第11話 わくわくパジャマパーティー♪ お風呂も有るよ!②

「いやぁー、まさかお母さんが、あんなにテクニシャンだとは……」


 宮野家、緊急家族会議の後。

 うちのお母様、宮野せりなと、30分ほどちゅっちゅした私!

 すっかりメロメロです♪ 理解ある母で良かった!


「血の繋がった母娘で百合キス! りりなも一人前の百合娘に、また一歩近付いたね!」


「え、まだ一人前じゃないの!?」


 自室のベッドの上、百〇姫を読みながらステファニー。

 私に、どこまでいけというのでしょう?


「当たり前だろ! 母娘なんて百合の基本に過ぎない! 百合魔法少女を名乗る以上、君の目指すべき頂はもっともっと遥か先さ!!」


 百合の道は険しいらしいです。


「僕の夢は! いつか世界中の美少女が美少女同士で愛し合い、唇を求め合う! そんな理想世界の実現だ! その時人類は、永遠の夢だった恒久平和をも手に入れることになるだろう! その為にも、りりなにはもっともっと百合ん百合んしてもらわないとね!!」


 ……ここで、重大な問題に気付いてしまう私。


「なんだかんだ言って、悪魔たちがやろうとしてるのと同じだよね、それ。男か女かの違いだけで」


「なんてことを言い出すんだい君はぁッ!?」


 ぬいぐるみが眼を剥く!


「百合だよ!? 女の子同士だよ!? 美しくて可愛いんだよ!! BLと一緒だなんて! 男なんぞと等価値だなんて、断じて認めん!! ちん〇んは要らないんだよぉッ!!」


 わ、わ、すごく怒ってるし!?


 でも、私は思うの。


「……どっちが素晴らしいとか、決めないといけないものなのかな?」


 たとえば、早百合。

 私と毎日キスして。他にも色々とす、すごいコトもして。

 文句無しのガチレズ娘だけど、ホモも好きなんだよね、彼女。


 百合と、腐女子(私、最近この言葉を理解した)は。両立できる。

 ならば、悪魔たちとも。分かり合う道もあるのではないか。


「私は別に、悪魔が憎いわけでもないし。ホモを否定したいってわけでもないのよね」


「……君がそのつもりでも。悪魔たちの方が、分かり合うつもりなんて、ないと思うけどね」


 ため息をつき、百〇姫を閉じるステファニー。


「いい機会だから、ちゃんと説明しておこうか。僕や、悪魔たちがどういう存在なのかってことを」


 あ、ステファニーが解説モードに入った。


「僕が、君たち人間が神や天使と呼ぶ存在に近い、というのは話したよね?」


 こくん、と頷く私。

 正直、前回のイケメン人間体を見なかったら信じなかったけどね!


「正確に言えば、僕は精神エネルギーで肉体を構成する生命体なんだ。僕らにとっては、愛や希望といった生命のプラスの感情が、力の源なんだよ」


 ふむふむ。


「だから、百合が必要なんだよ!!」


「……はい?」


 あれ、私の理解力がおかしいのか。ずいぶん理論が飛躍したような?


「百合は希望! 百合は正義! 百合は至高の愛!! 美少女単体でも萌えるのに、それが掛け算だからね!? 美少女と美少女のラブラブちゅっちゅから産まれるエネルギーは! エントロピーをも容易く凌駕して! 宇宙を救う究極エネルギーなのだよッ!!」


 うおぅ、ステファニーがグイグイ顔を近付けてくるし! 眼が燃えてるし!?


「この宇宙最高の偉大なるエネルギー源を護るのが、僕の、百合の守護者の使命なのさ!! ね、尊いだろう!? 百合の無い宇宙なんて、死んだも同然だからね!!」


「だから百合は、あなたの趣味でしょうが!?」


 違うよ、と断言ステファニー。


「百合は! いいものだ!! しかし悪魔たちには、それがわからんのです!!」


 わなわなと震え、怒りに拳を握りしめる。ステファニー、血涙を流して!


「奴ら悪魔が暴れているのは、この星だけじゃないよ! 奴らは乱暴で、残虐で、ヒャッハーで! しかもイケメンが多い!! いったい今まで、いくつの星で百合を邪魔されたことか!!」


 え、そんな宇宙規模のお話なの?

 てか宇宙規模で、そんなアホらしい戦い繰り広げてるの!?


「あまつさえ、今回の地球では! 悪魔め、百合と対極のBLを広めようだなんて!! どこまで百合を邪魔するつもりなんだ!?」


「別に、百合を邪魔するつもりじゃないと思うけどな……」


「甘いよ! 彼らは恐ろしく残虐で、自分勝手な種族だからね! わかり合おうなんて甘いこと言ってたら、ひどい目に合うよ!?」


 ……うーん、いまいち納得できない。結局私って、悪魔のコト、ちゃんと分かってるわけじゃないし。

 自分が、何と戦っているのか。

 それは、もっと、ちゃんと知っておきたい気持ちも有るし。


 と、シリアスに考え込んじゃう私を。

 現実に引き戻したのは、お母さんの呼ぶ声だった。


「りりなー、早百合ちゃんから電話よ?」

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