No.002 理不尽なキタイ
あれから1時間。
陰法についてわかった事がある。
吸血鬼の血というのは物凄い力を秘めていて、持ち主に呼応して世の中に干渉するようだ。
ただ、まだ陰法を成功させてない。
と、言うのも、
「怖くて自分の体を傷つけられない」
それが1番の原因だ。
ナイフとか貰ってなく、ドリーさんを探したが見当たらなく、自分で傷つけるしかなくなってしまったからだ。
これは、早々にピンチが訪れた。
まだ、僕の物語は始まって10話も行ってないのに。
「どうだ、少年。陰法はそろそろ出来るようになったか?」
「いえ、ってドリーさーん。ナイフか何か斬れる物をください」
「なぜだ?」
「えっ、だって自分で傷つけのは怖くて、でも武器とかあればいけるかなーって」
「そうかそうか。ならこれでいいか?」
そう言ってドリーさんが取り出したのは「おろし金」。
「これで肌をゴシゴシすれば僕の擂り身の出来上がり、って違うわ」
「ごめんごめん。はい、陰法用のナイフだよ」
掌サイズの小さなナイフ。
試しに人差し指にナイフを押し当てるとプクゥ、と血が浮き出てきた。
次の瞬間には皮膚はつながり、血が止まった。
「
血が呪文に反応して
それを適当に放つと、綺麗な炎を出しながらカーテンが燃えて……いる?
「ヤッベ。混沌陰法 水弾」
急いで人差し指に斬り傷をつけて陰法を発動する。
手をピストルの形にして一発。
見事、炎に当たり火事にならずにすんだ。
「ね、ねぇ。今のって無詠唱、よね」
「はい、この本に書いてありました。陰法は世界に干渉するときに、その人のイメージが1番大事。イメージ力が強ければ強いほど弱い力で大きな事象を起こせるって」
「そ、そうなの。まぁ、もちろん知ってたわよ(いつの間にそんな事が書かれていたの。初めて聞いたわよ。そもそも読んでないわよ)」
絶対知らないやつだ、これ。
でもそれを言及したら怒るだろうしな。
「よ、よし。あなたには特別に武器を作ってあげるわ」
「武器、ですか。ちなみにドリーさんはどんな武器なんですか?」
「私の武器はこれだよ」
いつの間にかドリーさんの手元には一丁の銃が握られていた。
ヨーロッパの古い銃って感じで、吸血鬼が持ってても違和感がない感じだ。
「これが私の武器。強度も申し分なく鈍器としても役立つんだ」
ダメだ、まだ会ってから数時間だけどその姿が容易に想像できてしまう。
「これから鬼灯くんの武器を作りにいこう」
「行くって言ってもまだ夕方で太陽が出てますよ」
「問題ない。来てもらったからね」
なるほど、第一始祖だからどんな横暴も聞かないと後が怖いのか。
「入れ」
「失礼いたします」
入ってきたのはいかにも職人って感じの外国人。
大体50歳後半くらいの見た目をしていて、綺麗に染められた白い髪が特徴的だ。
「初めまして。私は第四始祖ローザスです」
「よ、よろしくお願いします。僕はだ、第二始祖の鬼灯葛です」
一応、第二始祖の所も言っておくべきだろう。
なんか、そういうの大事そうだし、ドリーさんが矢鱈と強調してた気がするし。
「それでは武器を作りたいと言うことで髪の毛を1本と血を少々頂けますか」
「わかりました」
髪を一本抜いて(痛かった)、人差し指から血を1滴ガラス瓶に入れる。
「では次に武器の形状ですがどんなのにいたしますか?」
「武器の形状かぁ?」
これは悩ましい。
銃は遠距離からでも使えるし、近距離でも鈍器として使える(らしい)。
でも剣とかも憧れるんだよな。
でもここは日本人として刀でいくべきかな。
「悩ましい」
「なら私と一緒にするか?」
「いや、それは遠慮しときます」
ならスナイパーライフルとか物凄い遠くから狙えるやつの方がいい。
あんなの射程距離が絶対に短いじゃん。
いや、
「やっぱり日本人として刀にします」
「日本人だから刀っていうのはないと思いますが、刀でいいんですね」
「はい、お願いします」
なんか毒があったような気がするけど気のせいだよな。
そうだよ、僕は第二始祖で相手は、ローザスさんは第四始祖。
決して歯向かうような事はないはず、序列厳しいらしいから。
「それでは1週間後に届けさせてもらいます」
「明日だ。明日の日の上がる前に持ってこい」
「で、ですが――――」
「――――ローザスは私の言うことが聞けない、と?」
「ウグッ。か、かしこまりました」
なんかローザスさん可哀想になってきた。
でも帰る途中に襲われたら大変だしねって……僕って剣とか刀とか振ったことないんだけど。
あるとしたら学校の体育の授業で剣道の素振りをしたくらい。
どちらかと言うとっていうか、剣道じゃない武道ならやってるけど、役にたたないしな。
「はぁー」
「どうした、大きなタメ息なんてついて」
「なんでもないです」
そう、特に理由があるわけじゃないけど、タメ息つきたくなる時あるじゃん?
読者の皆はわかってくれるよね?
――――ブルブルブル
「あっ、誰からだろう」
弟からのLINEでそこに書いてあったのはの『事故があって練習場所が使えなくなったから明日には帰る』という内容の物だった。
タイムリミットが短くなってしまった。
明日は武器をもらってすぐに帰らなくてはいけないか。
――――ブルブルブル
「次は誰だ」
父親からのLINEで『仕事が早く片付きそうだから明日には帰れるぞ』という旨のメッセージだった。
なら次は、
――――ブルブルブル
「見なくてもわかる」
母親からは『なら私も急に帰りたくなったから明日には帰るわ』という内容だった。
うん、明日には1回家に帰らないとな。
でも、吸血鬼ってバレる訳にはいかないから外出は気をつけないと。
「あっ、ドリーさん。ニンニクって大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ないぞ。何でだ?」
「えっと、よく物語とかだとニンニクがダメな吸血鬼がいるじゃないですか」
「それはただ単にニンニクが嫌いな嫌いな吸血鬼がいたからそれを見て勘違いしたんじゃないか? 私は平気だから」
なるほど、それは良かった。
母親で思い出したが、母親は大のつくほどニンニクが好きなのだ。
だから心配したが杞憂に終わったようだな。
なら陰法でも練習するのが1番だろう。
「ドリーさん、質問です。陰法があるなら陽法もあるんですか?」
「あぁ、あるぞ。吸血鬼専用武器を通して使う必殺技みたいなやつだ。これがその本」
貰った本は凄い分厚く片手では掴めない。
うん、ざっくりと読んだ感じ、これもイメージらしい。
でも基本はやっとかないとな。
「よし、まだ時間があるから陰法の練習。イメージでどのくらい出来るだろう」
それから未知の魔法みたいな陰法を集中して2時間くらいやったら血の使いすぎで貧血を起こしてしまったのはしょうがないだろう。
だって楽しいんだもん。
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