第3話 ああ無情。百合魔法少女、哀しき宿命!④

 放課後、ひぐらし歌う夏の夕暮れ。


「りりな、いっしょに帰ろっ♪ って、あれ? いない……」


 早百合がっかり。


 そんな彼女の前に、降り立つ影は!!


「……ここが我々の敵、百合魔法少女とやらの通う学校デスネー?」


 ※ ※ ※


 その頃、私は。

 私達の街、茶所で有名な埼玉県狭山市の代名詞、広がる茶畑を横目に、ダッシュで帰宅中だった。


「ご、ごめんね早百合! 鎮まれ私のマイハート!?」


 私と早百合は、とっても仲良し。

 帰る時は、いっつも手を繋いで、腕を組んで♪


 でもそれは過去形ッ!


「無理! 無理無理ムリ!? 意識しちゃうし!?」


 わ、私、おかしいよ!?

 親友の柔らかマシュマロが、こんなに気になるなんて!?


「だめだよ、りりな! 落ち着いてよ!?」


 鞄から顔を出し、なぜかあたふたステファニー。


「今日はまだ、百合ラブしていないよ!? 早百合とキスもせずに、君は帰るのかい!?」


「はぁ!? するわけないし!」


 何を言いやがりますか、このエロ獣!


「だ、だめだよキスしないと! 大変なことになるよ!!」


 ……うっわ、嫌な予感。


「聞きたくないけど、な、何で?」


「……さて、解説の時間です(IN茶畑)」


 ステファニー、すちゃっと眼鏡を装着。

 てか、どっから出したの、それ?


「百合魔法少女の魔力は本来、人間の身には有ってはならないほど強大なものなんだ。それに耐えられるようになる為にも、君は毎日魔力をチャージして、肉体を馴染ませる必要があるんだよ。これをしないと、魔力が暴走してすっごく危険なんだよ!!」


 ……あの。毎日魔力をチャージって、それってつまり?


「最低でも1日1回、女の子同士でキスしないといけないのさ♪」


「何じゃそりゃぁーッ!?」


 百合か! やっぱり百合なのか!?


「毎日、女の子とキス!? しないと危険って、ど、どうなるの!?」


「死にます」


「死ぬのッ!?」


 き、聞いてないし!


「そりゃ死ぬよ! 暴走魔力で木っ端微塵みじん、スプラッタだよ!! だって宇宙最強のパワーだよ!? リスクくらい有るに決まってるだろ!? 何かを失わずに! 人は何物も得られはしないんだからね!?」


 いや、逆ギレだよねこれ!?


 百合魔法少女。

 女の子とキスするたびに、女の子を好きになっちゃう。

 キスをしなければ、爆発四散。


「何この極悪仕様!?」


 私の人生、百合ルートまっしぐら!?

 ノーマルルートのフラグはどこ!?


「冗談じゃないし! 元のカラダに戻しなさいよ!?」


 ステファニーをがっくんがっくん揺さぶるけど!


「いやぁ、契約してしまったものは取り消せないよ。それに、僕は百合魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ。実際の姿がどういうものか、説明は省略したけども(笑)」


「くぁー! 可愛いぬいぐるみ姿なのが、余計に腹立つし!?」


 どっかの白い地球外生命体のような、素敵なブラックぶり!


「こ、この悪魔! この世に神様はいないの!?」


「いや、だから僕が神様なんだってば!?」


 とか茶畑のそばで、罵り合っていると!


「HAHAーHAー! 見つけたネ、百合魔法少女! さあ、ミーとバトルねー!!」


 なんか、すっごいテカテカしたマッチョメン!?


「濃ゆい悪魔来たし!?」


〈第4話へ続くッ!〉

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