第4話 心に百合を! 拳に愛を!!④

 私の武器、黄金の百合魔剣!

 光り輝く魔剣が次々に炸裂!


 しかし悪魔はかすり傷一つ無しッ!?


「oh、痛くもかゆくも無いネー! ミーのムテキ魔法は! 最強の絶対防御デース!」


 何てこと!?

 二度目のバトルで、早くも必殺技敗れる!?


「……このぉッ!」


 宙を浮遊する魔剣の一振りを、私は手に取り、悪魔へ斬り掛かる!


「魔力よ! 剣に宿れ!」


 私の魔力を、直接魔剣に上乗せ!

 渾身の力で振り下ろす!!


「無駄デース!」


 バキィィィン!!


 な、なんと!?


 悪魔の硬質化筋肉の前に、黄金の魔剣は!

 粉々に刀身を砕かれてしまう!


「そ、そんなッ!?」


 信じられない!?


 私の力、皆を、そして百合を護るハートの力が!


 こいつには通じないと言うの!?


「さあ、次はこちらのターンデース!!」


 筋肉! タンクトップを破り、悪魔の筋肉膨張!


 戦艦並みの重量を込めたパンチが、私を!?


「HAッHAーッ! ジスイズ、マッスールゥ!!」


「きゃぁぁぁ!?」


 とっさに両腕でガード、でも防げない!?


 茶畑を、大地をえぐり! 何百メートルも吹き飛ばされる私!


 辺りの電柱を、森の木々をいくつも薙ぎ倒して!

 ようやく私は止まる!


 ああ、のどかなお茶の町が! 私達の狭山市が! 戦嵐吹き荒ぶ荒野に!?


「……ん、あッ!」


 肺の空気を搾り出され、一瞬意識が飛ぶ!


 ……すると!


「た、大変よマジカル☆リリィ!?」


 ビデオカメラは回したまま早百合!


「服が! 服が消えてるわ♪」


「ふぇぇっ!?」


 全裸!?

 全裸なんで!?


「oh、バトルの最中にストリップ! ジャパンの風紀は乱れてマース! まさに世はマッポーですネー!」


「ち、違うの! 違うから!?」


 とりあえず(薄い)胸を隠して!


「どういうこと!? 説明してよステファニー!?」


「その前に! 放送事故を防がねば!」


 ステファニーは頭で私の大事な処を隠す!


 何から?


「ああっ! ステファニーちゃん邪魔だよ!?」


 早百合のカメラから!!


「モザイクは美観を損ねるからね! これが紳士のテクニックさ!」


 ふざけてる場合か!

 私、お嫁にいけなくなるよ!?


「とにかく、落ち着くんだマジカル☆リリィ! 百合魔法少女のコスチュームは、君の魔力で創られている! だから君が意識を失ったりして魔力コントロールが乱れると! 服は消えてしまうんだよ!!」


「ま、またエロ設定か、このけだものッ!?」


 で、でも確かに! 意識を集中するとコスチュームは元通りに!


「凄いわマジカル☆リリィ! ピンチの度にサービスシーンが撮れるのね♪」


 そこ、早百合!

 ガッツしないで!?


「じょ、冗談じゃないし! この恥ずかしい仕様、改善を要求する!?」


 って、今はそんな場合じゃないし!


「HAHAHAーッ! そんな心配無駄デース! ユーの活躍は、今日で終わりマスからネ!」


 上空へ跳躍する悪魔!


 奴もキックの態勢ッ!!


「さ、させない!」


 身を起こし、再び魔剣を召喚!


「行けッ!!」


 今度は地上から天空へ!

 黄金の魔剣が駆ける! 駆ける! 駆ける!


「ムテキっ! ムテキィィーッ!!」


 ああ、悪魔は!

 キック態勢のまま、硬質化!


「ミーの黒くて硬い筋肉に! 貫かれて逝くデース! 百合魔法少女ォォォーッ!!」


 砕かれる!

 砕かれる!

 私の力が、黄金の魔剣が脆くも砕かれる!?


「HEY、軟弱軟弱ゥ!!」


 無敵状態のまま繰り出される、悪魔の急降下キック!


「ミーの必殺ムテキキックで! 町ごと消し飛ぶデース!!」


 ま、まずい!

 この威力、このままだと!


 ……早百合まで、巻き込まれるッ!?


「……あ」


 巨大隕石のような破壊質量を帯び、遥か上空から迫る悪魔のキックを見上げて。


 早百合は撮影も忘れ、恐怖に固まっていた。


 赤黒い、悪魔の邪悪オーラ。終末の日を思わせる死の光景に、腰を抜かして、しめやかに失禁。


「……た、立てない?」


 呆然と呟く早百合。


「早百合ぃーっ!!」


 ……私は。

 自分の身を守るのも忘れ、駆け出して。


(あなたは、私が護るから)


 震える早百合をぎゅっと抱き締めて。


 彼女をかばって。


 ……星をも砕く悪魔の必殺の一撃を、背中で受けたのだった。


 その威力は、爆撃。閃光が、轟音が、世界を駆ける。

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