第5話 最強美幼女悪魔「腐界の女王」③

 声と共に集う、無数の蝙蝠コウモリ! 影になって融け合い、人型を成す!


「我らが理想世界の実現を阻む敵、百合魔法少女。その討伐の任、我輩シュラムエントに、ぜひお任せあれ」


 現れたのは、シルクハットに黒のコートをまとい、カシのステッキを携えた悪魔紳士!


 その名も騎士級悪魔シュラムエント!


「ちっ、騎士級風情が出しゃばるな!」


 吐き捨てるアルダ=ギルズ。男爵級の美少年悪魔。


「奴は俺の獲物だ! 今度こそ、悪魔の本気を見せてやる!」


 マジカル☆リリィに敗れた彼の包帯姿! 痛々しい!


 しかし、新たな悪魔紳士シュラムエントは、慇懃いんぎんにかしこまりながらも譲らない!


「無論、雪辱に賭ける閣下のご意志は百も承知ですぞ。しかしですな、我輩にも譲れぬ理由がありまして」


 その瞳が、憎悪に燃える。我らが百合魔法少女、マジカル☆リリィへの憎悪に!


「先日倒されたアイゼンシュティーアは、我が盟友。その無念、我輩が晴らさずにはおれませぬ!」


「……なるほど」


 成り行きを見守っていた「腐界の女王」ミルダレーナは、重々しく頷き、


「つまり……ホモね!?」


「……は?」


 目が点になる男悪魔達。


「だってそうでしょう!? 愛する友の仇を討つ為、強敵に立ち向かう! この友情、ホモと呼ばずに何と呼ぶの!?」


「い、いや、我輩達はそういう関係では……」


 もちろん女王は聞いてない!


「その心意気、ナイスホモ!! ホモの為なら仕方無いわ! 百合魔法少女を倒すのは、貴方に任せるッ! さぁ、ホモの意地を見せつけてくるのよ!!」


「だから違いますぞ!? 我輩とアイゼンシュティーアは、清い友人関係で!」


 もちろん聞かない女王! 瞳をキラキラさせて、社内の悪魔達にまで呼び掛ける!


「さぁ、お前達! 彼を讃えなさい! 愛ゆえに戦場へ赴く、ホモ戦士を!!」


「ふれー、ふれー、ホモ! 頑張れ頑張れホモ!!」


「やめてやれよ!? こいつ泣きそうだぞ!?」


 良い奴!? アルダ=ギルズがかばう!


 しかし!


「分かってないわね、アル君!」


 女王ミルダレーナは、尻尾をふりふりしながら宣言!


「この世に、ホモでない男など存在しないのよ! そして友の復讐が為に戦う彼こそ! ホモの中のホモ!! 男の中の男! 讃えるのは当然でしょう!? V.B.Lビバ・ボーイズラブ !!」


 V・B・L!

 V・B・L !


 悪魔達の邪悪シュプレヒコールに送られて!


「で、では行って参りますが!?」


 悪魔紳士シュラムエントは、再度念を押す!


「我輩、ノーマルですぞ!? ホモではござらぬから!?」


「もう、照れなくて良いのに♪」


 悪魔の首領、美幼女悪魔ミルダレーナには、何を言っても無駄なのだった。


 遠い目で、アル君呟く。


「……なんか、あいつが可哀想になってきたな」


 ※ ※ ※


 そして悪魔の晩餐! 執事悪魔に用意させた食事はお子様ランチ!


 銀髪赤目のロリ悪魔にぴったり!?


 しかし!

 「腐界の女王」ミルダレーナは何故か手を付けず!


 食器に、ナイフとフォークに視線が釘付け!


 ゆらゆらと昇る邪悪オーラ! な、何を食器に見出だしているのか!?


「ハァハァ、ナイフ×フォーク♪ ナイフ×フォーク♪」


〈以下、女王の妄想!!〉


 ナイフ

「ふっ、フォークよ。俺の太くて硬い刀身、どの切れ目に入れて欲しい?」


 フォーク

「アッー! や、やめろ!? そんな、先の割れ目に、順番に入れるなんて!?」


〈以上、妄想!〉


「強引なナイフに、逆らえないフォーク! こ、このカップリング萌えるわ♪ どぅふ腐腐腐♪」


 ああ! ああ!

 何たる狂気じみた、終末的光景!!


 ナイフとフォークをカチャカチャさせて、BL妄想に勤しむ悪魔の女王!!


 その腐女子妄想力の前では、無機物すらもホモにされると言うのか!?


「ふふ腐、やっぱりホモは最高ね♪ 覚悟なさい、百合魔法少女! 貴女にもホモの偉大さを思い知らせてあげるわ♪」


 強大な敵!!

 が、がんばれ負けるなマジカル☆リリィ!

 百合を護れ、マジカル☆リリィ!?

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