第4話 心に百合を! 拳に愛を!!⑥

 日は沈み、夏の夜空に天の川。


「織姫と彦星も、女の子同士だったら良いのに……」


 ……はっ! 私は何を!?


 戦い終わって百合魔法少女の変身を解き、元の女子中学生、宮野りりなに戻った私は。


「な、何で私、あんなにテンション高かったんだろう?」


 ……恥ずかしさに頭を抱えていた。


 早百合を抱き締めたり、キスしたり。


 正気に返ると、我ながらすっごい大胆かも。


「ふふ、でも、かっこよかったよ、りりな♪」


 早百合の微笑みに、ステファニーも同意。


「そうさ、りりな! 君の百合っぷり、熱血っぷり! いやぁ、君を百合魔法少女に選んで正解だったよ!」


 うんうん、と満足げに頷きながら、


「女の子同士の過剰な友情、否、愛情に魂を賭ける! 君なら、プリ〇ュアになっても、やっていけるだろう! その熱い心、その貧乳オゴー!?」


 殴る! ぬいぐるみの体を!!


「貧乳言うなッ!?」


「お、落ち着いてりりな!?」


 暗黒面に堕ち掛かる私を、早百合が抱き止める!


「私はりりなのおっぱい好きだよ! だって、りりなのだもの♪」


 おのれ、巨乳のおごりか!? と言いたいけど、ハァハァ息を荒げながら擦り擦りされると、さすがに本気と分かる。


 ……てかひゃぁっ!? どこ触ってるの早百合!


「貧乳を恥じるなかれ! 貧乳でなければ、プリ〇ュアにはなれないからね! 良い子への配慮的に、お色気NGだから!!」


 まだ言うかステファニー!


「大事なことだよ! いいかい、僕の夢は! いつかマジカル☆リリィがプリ〇ュアのオールスター映画でこっそりプリ〇ュアに混じって戦うのを見ることなんだよ! ばれない為にも、貧乳の方が違和感無いんだよ!!」


「知るか! てか無理だし!?」


「大丈夫! こっそり増えても分からないよ! だって、あの子達50人近いんだよ!?」


 だから無理だから! 女子同士でキスする時点で、朝8時半の放送NGだし!?


「と、ところで、りりな。そろそろ帰らない?」


 あ、もじもじしてる早百合可愛い♪


「はっ! 私は何を!?」


 また百合に堕ち掛けてしまった!?


「そ、そうね! もう遅い時間になるし!!」


「うん、それに私……」


 頬を赤らめ早百合。


「私、その、おしっこ漏らしたままだもの。……これ、戦い終わっても戻らないのね?」


 あ、ホントだ。悪魔がキックしてきた時だっけ。

 でも、私とステファニーの再生魔法で、町は、茶畑は元通りなのに。


「記憶を書き換えられないのと同じ理屈だよ! マジカル☆リリィとキスした君には、再生魔法が届かないんだ!」


「ううっ、恥ずかしい……」


 濡れたスカートに羞じらう早百合。


 そんな彼女へ、私は。


「ばか、言ったじゃない、汚くなんてないって!」


 両手で、早百合の掌を握って言う。


「早百合は、私を助ける為に来てくれたのでしょう? だから、早百合はかっこいいよ! お漏らしなんて、ちっとも恥ずかしくないよ!」


 にこっと笑うと、早百合は、何故かぼっと赤面。


「……りりな、顔、近いよ?」


「え? あ、ごめん」


「……もう、りりなはもう少し自覚を持った方が良いわ」


 え、何の話?

 首を傾げる私だけど、早百合は教えてくれない。


「お、恐るべし、宮野りりな……!」


 ステファニー呟く。


「おしっこ漏らした女の子を、あんなに自然に励ませるなんて! あの潜在的イケメン力、穏やかじゃないよ!?」


「と、とにかく、帰りましょうか!」


 赤い顔のまま言う早百合。


「早く帰って、シャワー浴びなくちゃね!?」


「そうね、私も汗かいちゃったし」


 夏休み前の夜、私の制服も汗でぐっしょり。


「ふふ、うちに寄ってく? 一緒にお風呂入ろ♪」


「ふぇっ!? え、遠慮します!?」


 そんな風にたわむれながら、家路に着く私達。


「うんうん、いい百合だ!」


 もう、ステファニーうっさい!


 でも、星空に見守られながら、早百合と笑い合って帰る茶畑の道行きは、何だか幸せ気分で。


 どちらからともなく、私達は、お互いの手を繋いでいた。離れがたく、指を絡ませて。


 ……あなたと恋人つなぎ。


〈第5話へ、続くッ〉



 エンディング曲、「今日もどこかで百合魔法少女」


〈前略〉


 ♪今日もどこかで百合魔法少女♪


 ♪今日もどこかで百合魔法少女♪


〈次回予告ッ!〉


 百合魔法少女マジカル☆リリィ、その戦いの日々は続く!


 生きていた男爵級悪魔アルダ=ギルズ!


 そして! ついにその姿を現す悪の首領!!


 銀髪ゴスロリの悪魔美幼女、公爵級悪魔「腐界の女王」ミルダレーナ!!


「ハァハァ、ナイフ×フォーク、ナイフ×フォーク♪ このカップリング、萌えるわ♪ どぅふふ腐腐♪」


 な、何たる邪悪!? 悪魔の女王の前では、無機物すらもBL妄想の餌食となるのかッ!?


「分かってないわね、アル君! この世にホモでない男など存在しないわ!!」


「いやいやいや! そんなわけ無ぇし!?」


 きょ、強敵!?

 頑張れ、負けるなマジカル☆リリィ!!

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