第4話 心に百合を! 拳に愛を!!③

 降臨!

 聖なる愛の戦士、正義の使者!

 その名はッ!


「百合魔法少女マジカル☆リリィよ!」


 ピンクと黒のスタイリッシュな魔法少女コスチューム!

 放送コード限界に果敢に挑む極限ミニスカート!


 黄金の百合魔力……聖なるオーラを纏い、今、電柱の上に立つ!


「撮影は私に任せて! マジカル☆リリィ!」


 すちゃっとビデオカメラを構える早百合。


「やっぱり正義のヒロインには、高い所よね! パンツも見えて最高♪ これは撮り逃せない♪」


「きゃぁぁっ!? み、見るなってば!?」


 あれだけキスしといて何だけど、パンツ見られるのは恥ずかしいし!?


「恥ずかしがってる場合じゃないよ、マジカル☆リリィ! さあ、百合の力で、悪魔を成☆敗するんだ!」


 ぴょん、と私の肩に乗るステファニー!


 オッケー、やってやるッ!


「覚悟なさい、悪魔め! 皆の魂、返してもらうわよ!」


「oh、それ無理デース! なぜならミーは、ベリーストロング、ネー!」


 今回の敵……外人風筋肉悪魔は、不敵に笑い。


 な、なんと!?


「イタダキマース♪」


 皆の魂を、の、飲み込んじゃった!?


「ゆ、許さない!!」


 飛び掛かろうとする私を、ステファニーが制す!


「挑発に乗っちゃだめだ! 大丈夫、皆の魂はまだ無事だよ!」


「イエース! でも! ミーを倒さない限りは時間切れヨ!」


 自分が倒されるはずがない。そんな自信を、邪悪な闘気をみなぎらせ、悪魔は笑う!


「改めて名乗りマース。ミーは騎士級悪魔アイゼンシュティーア! ユーの変身は阻止できませんでしたが、ミーはムテキ! 鋼鉄筋肉の持ち主! 勝てっこないネー!!」


「上等ッ! いくわよ!」


 そして!

 闘いの火蓋は切って落とされた!


 ※ ※ ※


「HAっHAーッ! 消し炭になりなサーイ!」


 がぱっと口を開け、悪魔アイゼンシュティーアは口から強烈ビーム!


 でも! 分かる!


「こんなもの、避けるまでもないわッ!」


 私の拳は!

 百合の魔力を乗せたパンチは!

 ビームをおもちゃの水鉄砲のように殴り散らせるはず!


「ホワット!?」


 ビームと拳が!

 激しくスパーク!


 閃光を切り裂いて、勝ったのは私ッ!


「す、素敵よマジカル☆リリィ! イケメン過ぎるわ!!」


 早百合の歓声が飛ぶ!


「ガッデム! やりますネー! でも、ミーの拳は! 山をも砕きマース!」


 邪悪闘気オーラを右手に集中、拳を振りかぶる悪魔!


 でも! 負けない!


「あなたの拳が山を砕くなら、百合の力は、銀河を切り裂くわ!!」


 激突! 激震!!

 ぶつかり合う右ストレートの衝撃波は、茶畑を根こそぎ吹き飛ばし、大地をクレーター状の荒野に変える!!


 そして! 押し勝ったのは!


「Noーッ!? ミーのパンチはムテキのはずデース!?」


「……そんな軽い拳で!」


 そう、人間の数千倍を超える悪魔の筋力を乗せた拳でも!


「私の愛は、砕けないッ!!」


「グワーッ!?」


 吹き飛ぶ悪魔アイゼンシュティーア!


「勝った! 第4話完ッ!」


 ステファニー吠える!


「さすがマジカル☆リリィ! さあ、一気に決めちゃえ!!」


「オッケー、行くわよ!!」


 華麗に跳躍!

 100トン分の重みを乗せて(あ、魔力のおかげだからね! 私の体重そんな無いから!?)!

 上空から悪魔目掛けてダイビングキィィーック!!


 しかし!


「……ムテキ!!」


 埼玉中を揺るがす轟音と共に炸裂した私のキック、地軸を穿うがつ百合魔法少女の彗星キックは!


「き、効いてない!?」


 ……悪魔にかすり傷すら付けてない!


「こいつ、強い……! てか、硬い……!?」


「ばかな! あり得ないよ!?」


 ステファニーが驚愕する!


「いくら悪魔でも、奴は騎士級! 『爵位持ち』すら倒せる君の一撃を食らって、無事なはずがない!?」


「騎士級? 爵位?」


 昨日の奴よりは格下ってことさ、とステファニーが教えてくれる。


「なら、どうしてダメージが無いの!?」


「……ユーを、少しなめてマーシタ」


 ゆらりと立ち上がる悪魔。


「でも、悪魔甘く見たらだめデース。ミーの『能力』見せてあげマース!」


「……来るッ!」


 立ち上る邪悪オーラ!


 させるものですか!

 やられる前に、やるッ!!


「来たれ! 魔剣よ!!」


 空間を破り! 魔方陣から召喚、私の武器!

 輝く黄金の百合魔剣、悪を滅する千本の刃!


「いっけぇーッ!!」


 私の意思で自在に宙を舞い、敵を討つ聖なる剣は!

 唸りを上げて! ミサイルとなって悪魔へ降り注ぐ!!


 昨日、あの巨大な「男爵級」悪魔を数秒と経たず滅し尽くした暴威は!

 私の必殺技は、今度も、完膚無きまでに悪魔を討ち果たす!


 ……はずだった。


「……ムテキ!!」


「……なっ!?」


 私は見た。

 ムテキ、の掛け声と共に、悪魔の身体が黒く変色!

 鋼の硬度となって、襲い来る魔剣を砕き返すのを!!


「HAッHAーッ! これがミーの能力ネー! その名もムテキ魔法! 筋肉硬質化! 防御時のミーの肉体は、ダイヤモンドの1億倍の硬度なのデース!!」


「そ、そんな!?」


 悪を切り裂くはずの黄金の魔剣が!

 一本一本がエクスカリバーとかグラムとか、聞いたことある伝説の剣にも匹敵するはずの千本の魔剣が!?


 まるでガラスの剣のように砕け散る!?


「HAーHAHAーッ! 百合魔法少女、破れたりデース!!!」

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