第12話 愛輝く星の天使の剣③

 炎に包まれた夜の狭山市。


 戦闘機の上に立ち、高笑いを上げながら。

 破壊と混沌を撒き散らす、新たな悪魔の姿。

 その股間で、風に揺れる……ゾウさん。


「ぐふっ……!!」


 血を吐きながら、私は。膝から崩れ落ちた。

 戦意を粉々に砕く、恐ろしい悪魔の姿。恐ろしさのベクトルが、予想と違うけど!


 か、関わりたくない! 関わりたくないし!!

 なぜあの悪魔、ま、丸出しなのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?


「きゃっ、大胆な悪魔さん♪」


 一方早百合、手で目隠ししてるようで、指の間からばっちり見てるし!


「これは、貴重な記録映像ね! 今後の戦いのためにも、余さず撮影するね!!」


 すちゃっと構えるは、パジャマ姿でも手放さない、愛用のビデオカメラ。

 うん、早百合ってばわくわくし過ぎ。


 ああ、帰りたい。もう全部夢だったコトにして、おうちに帰って寝たい。


「ふはははははははははははは! どうした百合魔法少女、出てこないのか! 怖気づいたのかァァァァッ!!」


 奴はまだ、私たちに気付いてない。戦闘機を引き連れ、上空を旋回。

 その風で、もちろんゾウさんもぐるんぐるん旋回!!


 これちっともポロリじゃないね。モロリだね!?


「くっ、私が、しっかりしなくては……!」


 撮影に夢中な早百合を横目に、私は立ち上がる。自らに喝を入れながら。

 だって! 私がツッコミを放棄したら!! 誰がこのカオスを止めるというの!?


 では、皆を代表して!! 今一番言うべきコトを、悪魔にぶつけましょう!!


「パンツぐらい穿けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーッ!!!」


「ふはははははっははは! ふははぁっはははははははぁーッ!!」


 聞いてないし! 渾身のツッコミが効いてないし!!


 ……やっぱ、帰ろうかな?

 仕方ないよね、乙女として。何が悲しくて、あんな全裸変質者に関わらねばならないのか。

 他人のふり、他人のふり……。


 なんて、戦意を失っていたら。

 上空の全裸悪魔、どこからかメガホンを取り出して!!


「どうした、なぜ出てこない百合魔法少女! 出てこい宮野りりな! 宮野りりなぁぁッ!!」


 ぎゃぁぁぁぁぁ!! 呼ばれたし!?


「宮野りりな! 公立西中学校2年B組、宮野りりな!! 早く出てきて、俺様の美しい裸体を、存分に拝むがいいッッ!!」


 上空から、町中に轟き響く悪魔の呼び声!?

 やめてぇぇッ! 私をフル〇ン男の関係者にしないでぇぇ!?

 これでもう、奴を倒して皆の記憶を消さない限り、私は変質者のお友達!!


「ご、ご指名よ、りりな?」


 ぐぬぬ、行くしかないみたい。

 拳を握りしめ、私は涙目で闘志を燃え上がらせる!

 乙女に恥をかかせた罪は重い! 羞恥を! 戦う意志に無理やり変換よ!!


「待ってなさい悪魔め! けちょんけちょんにしてやるんだからぁぁぁっ!?」


 ※ ※ ※


 少し遅れて。

 りりな達の後を追い町に出た、銀髪美幼女。

 ミルちゃんこと「腐界の女王」ミルダレーナは、遥か上空を征く悪魔の姿に、驚きの息を飲む。


「あいつは、ブライファルケ!? 誰があいつを解放したのよ!?」


 その言葉に。


「……やっぱり。君も、悪魔の一員なんだね?」


 彼女を監視していたクマのぬいぐるみ……ステファニーが、静かに声を掛ける。

 シリアスな空気が、流れ出した模様。

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