第4話 心に百合を! 拳に愛を!!⑤

「マジカル☆リリィーッ!!」


 ステファニーの悲痛な叫びさえき消して!!


 爆音が走る!

 無慈悲な悪魔の一撃、その衝撃と共に、地平の彼方まで光が灼き尽くす!


 ……しかし!


「グワーッ!?」


 意外ッ!!

 砕けたのは、悪魔の硬質化した脚!


「Noーッ!? ミーのムテキ筋肉は、ダイヤより硬いはずデース!?」


 キックした脚を失い! 転げ回って悪魔は、悲鳴を上げる!


「痛い! 痛いデース! 信じられマセーン!?」


「な、何が起きたんだ?」


 ステファニーの眼前、土煙が晴れた時。


 ……私は。

 百合魔法少女マジカル☆リリィは、輝く愛の光に包まれていた。


「り、りりな?」


「……良かった。早百合、怪我は無いわね?」


 早百合を抱き締めながら、私は笑う。


 胸の中、早百合の温もり、柔らかさを感じれば、私の心臓は力強くときめきのビートを刻む。

 聖なる魔力を、生命と愛の輝きを溢れ出させる。


「こ、これは百合の力! 無限の百合の力が、二人を護ったのか!!」


 ……そう、ステファニーの言う通り。


 早百合を、大好きな女の子を護りたいと願う私の意志が!

 身体の奥から膨大な魔力を引き出し、この世全ての闇を弾き返す、聖なる魔法バリアになったの!!


「アンビリーバボー! あり得まセーン! こ、この魔力!?」


 悪魔はうめく、頭を振って!


「これが、百合!? 百合って、百合って何デスカー!?」


 ……その答え、今の私なら分かる。


 早百合を護る、その誓いのためなら、際限無く湧き出でるこのパワー!

 胸を熱くする、勇気の炎!


 この力の源は。

 百合とはッ!!


 ……曇り無き、愛の輝き。宇宙を創造し、全ての生命を育むのと同じ、希望と慈愛のシンフォニー!!


「そうよ、百合は無限! 百合は宇宙!」


 不可能なんて無い!

 砕けない敵は無い!


「……ねぇ、早百合」


 私に抱き締められたまま、頬を染める早百合、可愛い♪


 そんな彼女へ、


「……キス、していい?」


 強く、抱き締める腕の力を強くして、尋ねる。


「り、りりな? 私、その、おしっこ漏らしちゃったから、汚いよ?」


「早百合のだもん。汚いはずないよ♪」


 熱く抱擁。早百合の体温を全身で感じて、私の胸もドキドキ♪


 潤んだ瞳を互いに交わせば、もう、言葉なんて要らない。


 ……ちゅっ♪


「き、キマシタワー!!」


 叫ぶステファニー、私と早百合を中心に、魔力の暴風が巻き起こる!


 そして輝きを増す、神聖な百合魔力!

 その光は新たな太陽となって!

 地球を眩しく、暖かく包む!!


 ……力が! 宇宙最強、銀河に無敵の力が、溢れてくるッ!!


「さあ、本当の無敵を、見せてあげるわ!!」


 ※ ※ ※


 裁きの時間よ! お覚悟はよろしくて?


「来たれ! 魔剣よ! 百合魔法剣、ホーリーラヴ☆キャリバー!!」


 顕現!

 宙空に画かれた魔方陣より現れるは、千体の黄金魔剣!


「む、無駄デース! それが私に効かないのは試したはずネー!?」


 強がりながらも、悪魔アイゼンシュティーアの声には、隠せない動揺!


「む、ムテキッ!!」


 再び、黒く変色。

 ダイヤを遥かに超えるという恐るべき硬度に変わる悪魔の肉体!


 ……でも!


「砕いてみせる、どんな邪悪もッ! 私は百合魔法少女、宇宙最強なんだからッ!!」


 千の魔剣を全て大地に刺して!

 私は駆け出した!


「行っけーッ! マジカル☆リリィーッ!!」


 重なる応援、ステファニーと早百合!


「イヤーッ!!」


 走りながら、魔剣の一本を地面から抜き!


 全身全霊、悪魔へ降り下ろす!!


 バキィィン!

 砕ける魔剣!!


「HA、HAッHAー! やっぱり、効きマセーン!?」


 でも私は!


「ホワット!?」


 止まらない!

 すぐさま足元、次なる魔剣を大地から抜き! 斬撃を!!


「イヤーッ!」


 また砕ける魔剣、そして三本、四本!!


「く、クレイジー!! 何百本でも、同じことデース!?」


 違うッ!

 百本で倒せないなら、千本! 千本で倒せないなら、一億でも、百億でも!

 私は魔剣を振るう!


 バキィン!

 バキィン!

 バキィィィン!!


 剣を抜く、振る、砕ける!

 剣を抜く、振る、砕ける!


 20本、30本、40、50、60、100ッ!!


 いつしか私は両手に剣をとり、舞うように回転しながら斬り続ける!!


 そして!


 ……ビキッ。


「Noーッ!? ミーの身体に、ヒビが!! 無敵の筋肉に、ヒビがァァーッ!?」


 ……ビキッ。ビキビキ。


 黄金の魔剣は遂に、悪魔の無敵肉体を穿うがち始める!


 そして更に回転を加速、私は止まらない!

 もう誰にも止められない!!


「イヤーッ!」

 斬撃!

「グワーッ!?」

 砕く!


「イヤーッ!」

 斬撃!

「グワーッ!?」

 砕く!


「イヤーッ!」

「グワーッ!?」


「イヤーッ!」

「グワーッ!?」


「イヤーッ!」

「グワーッ!?」


 そして私は理解する。黄金の魔剣は、私の魂の力そのものだと。

 魔剣は私、私は魔剣。


 ならば信じよう。自らの魂の刃、その力を!

 世界を救う、百合の力をッ!!


 この輝きは、百合の輝きこそは、どんな絶望も、どんな運命も打ち砕き、明日を斬り拓く無限の力だと!!


「誰にも負けない! 百合を、宇宙の未来を! 私は護ってみせるッ!!」


「や、ヤメテ!? ガールズの魂は返しマース!! だからヤメテーッ!?」


 いいえ、もう止まらない!


 黄金の魔剣を砕いては振り抜き、振り抜いては砕く私は、すでに領域に踏み入るモノ全てを切り刻む、破壊のブラックホール、断罪の殺劇剣舞ッ!!


「イイィィヤァーッ!!!」


 そして千本目の魔剣は!


「グワァァーッ!!」


 ……騎士級悪魔アイゼンシュティーア。

 絶対防御を誇る悪魔の体を、ついに、真っ二つに斬り裂いた。


「さ、サヨンナラァァーッ!!!」


 ……爆発、四散ッ!!


 呑み込んだクラスメート達の魂を吐き出しながら、悪魔は、欠片も残さず消滅した。

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