No.033 強さのヒミツ
伏見稲荷大社横 ダンジョン
~~32階層~~
「えいっ」と可愛らしい声を上げてテラは宮野の胸を一突きした。
けれども宮野は生きていた。
怪我をしてなく、服も破れていない。
「このように冤罪の場合は死なないから」
「え、ま、まて。そ、それはどこに刺すんだ?」
「もちろん心臓だけど? 悪い子には罰を与えないとね」
「わ、わかった、俺が――――」
「――――最後の確認はもう済んでるから、えいっ」
「カハッ」
姫山は心臓を一突き。
口から血を吐いてうずくまる。
「あっれれぇ? もしかして僕に嘘をついてたんですか? 今なら回復魔法を使えば治せますよ。ちなみに僕は使えませんし、京ダン高のA組誰一人として使えません」
見ていて胸糞悪いっていうのが正直なところだ。
読者のみんなは僕が優しいんだなーとか思ったかな?
違う違う、僕は仕返しをするなら自分でしたい派なんだよ。
だから獲物を奪われたみたいで胸糞悪いんだ。
南条は急いで回復薬を飲ませるが回復する気配がない。
更には高価な回復系の魔道具を使うが一切治らない。
「だ、だれか回復魔法を」
南条が必死に頼むがダン高のみんなは目をそらすばかり。
誰も回復魔法なんていう高度な魔法はまだ使えないんだろう。
「葛くんって確か回復魔法使えたよね?」
「えっ、う、うん。一応使えるけど」
和紗は僕が使えるって事を知っていたらしい。
でも使うか、僕の事を
それにしても都合がよすぎる。
僕に復讐しろって言ってるようなもんじゃん。
これもテラの予想通りだったのかな?
「な、なら鬼灯。お願い。快斗くんを治してあげて」
「南条さんさ。さっき僕になんて言った?」
「そ、それは今関係ないじゃん」
「関係ないって? 笑っちゃうよ」
踊らされるならとことん踊ってやろう。
道化師でもなんでも演じきってやるよ。
「クソ野郎。そうだよ、僕はクソ野郎だから嫌なやつには回復魔法なんて使わないよ」
「な、なんで。私に出来ることならなんでもするから。お金だって出す」
「お金はこの前ので結構あるから十分。それにさ、僕は姫山に喧嘩まで売られたんだよ? 親が僕のせいで捕まったって因縁つけて」
「そ、そんな事を快斗くんがするはずない」
姫山の血は流れ続け目が虚ろになってきた。
和紗はさっきから血を見て小さな音で「ジュルジュル」いっている。
「ねぇ、姫山。どんな気持ち?」
「だ、だず、ガバッ」
姫山の顔の前にしゃがみこみ声をかけたら血をかけられた。
服はベトベトになって本当に最悪だ。
「止血」
とりあえず止血魔法で命のタイムリミットは伸びた。
と、思ったけど止血されない。
しょうがなく、小さな声で、
「回復陰法 止血凝固」
これでなんとか止血できた。
でもなんで魔法は効かなかったんだろう?
魔法は発動してたのに。
「な、なんで止血だけなの。回復魔法を使ってよ」
「やだよ。姫山のせいで人生狂わされそうになったんだよ?」
「そんなのどうでもいいんだよ。お前の人生なんて知るか。それよりも未来ある快斗くんの方が助かるべきなんだよ」
「それに僕は殺してないしね。回復魔法なんて使えないかもしれないよ? 嘘を言ってみただけかもしれないし」
「えいっ」
あれ?
この声って、
「うん、嘘はついてないみたいだよ」
あっ、やっぱりそうなのね。
なんだろう、馬鹿らしくなってきた。
「そ、そうだ。宮野さん、あなたなら治せない? お家がお医者さんでしょ?」
「わ、私は無理だよ。失敗したら嫌だし」
「なんでよ。助けられるなら助けてあげてよ」
「だってもし失敗したら私が殺人者になっちゃうもん」
さて、本当にクソ野郎になって友達いなくなったら悲しいどころじゃないからそろそろ助けるか。
「回復陰法 デス・ヒール」
もちろん誰にも聞き取れないような小声で回復する。
つもりはない。
「これで回復したよ」
「う、嘘よ。だって快斗くんが苦しんでるじゃない。何をしたの!」
「何をしたのもなにも無理矢理回復させただけ。うーん、簡単に説明すると自分の力で無理矢理回復させてるって事。だから苦痛を感じちゃうってだけ」
もちろん普通の回復陰法もあったけど敢えて、鬱憤晴らしとして苦痛を与える回復を選んだ。
我ながらクソ野郎な性格している。
「後1時間くらいで治るとおもうから」
「なんで、なんで最初から治してくれなかったの!」
「何度も言うけどさ、僕はコイツに人生が狂わされそうになったんだよ」
「そんなのどうでもいい。お前の人生なんてどうでもいいんだよ。それになんで1番になっているのよ。早く快斗くんに返しなさいよ」
「僕からしてみれば僕以外の人生なんて興味ないんだよ。南条、
殺気と言霊の大サービスだ。
その大サービスを浴びた南条はへたり込みその後、気を失った。
「いやー、面白い物が見れたよ」
「良かったな。殺人者にならずに」
「そーだね。ありがと、人外さん」
「人外さん」の部分はみんなに聞かれてないだろう。
「人外さん、人外さん」
「その呼び方は止めてくれ」
「わかった。鬼灯、回復魔法は効かないはずなのにどうやって治したの?」
「さぁな。運が良かっただけだよ。じゃなくて実力」
危ない、嘘をついたら刺されて殺されかねない。
テラは普通に人を殺した事があるだろうから刺すこと事態に抵抗感が無さすぎる。
危ない人間だ、天神族だけど。
「そっか、言い直したから実力っていうのは本当なのか。それに今まで悪い事をしてこないって凄いね」
「そうかな?」
悪い事なら結構しているような気がするけど、まぁいいや。
~~33階層~~
姫山はだれかさんのせいで苦痛により棄権。
ついでに南条が付き添いで棄権。
ここからは京ダン高の生徒にとっても未知の階層だ。
だから協力してマッピングをすることになったのだが、ダン高と京ダン高の生徒でペアを組むことになり、僕のペアはテラとなった。
「ねぇねぇ。人間じゃないならなんなの?」
「教えたくないから教えない」
「えー、いいじゃーん。おーしーえーてーよー」
「なんで教える必要がある」
「だって強いから。下手したら僕より強いから許せない」
「それは理不尽すぎないか?」
「そうだ、1回だけ勝負してみない?」
「いやだ。興味ない」
小さい子を相手しているみたいで凄い疲れる。
「あっ、ボス部屋あったよ」
「本当だ、みんなに連絡しないと」
テラと一緒は調子が狂うからみんなに来るように連絡する。
大体この階層にきて1時間弱。
こんなに時間がかかったのはこの階層が広大故のことだろう。
10分くらいしてみんな集合することが出来た。
「さーて、誰が行く?」
テラの言葉に誰も返事をしない。
空気は最悪と言っていいほど暗い感じだ。
いや、ね。
少しは僕も関わったけどね、いや、結構関わったけど……。
「じゃあ僕が行ってくるよ」
少しでも空気を変えるために一瞬で終わらせてくるか。
「どーせ鬼灯は一瞬で終わらせるんでしょ」
テラの言葉を無視して1人ボス部屋へと入っていく。
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