No.028 香りとサトリ



 太陽が空高く昇る朝。

 梅雨の時期も終わり、もうすぐで夏休みになる。

 それはいいとして、今日はA組全員が来なくてはいけない日。

 色々と報告があるらしが、僕が手に入れた情報によると不正ココネ先生はまた復帰するらしい。


 和紗と教室に向かうと3人の生徒が登校していた。

 僕たちで、5人になるわけだが僕は決闘の申請を忘れていたので職員室に行き決闘係の先生に提出しておく。

 そして教室に戻ると姫山以外の生徒が登校していた。


「お帰り、葛くん」

「うん」


 僕が戻って来たのに気がついて和紗が声をかけてきた。


「みんなー、揃ってるね」

「はぁ?」


 教室に入ってきた先生はなぜかというか、やっぱりというか不正ココネ先生だった。


「いやー、お姉ちゃんが迷惑をかけたみたいだから。私は花毬はなまりココナ。よろしくね」


 不正先生の妹なのだろう。

 ココナ先生は炎で文字を書き自己紹介をした。


「あれ、1人だけまだ来てないのかな? ってまだ時間に余裕はあるか」


 1人ツッコミ1人解決。

 面白い先生がやって来たんだな。


 それから5分くらいして姫山が来た。

 休まないでくれてよかったし、なんか僕の方を見て勝ち誇ったような顔をしている。

 なにかいい作戦でも思い付いたのだろうか?


「じゃあホームルームを始めるよ。まずは夏休みの前に実技試験があるから忘れないでね、って言っても簡単だから大丈夫だと思うよ。次に夏休みについては基本的に自由で、問題は夏休み明け。夏休み明けに1年生は修学旅行があります。行く場所はもちろん京都。約1ヶ月ダンジョンに籠ってクリアを目指してもらいます。1人でもいいし、1年生の誰かを誘ってもいいし、プロを雇ってもいいからね」 


 京都のダンジョンか。

 どんな感じかな?


「ココナ先生、実技ってどんな感じですか?」

「今回の実技はサドンデス。ルールは簡単で、魔物のレベルが段々と上がっていくからどこまで倒せるかって感じだよ」

「ありがとうございます」


 今質問したのは財閥令嬢の南条なんじょうこよみ

 それにしてもサドンデスとは中々面白そうだけど、僕って大抵のは勝てちゃうからどうなるんだろう?

 まさか負けるまで続けないといけないやつかな?


