第5話 最強美幼女悪魔「腐界の女王」④

 一学期終業式、当日の朝。登校前に私は、早百合の家に寄っていた。


 早百合が、熱を出したのだ。


「りりな、私は平気だから学校に行って。遅刻しちゃうよ?」


「大丈夫だよ、まだ時間有るし。それに……」


 勉強も出来て、性格も朗らか、皆の人気者の早百合。

 でも彼女は、あまり身体が丈夫ではなくて、時々こんな風に熱を出すのだけど。


「こんな時でもないと、お礼も出来ないでしょ? 早百合には、助けられてるんだから」


 日頃の感謝を込めて、ベッド上の彼女にお粥をあーんさせる。作ったの、早百合のお母さんだけど。


「むー……」


 あれ? 何故か早百合は不満なご様子。


「ねぇ、りりな? 私、口移しがいいな」


「ふぇっ!?」


 それってキスのおねだり!?


 私の顔は真っ赤!


「キマシ! 賛成だよ僕は!? 百合キス最高! 百合キス大正解!!」


 鞄の中から飛び出すクマのぬいぐるみ、ステファニー!

 百合の予感に大興奮!?


「うっさい! 黙ってなさいエロ獣!!」


 鉄拳制裁!


「ひ、ひどいよ! 僕は視聴者の声を代弁してるだけだよ!? みんな、とにかく君らがチュッチュするのが見たいんだよ!?」


「知るか! 誰よ視聴者って!?」


 でもステファニーめげず。


「それに、忘れたのかい? 君は、1日1回女の子とキスしないと、死んじゃうカラダなんだよ!?」


「ううっ、それは、分かってるけど……」


 そう、私宮野りりなは百合魔法少女。

 女の子同士でキスしないと、宇宙レベルのパワーである百合魔力を制御できず……爆死する。


「ふふ、昨日は十回はしちゃったね♪ ぽっ♪」


 熱で赤い顔を、更に赤らめる早百合。


 ……早百合には、助けられてるって言ったけど。

 一番助けられてるのが、実はこの件。


 はい。毎日キスしてます! 初めての変身から一週間経つけど、もう、毎日キスしてますよ! それが何か!?


「で、でも! やっぱり恥ずかしいし!」


「ふふ、羞じらいを忘れないりりな、可愛い♪」


 そして早百合は、微笑みながら。


「ねぇ、りりな。私、お腹空いてるのよ? 早く、誰かに食べさせて欲しいな」


 お粥をスプーンに一すくい、私の口元に。


「……だから、これはエッチなことじゃないよ? 人助けなんだから、ね♪」


 ……だまされてる。

 私、だまされてるよね?


 でも、


「ひ、人助けなら、仕方無いよね?」


 口にお粥を含み、早百合に顔を近付けていた。


「ふぉぉ! 結局キスせずにいられない二人! 素晴らしいよ!!」


 ステファニーの声も耳に入らず、私達は。


 ……ちゅっ。


 舌を絡め、お粥を口移し。


 そして。


「ふふ、りりなの味、美味しい♪」


「ん、ちゅっ♪ はぁ、早百合の唇も、すっごく甘いよ♪」


 ご、ごめんなさい!

 お粥が全部無くなっても! まだ私達は接吻中です!?


(だ、だって! 早百合可愛いんだよ!? 天使なんだよ!? 巨乳天使!!)


 地毛から茶髪な私に比べ、早百合の黒髪はホントに綺麗で、さらさらで。


 柔らかい唇は、蕩けるほど甘く、でも微かに残るお粥の塩気が良い味のアクセントで。


 これはもう、キスの宝石箱♪


 早百合の味、脳髄を官能的に酔わせるような吐息にくらくらしながら、


(女の子の唇って、みんな、こんなに甘いのかな?)


 私は、そんなことを考えてしまっていた。


 ※ ※ ※


「ち、遅刻、遅刻ー!?」


 結局あの後、私達は何十回もキス!

 遅刻寸前!!


 私は廊下を全力ダッシュ!

 プリーツもセーラーカラーもひるがえりまくり!

 マリア様が見てたら卒倒するかも!?


「ぎ、ぎりぎりセーフ!?」


 ずざざー、と床を滑り教室前に到着!

 すー、はー、息を整えていると。


「よっ、宮野。今日は、愛妻の早乙女は一緒じゃないのか?」


 ぽんと、背中を叩かれる。


「……絢子先生」


 振り返れば、そこに立っていたのは私達の担任。


 29歳、スタイル抜群の美人英語教師。

 我ら2年B組のお姉さん的存在、後藤絢子あやこ先生だった。

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