第5話 最強美幼女悪魔「腐界の女王」⑤

 後藤絢子あやこ先生。

 我らが担任のことを考える。


 体育館にて終業式の最中、校長先生の長い話を、右から左に聞き流しながら。


(絢子先生ってかっこいいよね。オトナな感じで、スタイル良いし)


 うちのお姉ちゃんとも雰囲気似てるかな?

  実際、お姉ちゃんの中学時代に先生は新任教師で、意気投合したらしく、今でもたまに連絡取ってる。


(や、やっぱりオトナだと! キスの味もスパイシーなのかな!? かな!?)


 今朝の早百合とのキスで思ったコト。


 ……他の女の人の唇は、どんな味がするんだろう?


(た、試してみたいわ♪ 新しい扉が開けるかも♪ きゃんっ♪)


 い、いやいや、早百合だけで良いってば!

 私、純情乙女だし!?


(ああっ、でも! 女の子とのキスを想像すると♪ 私のハートは胸きゅん暴走機関車、誰にも止められない♪ けど、仕方無いよね! だって私、百合魔法少女だもん♪)


 ち、違うってば!

 私、ノーマルだから!?

 女の子なら誰でも良いとか、ないから!?


(もう、何を迷ってるの宮野りりな! 百合は正義、百合は至高♪ さぁ、胸のドキドキに身を委ねて! 全ての少女と百合キスするのよ♪ マジカル☆リリィーッ♪)


「人の心の声を捏造ねつぞうするな!? ステファニーッ!?」


 はい、この気持ち悪いモノローグ! 私じゃないから!

 ステファニーの念話だから!?


 ちなみにヤツは、またも教室、私の鞄の中。体育館の私まで、テレパシーを飛ばし中。


(だって、僕もそろそろ新展開が見たいんだよ! テコ入れだよ! せっかく女の子とキスして変身なんて、素晴らしい設定なんだよ!? もっと色んな百合キスが見たいんだよ、僕はッ!!)


 設定とか言うな!

 それに私、女子なら誰でも良いとかじゃないから!?


 私は椅子から立ち上がり、力強く宣言!


「わ、私は、早百合ひとすじなんだからね! 他の子とキスしたいとか、思わないし!!」


「み、宮野!? 終業式中だぞ!?」


 ……はっ!?


 し、しまった!

 気付けば絢子先生以下、全校生徒と教師陣の、可哀想なモノを見る視線!?


「と、というか宮野! キスとか何とか、お前と早乙女は、ドコまでいってるんだ!? お前達は中学生だからな!? 不純同性交遊は許さんぞ!?」


 あ、赤くなって動揺してる絢子先生、うぶな感じで可愛い♪


 ……じゃなくて!


「わ、私達、やましい関係じゃないです! これは、これは世界を救う為なんです!?」


 あれ?

 これって、キスしてること認めてる!?


 その時ッ!


「ははは、何と苦しい言い訳か! ですが、それも今日で終わりですぞ!!」


 ガシャンパリーン!

 体育館2階のガラス窓を突き破り!


 くるくる、しゅたっ!

 宙返りしながら、床に降り立つ男は!?


 シルクハットに黒ずくめのコート!

 手にはステッキを携えた、邪悪オーラの謎紳士!?


「何て大胆な不審者ッ!?」


 目を剥く絢子先生。


 でも! 私には分かる!

 こんな堂々とした変質者、奴らの他にはいないッ!


「来たわね、悪魔!」


 悪魔は、コートについたガラス片を払い、優雅にお辞儀。


「いかにも、我輩は騎士級悪魔、シュラムエント! 我らが宿敵、百合魔法少女! 今日こそ我輩が、引導を渡してやりますぞ!!」


「け、警備員! 早く変質者をつまみ出したまえ!」


 教頭先生の指示に、駆け付けた警備員の皆さんが悪魔を取り押さえようと迫る!


 だめ! 危ないッ!?


「くくく、挨拶あいさつ代わりです。我輩の能力、お見せしますぞ!!」


 何事!? 悪魔の身体が一瞬霞み、分離するコウモリの影!


 その影は!

 警備員さん達の口から体内に侵入!!


「か、身体が動かん!?」


 警備員さん達の動きが停止!?


「無論、これだけではありませんぞ? それっ!!」


 バサバサバサッ!

 悪魔の身体が、全て影のコウモリに!


「だ、男子達が!?」


 私は見た!

 コウモリが、悪魔の分身体が、全校男子の口内に侵入するのを!!


 ……そして。


 正気を失った瞳で男子達は席を立ち!


 ……二人一組で向かい合って!?


 ……顔を、近付け合って!?


「ま、まさか! まさかッ!?」


 ……ちゅっ。


 そして女子達の悲鳴(?)!


「だ、男子が、男の子同士で、キスしてます!? きゃーっ♪」


〈第6話へ、続くッ!〉

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