「他に質問のある生徒はいるかな? いなければ放課後に鬼灯くんと姫山くんが決闘するから観に来たら?」


 なぜそれを言う。

 それって野次馬が増えるだけなんだけど。


「葛、快斗と決闘するのか?」

「うん、するよ。僕から挑んだ訳だけどね」

「まぁ頑張れよ。僕に勝ったんだから。それと観に行くから」

「いやー。観に来なくてもいいんだよ?」

「大丈夫、葛の事をちゃんと応援するから」


 そういうことじゃないのに。

 まぁ応援してくれるのは嬉しいからいいけど。



 ※



 決闘の時間がやってきた。

 多くの生徒が観に来ている。

 皆が興味あるのは最近逮捕された元最強パーティーのリーダーの子、姫山快斗。

 少しは高難易度ダンジョンクリア者の僕に興味がある人もいるらしい。


「ただいまより、鬼灯葛 対 姫山快斗の決闘を開始する。始め!」


「黒夜叉」

「魔法剣 デス・カリバーン」


 姫山が朝、なんであんなに自信満々だったのかが理解できた。

 あの剣は姫山のお父さんが使っていた武器で、勝手に持ち出したとかそんな感じだろう。

 周りの生徒もこの剣に見覚えがあるのか驚きの声をあげる。


「鬼灯、今度こそ謝るなら今のうちだぞ?」

「陽法 翠の太刀 飛雲」


 姫山の言葉を無視して斬撃を飛ばすが易々と避けられてしまう。

 武器により身体能力が物凄い向上しているように感じる。

 姫山はいつの間にか僕の後ろに回り込み攻撃を仕掛けてきたがギリギリの所で受け流す。

 1発1発が重たく、受けると少し危ないと思うほどの攻撃だ。

 どこにそんな力があるのか、または、武器による力と考える方が自然だな。


 僕は相手が嫌がるような剣の受け流し方をする。

 相手の重心が崩れるように、相手が腕を振れないように、相手が受けたり避けたり出来ない攻撃を、


「それを受けきるかよ」


 人間の動きじゃない、そう思わせられてしまう。

 体は傾き重心はずれて腕を振ることが出来ない。

 そんなのお構い無しに無理矢理受け弾かれた。

 ただ、受けられたから悔しいとかじゃなく、純粋にただただ楽しい。

 それだけだ。


「陽法 無の太刀 無刀真剣」


 見えない刀で無理矢理相手の剣を弾き返し、相手の右肩、剣を持っている方を突き刺す。


「これで腕は振れないよ」

「まだだ。風よ、切り刻め」


 突風が吹き荒れ、風の刃が宙を舞うが、僕には一切の傷をつけられずに終わる。


「陽法 黄の太刀 一閃・九連」


 レイピアのように黄色く光る刀で姫山の体を滅多刺しにして戦闘不能にする。

 体からは血が流れ続け、回復を始めているが中々治る気配がない。

 この辺の魔力は枯渇していない所から考えるに、姫山は無理をし過ぎたのだろう。

 自分の身の丈に合わない武器を使い、それでいて回復速度が遅いと考えられる。


「混沌陰法 悪夢との引換ひきかえ


 姫山を無理矢理回復させる変わりに悪夢の中に引き込む。

 条件として僕の血の匂いを嗅がせてから発動する(血は無臭です)。

 姫山の体はみるみる傷が塞がっていき、そのまま保健室まで運ばれた。

 この悪夢は1時間で終わるけど、体感でどのくらいかかるかは人それぞれなのが怖いポイントだ。


「姫山はどのくらいかな?」


 そんな言葉を呟いて僕は大修練場をあとにする。



 ※



 色々とあったが充実していたと、自分は思える。

 そして今日は実技試験の日になっていて、僕は今の順位が1番だから1番最後となっている。

 ちなみに永遠に続くサドンデスだと思っていたが、最大20体となっていて、和紗は19体まで倒すことが出来た。


 さて、他の生徒のも観ていこう。


 まずは親が病院長の9位、宮野みやのさくら

 武器は「やっぱり」というか「なぜ」というか、ドワーフに作ってもらったであろう『ミスリル』と呼ばれる地球には元々ない鉱石で出来た[ミスリルのメス]だった。

 それを器用に操りながら敵を葬り結果12体。


 獣族の王族で8位、ペトラ・ンラ。

 突出すべきはその身体能力の高さだろう。

 地を駆け回り爪で相手を斬り殺していった。

 結果19体。


 ちなみに20体目は物凄い強度をもつミスリルデスターと呼ばれる知性ある騎士型モンスターだ。


 僕の友達でダンジョンクリア者で7位、 浅間あさま義宗よしまさ

 武器は変わらず[魔法剣 幻虹げんこう]で結果は18体。


 財閥令嬢で6位、南条なんじょうこよみ

 金にものを言わせて買ったであろう魔物に効く猟銃。

 銃の腕はよく、弾を外す事は最後まで1度もなかった。

 結果15体。


 ドワーフと人間のハーフで5位、 石上いしがみドーラ。

 色々な武器を試しながら使っていて、その武器どれもが高品質で、ドワーフ印だった。

 最後のミスリルデスターも倒して結果20体。


 エルフと人間のハーフで4位、エリー・L・トワイライト。

 いくつもの高難易度魔法を使いこなしどんどん敵を葬っていった。

 結果19体。


  10歳でヤクザを建て直した3位、一松いちまつ文鷹ふみたか

 短刀を器用に操りどこかコアルさんと似たような洗礼さを感じる武器捌きで、時折短刀が光っていたからスキルがついているのだろう。

 最後のミスリルデスターも倒して結果20体。


  親の七光りで僕に負けた2位、姫山ひめやま快斗かいと

 結果10体。


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