No.032 金次第のツヨサ
伏見稲荷大社横 ダンジョン
~~32階層~~
そろそろ危ないじゃすまないくらいになってきた。
「うん、そろそろだね。誰が助けに行く? あのクズを」
「て、テラさん。流石にあったばかりの人にクズはよくないんじゃない?」
テラのクズ発言に対して怒った
もうそれはそれはお怒りでフンーフンー鼻息が凄い。
「なんで?」
それに対してテラは何が悪いのか全くわかってない様子。
それどころか因縁つけられた事に怒っている感じだ。
「な、なんでって初対面で快斗くんの何がわかるんですか」
「わかるよ。だってクズだもん。僕がわざわざ説明した方がいい? でもあそこの……人に聞いた方がいいよ」
テラは僕の事を指さしてきた。
人って言えないのは雰囲気で人間じゃないってわかっちゃうのか。
「なんであんなクソ野郎に聞かなきゃいけないのよ」
「そっちだってよくわからない……人をクソ野郎呼ばわりしてるじゃん」
「うっ、そ、それはクソ野郎が快斗くんの武器を壊したりするから」
「それの何がいけないんですか? 戦いで武器が壊れることなんて普通ですよね。まぁ僕は壊された事なんて無いけど。鬼灯さんが姫山さんに何をされたか説明してあげてください」
えっと、みんなの視線が僕に集まって説明を求められている。
てかテラに外堀から埋められて答える以外の選択肢がなくなっている。
「僕がされたのはダンジョンクリアの横取り。横取りって言っても嘘の報告をしてそれをあの不正じゃない。ココネ元先生が手助けをした感じ」
「だ、そうです。さて、クズはどうしますか? 僕の手に入れた情報によれば姫山さんのお父さんはもうすぐ釈放されるそうです。そうなればまた親の威を借りて不正を繰り返すでしょう。それなのに助ける必要はあるでしょうか」
テラはさながら演説のように声を上げてみんなに質問する。
姫山を助ける必要はあるのか。
僕は一応被害者でここで助けないって言う権利がある。
でも、どうしても許せないのがテラの手の上で踊らされてる感があることだ(勘違いかもしれないけど)。
「では裁きの時間としましょう。助けた方がいいと思う人は南条さんの所に。助けるべきではないと思う人は僕の方に来てください」
こんな流暢なしゃべり方をしている内にどんどんと姫山は不利な状況になっていき、いつ死んでもおかしくない状態、運だけで生きているって感じだ。
僕は癪だけどテラの方に行く。
それと和紗と一松、エリー、義宗、宮野がこっちに来た。
それ以外は京ダン高含めて全員南条の方に行った。
「はぁ、じゃあ助けに行こっか」
わかった事、誰一人として勝手にボス部屋に入ろうとしなかったのはテラが止めてたからだけど、物理的に敵わないのだろう。
だから京ダン高の生徒はみんな安堵し、ボス部屋に入っていく。
ボス部屋に入ると京ダン高の生徒はいい連係で敵を、ソウルイーター(魂を喰らう魔物)を攻撃しているが中々倒せる気配がない。
それに比べてダン高の生徒は個々の力が強すぎて連係なんてとれないから中々攻撃出来ずにいる。
「快斗くん、大丈夫?」
「ありがとう、暦ちゃん」
それともう1人攻撃してない人、もちろんテラだ。
ニコニコしながら見ているだけで手伝う気配がない。
「混沌陰法
京ダン高の連係に綻びがあったから、そこ目掛けて手助けをする……つもりだった。
本当に手助けのつもりだったけど僕の陰法はボスに……当たりそのまま倒してしまった。
それも1発で。
弱っていたのか、それとも僕が強かったのか。
ただ、
「いやー、流石人が――――」
「――――鬼灯くんだったね。凄いよ」
「鬼灯さん、今のなんですか?」
「「す、すごい」」
テラの言葉をかき消すくらいの食いぎみで
いや、でもナイスだ。
今、テラは僕に「人外」と言おうとしてただろう。
「いやー、まぐれだよ。ちょっと隙を見つけたから攻撃したらたまたま倒せただけだって」
「あー、嘘ついてる」
そう言ってきたのは、どことは言わないが主張が激しい宇崎だ。
その宇崎の左目は黄色で不自然。
「だって私わかるんだよ。この目のおかげで相手の体力わかるんだもん。凄いいっぱいあったのが一気になくなったんだもん」
「その目っていつから?」
「小学生の頃知らないおじさんに銀色に光る林檎を貰ってそれを食べてから」
まて、情報量が……まず知らないおじさんから物を貰うなよ。
それに銀色に光る林檎って[白銀林檎]の事だよね。
それに食べちゃったんだ、知らない人から貰ったのを。
「でも、それでもまぐれだって。運よく急所に当たったとか、相性がいい属性だったとかだよ」
「急所はあの魔物にはありません。それに相性がいい属性は聖属性なのでそう簡単に使える物じゃありません。もし聖属性だったとしても一撃では倒せないはずです」
ごめんなさい、その使ったやつ聖属性の技です。
それに吸血鬼の技だから威力が段違いなんだと思います。
口が裂けても絶対に言えないけど。
「そ、そうよ。コイツがまぐれって言ってるんだからまぐれなのよ。それに快斗くんだってあんなの一撃で倒せたもん。ね?」
「う、うん。そうだよ。俺にも武器があれば倒すことなんて簡単に出来るんだ」
やめてー、南条さんやめてー。
そうやって姫山の事を元気づけないでよー。
「そもそも鬼灯が俺の武器を壊したりしなければ」
「はいはーい。それは違うと思うよ。先に悪い事をしたのは姫山さんだよね?」
「お、俺が何をしたって言うんだよ」
「ダンジョンクリアの虚偽報告」
「そんなの証拠がないだろ?」
「なんて惨めなんだ。なんて可哀想な人間なんだ」
京ダン高の生徒たちは頭を押さえて悩んでいる。
と、言うよりも「また始まったよ」って感じの方が正しいかもしれない。
「証拠、証拠ね。僕って神の使徒なの。それで僕ね、宝具っていう武器があるんだよ。それがこの罪人の剣。それでその能力が〔罪の確認〕と〔断罪〕なの」
それは短剣で無駄な装飾がないシンプルなデザイン。
それでいて内側には強い力が込められているのがわかる。
それに対して姫山は、
「それで?」
全く臆してなく、むしろ「嘘を並べて恥ずかしくないのか?」って顔をしている。
「この〔罪の確認〕は武器によって相手の犯してきた罪がわかるのね。それでこの〔断罪〕はその罪が本当なのに嘘をついて謝る気がない、反省してないと絶対攻撃できるって能力なの。最後にもう1度聞くね? 本当に君はダンジョンクリアの虚偽報告をしてないんだね」
「あ、あぁ。してないな」
さて、これがハッタリか真実かわかる。
「なら、ねぇねぇ宮野ちゃん。心臓刺させて」
「な、なんで」
「大丈夫だから。もし私がなにも罪のない人を刺したら誰が怒るから。あなたは人を陥れたことがある?」
「えっ、な、ないけど」
「えいっ」
テラは可愛らしい声を上げて宮野の胸を一突き。
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