようぜー」


 セバスに連れられてダンジョンを後にする。



 ※



 魔石の換金をしてもらい、斗駕さんはホクホク顔になっている。

 他のみんなも魔石を換金してお金に変える。


 そして本題のこの武器についてだ。


「鑑定をお願いします」

「はい。こちらは何階層のドロップ品ですか?」

「40階層です」

「すごいですね! フムフム」


 すぐに鑑定は終わり武器の能力がわかった。

 〔固有能力:陽炎かげろう〕と〔火の精霊〕と言う能力。

 〔固有能力:陽炎〕は1度だけ怪我を無効化するという、インターバルは30分。

 〔火の精霊〕は火属性の魔法の威力が上がるというもの、これは常時。


「こちらはお売りになりますか?」

「いえ、大丈夫です」


 何かの時に使えるかもしれないから魔法収納袋に入れておく。

 これで[神樹の枝]と[ロップランス]で1kg圧迫されている。

 もっと沢山入るのが欲しいから作ってもらおうかな。


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